手倉森「みんなが幸せになって良かった」 五輪最終予選 イラク戦後の監督会見

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「何より選手たちにとっての自信となるような結果だった」と勝利を喜んだ手倉森監督 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 サッカーU−23日本代表は26日、カタールのアブドゥラー・ビン・ハリファ・スタジアムでイラク代表とのリオデジャネイロ五輪アジア最終予選兼AFC U−23選手権・準決勝に臨み、2−1で勝利。決勝進出を決めるとともに、6大会連続となる五輪出場権を勝ち取った。

 日本は前半26分、久保裕也のゴールで先制に成功するも、前半終了間際の43分に同点ゴールを許してしまう。後半は立ち上がりからイラクに押し込まれる展開になるが、粘り強く守り切ると、延長戦に突入するかと思われた48分、こぼれ球を拾った原川力がエリア外から左足でミドルシュートをゴール右に突き刺し勝ち越しに成功。劇的な決勝ゴールで、リオ五輪出場権を手にした。

 試合後、日本の手倉森誠監督は「誰も書けないようなシナリオ、幕切れでした」とイラク戦を振り返ると、「何より選手たちにとっての自信となるような結果だった」と試合への手応えを口にした。また、「みんなが幸せになって良かった」と五輪出場を喜びながらも安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 日本は30日に、同じアブドゥラー・ビン・ハリファ・スタジアムで韓国代表との決勝戦に臨む。

我慢比べだなと考えていた

 今日のビッグゲーム、リオ五輪の出場と決勝進出を懸けた試合に勝てたこと、まずホッとしています。今日は延長にはいきたくないという思いで戦っていました(笑)。幸先良く1点取れて、CKから失点したのですけれど、(選手たちには)風が災いした失点だったという話をして、後半は落ち着いてプレーするように指示しました。

 ただ、イラクが攻勢を強めてきたときに、これは我慢比べだなということを考えていた。終盤、恐らくイラクは延長のことを考えていたんじゃないかなという雰囲気(があった)。一回、相手陣内へ押し込んでいけば何か起こるだろうという予感(がしていた)。最後の15分に投入して、浅野で何とか突破口を切り開きたい(と考えた)。そこでCKを得てからの劇的な2点目……。誰も書けないようなシナリオ、幕切れでしたけれど、これまで苦しめられてきたイラクに3度目の正直で勝って、決勝戦とリオ行きを決められた。何より選手たちにとっての自信となるような結果だったと思います。

――“勝てない世代”と言われたチームを率いて苦労もあったと思う。勝った瞬間、頭に何がよぎったか?

 終わった瞬間、90分で終えて「明日休めるな」と、まず思いました(笑)(※決勝だと中3日空くが、3位決定戦だと中2日での試合となる)。次に、これで本大会まで仕事ができる、と。次に、本当にご心配をかけてきたスポンサー、サポーター、そしてメディアの皆さんに「本当にご心配をお掛けしたけれど、やりました」というような気持ちになりました。本当に支援をいただいて、一緒に戦ってくれていると感じていたので、そうした支援に報いられてホッとしているということと、お互いにおめでとうと言いたいです。

――前半から飛ばしていたように見えたが、延長前にエネルギー切れする心配はなかったのか?

 これがわれわれのパフォーマンスなんだ、と思いながら見守っていました。こちらのコンディションを考えて、これくらいやって普通だなと思っていました。後半にガス欠というか、イラクに主導権を奪われた時間帯があったときに、前半のパフォーマンスから来たんだろうなと思ってはいました。そのときに選手たちのコントロール力というのが(出た)。これまでの戦いの中で、耐え抜くという覚悟をあの時間帯から持てたことが良かったと思いました。失点してぎりぎりのような勝負になりましたし、前半に2点目が取れていればという思いもありました。ただ、決勝のためにこういった接戦をやらせてもらったのだと感じています。

――この試合の先発起用の考え方は?

 大会を通じてスタメンを変えてきましたけれど、流れを作っていきたいな、と。自分が選んだ武器はすべて使いたいな、と。それは選手たちの成長のためにです。1、2戦目で使った先に、疲れ具合、回復具合、そして対戦相手に何が効くのかを見極めてオーダーを組み続けてきました。それは今日も変わりません。

自分を信じるしかなかった

――掛かっていた重圧がものすごく大きかったが、それを表に出さないできたように思うが。

「重圧」という言葉で言うとものすごいものに思えると思いますが、いつも思っていたのは「リオに行きたい」「五輪に行きたい」「日本サッカーの連続出場を途切れさせたくない」という思い。その先には、行きたい行ける行ける行ける、と(笑)。いつも行けると、そうずっと考え込んで。みんなの前では常にポジティブに、自分が(監督を)やっているんだから行けるんだという態度でいました。

 ただ、1人になったときには負けたときの怖さとか、オリンピックに出られなかったことをじっくり考えたりもしてね。それは嫌だ嫌だ嫌だ、ですね(笑)。それで、いつものポジティブにまた切り替える。自分で念じればその言葉はかなうと、自分の言葉は「誠」だなっと言っているくらいでして(笑)。もう自分を信じるしかなかったです。

 あとはみんながいる、仲間がいる、常にそう思える雰囲気を作って、大きな仕事だからこそみんなで乗り越えなければいけないというように考えていました。それで重圧は分散できたなと思います。僕だけじゃなくて、いろいろな人が重圧を感じている中で、みんなが幸せになって良かったなという安堵感があります。

――延長に行きたくなかったとのことだが?

 90分で終わらせたかったというところには、イラクのパワーを感じていました。過去、イラクに負けたことがあります。オマーンの大会(2014年のAFC・U−22選手権)ではイラクが優勝しました。あの時からずっとイラクに抱いている印象としては、大会巧者の国だなということです。準々決勝でUAEに1点先行されてからロングボールのパワープレーを120分までやり切っていた。けれども、今日は投入してくる選手たちが地上戦に持ち込んできた。これはわれわれにとって予想外の出来事でした。11番の(フマム・)タリク(・ファラジ)があれ以上長くプレーしていたら本当に危険だったと思います。

――決勝に向けて。

 決勝戦に向けては次の試合の分析のために、スタッフが(韓国vs.カタールの準決勝が行われている)スタジアムへ向かいました。それをしっかり分析して、良いオーダーを組めるように、(選手を)回復もさせて、トレーニングもして、次に挑めればと思います。
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