前田健太がつないだ逆転優勝への望み 誰もが納得するMLB移籍はその後に

ベースボール・タイムズ

2年ぶりの中4日で出した結果

13日の阪神戦、中4日の登板で13勝目を挙げた前田 【写真は共同】

 奇跡の逆転劇へ、望みはつないだ。広島の前田健太が13日の阪神戦(甲子園)に先発し、7回を被安打2、無失点に抑えてリーグトップとなる13勝目をマーク。約2年ぶりとなる中4日での先発で最高の結果を出したエースは、「チームがひとつでも上の順位に上がれるように、投げる試合は全て勝つつもりです」と高らかに宣言した。

 開幕前は優勝候補として期待された広島だが、残り20試合を切った現在も勝率5割に届かず、Bクラスの4位と低迷が続いている。それでも未曽有の混戦となったセ・リーグで、首位・東京ヤクルトとの差が3ゲーム(9月14日現在)と、わずかながら可能性は残している。

 その中で、今オフの動向も含めて注目されているのが、絶対的エースの前田だ。13日の勝利で勝ち星はリーグ単独トップとなり、防御率も2.00でリーグ2位と、個人タイトルも狙える好成績を残している。近年はポスティングでのメジャー移籍がうわさされているが、昨オフはチーム、個人の成績などを考慮して移籍は見送られた。

 次のステップへ進むべく、「誰もが納得する形で」と挑んだ今シーズン。チームの24年ぶりのリーグ優勝予想の根拠となったのが、黒田博樹の復帰だった。いまや球界を代表する右腕となったエースに加え、ヤンキースでローテーションを張った剛腕が8年ぶりに帰還し、野村祐輔、大瀬良大地の新人王右腕などが顔をそろえる先発陣はリーグ屈指。2年連続Aクラス入りした“実績”も相まって、周囲の期待はいやが応にも高まった。

黒田の存在は“生きた教科書”

 前田が広島に入団したのが2007年。黒田がドジャースに移籍したのがその年のオフだが、前田のプロ1年目は1軍登板がなく、2人の接点はほとんどなかった。それでもその後、メジャーで奮闘する黒田の存在は、前田にとって大きな刺激となった。「自分と関わりのある人が投げている姿」が、現在のメジャー志向のきっかけでもあった。

 そんな黒田の復帰に、「違和感はなかった」という前田は、春季キャンプから積極的に会話を重ねた。「向こうで活躍していた人なので、配球や球種、投げる感覚など、全く違ったものを持っている。質問すればすべて答えてくれるし、見ているだけでも参考になる」と言うように、文字通り「生きた教科書」となった。何より昨年までは一人で背負っていたエースの重圧を分担できる存在ができたことは、前田にとって非常に大きなことだった。

 その影響は、今季の成績を見れば明白だ。ここまで25試合に登板し、6回もたずに降板したのは1試合のみ。7回以上を投げて自責点3以内に抑えている試合は、実に23試合にのぼり、いわゆるクオリティースタート(QS)率は9割を超える。それでも7敗を喫しているのは、自身の登板時に味方の得点が2点以下だった試合が14試合と、打線の援護に恵まれなかったことに尽きる。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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