“超変革”原口文仁「夢見ていた場所」 苦節7年目で虎の正捕手へ躍り出る
金本監督から打撃を買われ、育成から支配下登録、そして即1軍に抜てきされた原口。虎の正捕手になるべく攻守に経験を積んでいる 【写真=BBM】
支配下の電話に心臓バクバク
配球面ではファームでは感じられない怖さを体験しているという原口。正捕手になるためには守備、配球の面で信頼を勝ち取りたい 【写真=BBM】
(4月26日の)1軍の試合が終わった後の遅い時間、10時30分くらいです。高野(栄一)球団本部長から電話をいただきました。もう、驚きでしかありませんでした。そのような気配などもなかったので……(笑)。受話器を置いた後は、心臓がバクバクとなり、すごく緊張し始めました。やはり、このときをずっと待っていましたので。
──ちなみに開幕前の今季の目標は何だったのでしょうか。
ファームで結果を残すということでした。キャッチャーというポジションなので、試合出場はそこまで多くはなかったのですが、出たら試合に勝ち、自分の成績を残していかないと、アピールにならないという思いでした。ただ、支配下登録をされる直前、打撃の調子が上がってきて「今のこういう、いい状態を続けていかないといけないな」と考えていたタイミングで、電話をいただきました。
──ケガなどで苦労もありましたが、育成としての約4年間は長かったですか。
長かったですね。ケガから復帰したと思ったら、またすぐケガをしたり、腰痛が何度も再発したりとしんどかったです。いろいろな病院にも連れて行ってもらいましたし、さまざまな治療もやらせてもらいました。でも、まずやれることからやっていこうという気持ちでした。心が折れそうになることもありました。実際に、もしやめたときに自分は何ができるのか、ってすごく考えたんです。でも、結果はやはり何にもできない。「野球しかない」でした。
──それが今では1軍で、スタメン出場を果たしています。
入団からずっと目標にしていた場所です。捕手として、この日が来ることを夢に見ながら、ここまでやってきたので、充実はしていますし、本当にうれしいことです。
2軍では感じられない怖さを体験
試合に使ってもらうようになって、今まで以上に守備がどれだけ重要なことなのかを、感じています。僕のひとつのミス、配球の間違いによって試合の流れが大きく変わった試合も多いんです。勝負を左右する重要なポジションであることを再認識しました。
──1試合の重みがすごいのですか。
いやあ、もうすごいです。ものすごいプレッシャーの中で、野球をやっているな、と。出始めのときは、スチールをすんなり刺せたり、ワンバウンドを止めたりという部分で足が動かせていたのですが……。今はスキを突かれ、走られることが多いので、まだまだだなあ、と感じています。
──その中でどういう修正をしているのでしょうか。
1軍での練習メニューが多くなってしまって、体力的な部分できつくなり、疲労などを考慮して、ずっとやってきた足を動かす練習を一時やめました。でも、やらないと調子が上がらないんです。ルーティンとして定期的に体に染み込ませなければいけないことなんだと分かり、再開しました。
──配球面などでの課題も当然出てくるのではないかと思います。
課題だらけです(笑)。配球に正解はない、とは言われますが、打たれたら「間違っている」ということですから、何か原因があると思います。しっかりと反省をして経験にして、しっかりとノートにも書き込み、次の日に向かっています。
──1軍と2軍では配球面も大きく違うものですか。
もちろんです。恐ろしいほどです。甘い球、配球の間違いは、一発で仕留められます。それに外国人選手や4番打者などは特に打席に迎えたくないほどの威圧感があります。ファームでは感じられない怖さを体験しています。
──その威圧感を感じるとサインを出すときに……。
はい、迷いは……あります。そこでいろいろなサインを考え過ぎてしまうところもありますし……難しいですね。
──先ほどから間違った配球と言っていますが、どのような間違いですか。
打たれたということは、打者の表(の配球)になってしまったということなので間違っています。特に先発投手のときには、違う策がたくさんあるのに、打者が待っているボールを選んでしまう……難しいです。やはり打者の傾向をしっかり見極めたい。今の僕には、先を見ながらサインを出すということができていないな、と思っています。そして、次の試合、次のカードにつながる配球をできるようにしたいです。それに先発投手に関しては、その日によって、いいボールと悪いボールをどう使うかも考えなければいけません。例えば今日カーブが悪いからと言って1人の選手と3回対戦するとき、すべての打席でカーブを投げさせないのか、といったらそうではなく、しっかりとそのカーブも打者に意識させながら、リードをしないといけないです。