【中日ドラゴンズ】新外国人投手 カイル・マラーを知る

note
チーム・協会

【【中日ドラゴンズ】新外国人投手 カイル・マラーを知る】

【これはnoteに投稿されたこむぎさんによる記事です。】
今季のペナントレースも苦戦を強いられ、屈辱の3年連続の最下位に沈んだ中日ドラゴンズ。来季こそ井上新監督の下、結果が求められるシーズンだが、追い打ちをかけるように守護神ライデル・マルティネスのジャイアンツ移籍、先発の柱である小笠原慎之介のポスティング等、既に来季への不安を煽る話題が溢れてしまっている。

しかし、暗い話題ばかりではない。今年10月のドラフトでは金丸夢斗の交渉権を井上新監督が見事引きあてると、勢いそのままに補強ポイントをほぼすべて埋める完璧な指名を披露。長年課題だった年齢とポジションバランスの悪い編成の問題を一気に解決した。野手は細川成也や石川昂弥といった若手スラッガー、投手は高橋宏斗と金丸夢斗のWエースを中心に、常勝期到来の未来図を描くことのできる編成がついに完成したのだ。

そんな希望溢れる新人投手に、来季すぐに無理をさせないという意味でも、今オフの先発投手の補強は最重要事項と言えるだろう。ここ数年の印象で「ドラゴンズの課題は打撃」と書かれた記事が近頃散見されるが、現在の中日ドラゴンズの最大の課題は「安定して1軍でイニングを投げられる先発投手」であることに間違いはない。そこに来季加わる頼もしい新戦力が、先日正式に獲得を発表された新外国人投手 カイル・マラー(Kyle Muller)だ。今回はそんな彼を分析していきたいと思う。

・カイルマラーのMLB実績

カイル・マラーは2021年にMLBデビューを果たし、今季まで4年連続でMLBでの登板を果たしている。4年間の実績は次の通りだ。
2024年:21試合 49回 防御率4.01 奪三振 36 四球10

MLB通算:54試合 175回 防御率5.90 奪三振141 四球77

MLB

来季の年齢が28歳と若く、直近のMLBにおける登板実績が十分にある点は非常にポジティブにとらえることができる。それでいて今季の防御率4.01という数字は、外国人助っ人としては十分なものと言えるだろう。

近年は特に、マイナーリーグとNPBのレベルの差が広がっているように筆者には見える。助っ人の獲得もマイナーとメジャーの当落線上に存在する所謂「4Aリーガー」と呼ばれる選手の獲得がより好ましいとする考え方も広がりつつあり、それに合致した人選が行われたのはチームにとって喜ばしいことだ。

・アームアングル変更による大幅に改善したコントロール

マラーは21年から23年のすべての年で四球率13%前後(MLB平均は8%前後)という高い数値を記録する制球力の悪さを課題にしてきた。そんな制球力が今年大幅に改善したのだ。次の数値をご覧いただきたい。
2023年:21試合 77回 防御率7.60 奪三振 56 四球39 四球率10.5%

2024年:21試合 49回 防御率4.01 奪三振 36 四球10 四球率5%

MLB

このように四球率が大幅に改善。その結果が、防御率や他の数字にも好影響を与えることとなった。

この背景には23年から24年にかけてのアームアングル(リリース時の腕の角度)の変更がある。

24年のカイル・マラーはそれまで3年間のアームアングル39度からなんと14度近く上げた53度に大きく変更。昨年よりオーバースローに近いフォームを採用したのだ。これが功を奏し、今年の制球力改善につながったとみられる。

また、フォーム変更に伴うフォーシームの球速の低下も、23年約150キロから24年約149キロと誤差の範囲に留めており、尚且つ変化球の変化量も大きな増減は見られなかったのことはファンの期待を大きく膨らませる材料だ。


・投球スタイルと弱点

マラーは以下の円グラフの割合で投球を行う。

MLB 【こむぎ】

一番多く投じるフォーシームの平均球速は149キロと、MLBでは平均を下まわる数値となっており、それが原因か、被打率も毎年.270を越える高い数値を記録している。

しかし、平均149キロはNPBでは決して遅い部類に入らないため、新しく取り入れたオーバースローの投球フォームと2mの長身を生かせば、NPBではかなり希少な角度から球が放たれることとなり、それが強みになるのではないかと考えている。

変化球は平均より縦方向に変化するスライダー、カーブ、そしてチェンジアップが存在する。

特に右投手に使うチェンジアップは、昨年の被打率.100 空振り率が驚異の45%と大きな武器となっている。

元々最速157キロの速球派で制球に苦しんでいたこともあり、四球こそ減少したものの、「ゾーン内でのまばらなコントロール」はマラーの弱点だ。失点するシーンも「甘く入って痛打」が多くみられる。

しかし、このチェンジアップだけは安定して右打者のインローに投げ込めており、前述した数値の根拠が伺える。ぜひこの球は投球割合を打者の左右に関係なく増やして、打ち取り方のレパートリーを増やしてもらいたい。

また、マラーはクイックモーションが信じられないくらい遅い。これも改善点であることは間違いないが、MLBは牽制制限ルールの影響で盗塁が容易であるため、中には開き直っている投手もいるようだ。マラーもその中の1人の可能性は捨てきれない。

仮にそうだとして、それを差し引いても筆者には走者は気にせず打者に集中する方が良いレベルに見えたため、割り切りが必要な部分となるかもしれない。


・期待膨らむ新助っ人カイル・マラー

今回の考察でMLB級でのカイル・マラーは全体的に平均的な選手である印象を受けた。しかし、要所要所が平均を少し下回る点がMLBで大きな実績を残せなかった要因だろう。

だが、国とリーグが変わればそれらも大きく変わる。

今まで強みでなかった部分が強みになることも、特にリーグのレベル差があると存在するだろう。それを見つけながら時には割り切る部分も作り、上手く適応してほしいと思う。

冒頭で話したようにカイル・マラーは来日する投手としては高級な部類に入れることができる。若く健康でポテンシャルもあり、日本人投手にない魅力を多く備えている。

沢山のイニングを消化し、25年中日ドラゴンズの先発陣を支えてくれることを期待したい。


こむぎ

※リンク先は外部サイトの場合があります

  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

メディアプラットフォーム「note」に投稿されたスポーツに関する記事を配信しています。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント