連勝にも不安が募る、なでしこたちの戦い W杯連覇に向けて必要な2つの自信回復

江橋よしのり

阪口「勝ったけれどスッキリしない」

カメルーンに2−1の辛勝。決勝トーナメント進出を決めたものの、なでしこたちの表情はどこかさえない 【写真は共同】

 試合を終えた後、なでしこたちは相手選手と握手を交わしてすぐ、複数のグループに別れて話し合いを始めた。MF阪口夢穂は、パスを受ける時の立ち位置についてDF熊谷紗希に意見を求めたという。

「2点を取るまではなかなか良いペースだったと思いますが、そこからリズムが悪くなってしまいました。パスをカットされてカウンターを受けはじめてから、私も含めてみんなボールを受けるのが怖くなったというか……。みんなの立ち位置が一歩ずつ悪くなったと感じています」

 阪口がそう話すと、通気口が大きな音を立てた。まるでなでしこたちのため息のように。

 カナダで行われている女子ワールドカップ(W杯)のグループステージ第2戦、なでしこジャパンはカメルーンとの試合に2−1で勝利した。だが、後半は完全に相手に押された展開だった。シュート数はなでしこジャパン4本に対し、カメルーンは20本。相手のシュート精度の低さに助けられ、なんとか勝ちを拾ったようなものだ。「勝ったけれどスッキリしないです」と阪口。「勝って反省できるのはいいことだけれど、本当は勝って喜びたいです」。

狙い通りの展開で2点をリード

W杯初先発となった菅澤(15番)のゴールなど、前半は狙い通りの形で2点をリードした 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 なでしこジャパンは初戦のスイス戦(1−0)から先発を5人入れ替えた。負傷によりチームを離脱した安藤梢に代わって、菅澤優衣香がW杯初先発。右サイドはDF近賀ゆかり、MFに川澄奈穂美。20年前の米国戦以来というW杯の先発を外れた澤穂希に代わり、鮫島彩が左MFとして今大会初先発を果たした。また、GKには海堀あゆみが起用された。

 序盤はなでしこジャパンがペースをつかんだ。開始早々、川澄がペナルティーエリア内で勝負を仕掛け、3分には宇津木瑠美がチーム初シュートを放つ。そして6分に右サイドから崩し、川澄がセンタリングを上げると、逆サイドから走り込んだ鮫島が先制点を挙げた。

 佐々木則夫監督が前日に「前半のうちにゴールを仕留めたい」と抱負を述べたとおりの展開。しかも得点に絡んだ選手は、近賀、川澄、鮫島と、いずれも初戦から入れ替えたメンバーだ。さらに17分に左コーナーキックを得ると、キッカーの宮間はゴール前ではなく、下がり目の位置にいた川澄にパスを出した。このような変化にカメルーンのDFがついてこられないということは、もちろん織り込み済みだ。なでしこがボールを下げたことによって、カメルーンのDFはラインを上げようと試みるが、1人だけ上がりきれずに残っていた。なでしこがその凸凹をつくと3人がフリーになり、菅澤がノープレッシャーでヘディングシュートをたたき込んだ。

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著者プロフィール

ライター、女子サッカー解説者、FIFA女子Players of the year投票ジャーナリスト。主な著作に『世界一のあきらめない心』(小学館)、『サッカーなら、どんな障がいも越えられる』(講談社)、『伝記 人見絹枝』(学研)、シリーズ小説『イナズマイレブン』『猫ピッチャー』(いずれも小学館)など。構成者として『佐々木則夫 なでしこ力』『澤穂希 夢をかなえる。』『安藤梢 KOZUEメソッド』も手がける。

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