男子バレーは数学の発想で楽しむべし 山本隆弘が語るバレーW杯の観戦ポイント
女子に続き、W杯男子大会が8日に開幕する。元全日本代表の山本隆弘さんにポイントを解説してもらった 【スポーツナビ】
確率に基づいて対応を決める
なぜそうなるのか。男子バレーの世界トップクラスの選手が放つジャンプサーブはMAXで時速130キロ、スパイクならば時速150キロというスピードです。極端に言えば、まばたきをしている間に気づいたらボールが飛んでくる。打たれてから動いては間に合わないということも多々あります。とはいえ、「スピードが速いので届きませんでした」では、相手の攻撃をつなげることはできません。相手のスパイクをレシーブするために、まずはコースに「移動する」のではなく、レシーブコースを前もって予想してそのコースに「いる」ことが大切だからです。
攻撃については、どのチームも前衛3枚+バックアタックの4カ所から展開することをベースとしています。もちろんブロッカーが少なければそれだけ打つコースや幅も広がるので、セッターはトスを4カ所に分散させたい。理想は全部のポジションから均等に、割合で示すならば25パーセントずつの比重で攻撃を展開することです。
Aパスが返れば日本も攻撃力はある
Aパスをセッターに返すことができるかが重要な要素となる 【坂本清】
むしろ嫌なのは前述のように、4カ所から均等に攻撃されてしまうことです。そうなってしまうと手のつけようがない。そうさせないためには、まずはどこか1カ所に攻撃が偏る状況をつくること。そのために、カギとなるのはサーブとサーブレシーブです。
相手のサーブを受けてからの攻撃、サイドアウトだけで考えればセッターが動かずにAパス(セッターが動かずにセットできる位置への返球)が返れば、日本も世界に引けは取らない。それだけの攻撃力は十分に備えています。
見ている方からすれば、男子はサーブで崩されてしまってつまらないと感じるかもしれません。しかし、先ほどもお話したように、ジャンプサーブはサーブとはいえバックアタックと同じと言っても大げさではないぐらいの威力があります。当然どのチームもジャンプサーブだけでなく緩急をつけたサーブで揺さぶりをかけ、崩そうとしてくる。つまり、裏を返せば崩されて当たり前。むしろAパスを返すことのほうが難しいのです。
意識するのは相手ブロッカーの手や指
山本さんはスパイクをガムシャラに打つのではなく、ブロックを見極めて打つことが重要だと語る 【スポーツナビ】
たとえBマイナスになったとしても、その状況から攻撃を展開し、相手のブロックがそろってしまったらそれで終わりではありません。相手のブロックに対してまともに勝負するのではなく、リバウンドをもらったり、うまく当てる場所を考えてブロックアウトにするなど、いくらでも方法はあります。
日本に限らず、今の男子バレー界では攻撃の際に意識するのは、コートの(縦幅、横幅)9メートルではなく、対峙(たいじ)する相手ブロッカーの手や指です。ただ得意なコースに打つ、ブロックを抜く、とガムシャラに打つだけではなくスパイカーはブロックに当てて外に出す打ち方を考えていますし、ブロッカーは当てられてもどう弾かれないかということを第一に考えています。
実際に全日本男子も今シーズンの発足時から、こうしたプレーに重点的に時間を割いて取り組んできました。ワールドリーグでもチェコや韓国、フランスなどのブロックに対してうまくリバウンドをもらう場面が増え、これまでよりも相手ブロックに止められる回数は減少しています。
勝負どころに向けてどれだけ種をまけるか
勝負どころでブロックされないために、事前にどれだけ種をまけるか 【坂本清】
どんなに良いブロッカーでも、緻密に計算された男子バレーでは1セットに1本ないし2本ブロックできれば合格点。実際の本数を見ればそれほど多くないはずなのに、「日本は良くブロックされる」と感じるのは、止められているのが20点以降など、終盤の勝負を決するポイントになることが多いから。その1点を取るためにどれだけ種をまけるか、というのが勝敗を分けるカギになるのです。