名将・小出監督が教えるフルマラソン完走術=東京マラソン直前対策

情報提供:角川SSC新書

「我慢、我慢、我慢。マラソンは我慢だよ」

2000年シドニー五輪では、高橋尚子(右)を日本人女子陸上競技選手初の五輪金メダルに導いた 【Photo:青木紘二/アフロスポーツ】

<フルマラソンの流れ(2)/中盤〜ゴール編>

 折り返し地点を過ぎると、少しは気持ちが楽になると思います。適正なペースを守り続けていれば、まだそれほど苦しいと感じることはありません。ここで、ひとつの分かれ道がやってきます。「半分も過ぎたし、ここらで少しずつ行ってみようか」と考えるか、「まだ20キロ以上ある、まだ早い」と自分に言い聞かせるか……。

僕はQちゃん(=高橋尚子)にはいつも、こう言っていました。
「我慢、我慢、我慢。マラソンは我慢だよ」と。

 いくらレースの中盤で調子が上がったからといって、無理をすると30キロ以降のペースダウンにつながります。必ず最後は脚がもたなくなってしまう。30キロ手前でエネルギーが十分残っているのは、ここまでの走り方が正しかったことの表れ。それを、わざわざ、崩してしまったら、なんにもなりません。流れに身を任せるくらいの気持ちで、エネルギーのロスを極力減らしながら、リラックスして走ることを心がけましょう。

脚の回転(ピッチ)を落とさないことが大事

 30キロを過ぎると、どんなに練習を積んでいても脚がきつくなります。筋肉が疲弊してきて、どうしてもストライドは小さくなってしまう。そうなったら、無理にストライドをのばそうとしたり、維持しようとしたりせず、できるだけ脚の回転(ピッチ)を落とさないことを意識する。そうすれば、粘り強い走りをキープすることができ、ペースの落ち幅を最小限に食い止めることができます。

 ほとんどのランナーは、いったん脚のバネがなくなったら、さすがに再び走り出すのは難しいと思います。どこのマラソン大会に行っても、30キロを過ぎると多くの人が歩いたり走ったりになっています。あるいは給水所で立ち止まって、その場で水を飲んでいます。走りながら水を飲んでいる人はほとんどいません。できればそこで止まらないで、コップを持ちながらでもあきらめずにがんばって走り続けましょう。

 ゴールゲートが視界に入ったら、自然と元気がわいてきます。動かなかった脚も、力を振り絞ってもう少し。脚を止めずに走り切って、最後は笑顔でゴールです!

<了>
■著書紹介
「マラソンは毎日走っても完走できない」(角川SSC新書)
 市民マラソン大会に出ると、30キロ過ぎから歩いてしまったり、あるいはスピードがガクンと落ちてしまう人がとても多い。みなさん、「毎日5キロ走っていた」など練習熱心な人が少なくないのだが、ではなぜ走れなくなってしまうのか? その理由は、毎日走っているだけではマラソンの練習になっていないから――。本書では、このマラソン用の練習を説いていく。初めて走ろうと考えている人から、将来フルマラソンを走ってみたいと思っているジョガー、そして3時間台での完走を目標にしているランナーにまで、段階別に伝授。金メダリストたちの練習内容も初公開する。

マラソン指導の第一人者、小出義雄が伝授するトレーニング方法とは!? 【角川SSC新書】

■著者プロフィール
小出義雄 / Yoshio Koide
有森裕子、高橋尚子ら五輪メダリストを育てたマラソン指導の第一人者。現在も実業団女子陸上競技部2チームを指導しているほか、市民ランナーの育成にも努めている。1939年4月、千葉県佐倉市生まれ。順天堂大学で箱根駅伝を3回走り、卒業後は千葉県立高校の陸上部を指導。1986年には市立船橋高校を全国高校駅伝優勝に導く。88年教職を辞し、リクルート監督へ。97年積水化学監督。2001年佐倉アスリート倶楽部設立。

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