ヴィッセル神戸24シーズンレビュー
【ヴィッセル神戸24シーズンレビュー】
【これはnoteに投稿されたフットボールベアーさんによる記事です。】
今季のヴィッセルを振り返るには、指揮官の言葉がもっともぴったりと来る。
「競争と共存ー」。
まさにチームの総合力が結実したリーグ連覇、そして天皇杯のタイトル獲得だった。今回は2024年のヴィッセルを「編成」「指揮官・戦術」のテーマから振り返ってみたい。
「競争と共存ー」。
まさにチームの総合力が結実したリーグ連覇、そして天皇杯のタイトル獲得だった。今回は2024年のヴィッセルを「編成」「指揮官・戦術」のテーマから振り返ってみたい。
【編成】
2024年シーズンを迎えるにあたり、ヴィッセルの編成部は2つの課題をクリアする必要があった。1つは他クラブからの包囲網、もう1つは過密日程だ。
リーグ制覇を果たしたクラブは、前年の戦い方を研究され他クラブからのマークが厳しくなる。実際、今季は開幕から相手クラブが「対ヴィッセル」を想定した戦い方で挑んできた。これまで追う側だったヴィッセルにとって、追われる立場は未経験の領域。こうした包囲網を破るためにも、戦力的な積み上げが不可欠だった。
さらに24年シーズンはリーグ、天皇杯、ルヴァン杯に加え、ACLE(旧ACL)を戦う過密日程だ。とくにヴィッセルにとってACLは苦い記憶がある。過去2回の参戦時は、いずれもリーグで順位落とし、残留争いにも巻き込まれている。23年シーズンはリーグタイトルこそ獲得したが、カップ戦では選手層の薄さを露呈していた。
昨季の躍進を支えたメンバーをベースに、どれだけそこに続く戦力を補強できるかが、編成部に突きつけられた課題だった。
リーグ制覇を果たしたクラブは、前年の戦い方を研究され他クラブからのマークが厳しくなる。実際、今季は開幕から相手クラブが「対ヴィッセル」を想定した戦い方で挑んできた。これまで追う側だったヴィッセルにとって、追われる立場は未経験の領域。こうした包囲網を破るためにも、戦力的な積み上げが不可欠だった。
さらに24年シーズンはリーグ、天皇杯、ルヴァン杯に加え、ACLE(旧ACL)を戦う過密日程だ。とくにヴィッセルにとってACLは苦い記憶がある。過去2回の参戦時は、いずれもリーグで順位落とし、残留争いにも巻き込まれている。23年シーズンはリーグタイトルこそ獲得したが、カップ戦では選手層の薄さを露呈していた。
昨季の躍進を支えたメンバーをベースに、どれだけそこに続く戦力を補強できるかが、編成部に突きつけられた課題だった。
的確だったシーズン前の戦力補強
この2つの課題に対して、編成部の動きは的確だった。永井SDは「2チーム分の編成」を目標に掲げ、既存戦力を留めつつ、積極的にマーケットに打って出た。
まずエース大迫へのマークが厳しくなるのを想定して、川崎から宮代を獲得。さらに中盤には井手口と鍬先、SBには広瀬、CBに岩波を獲得した。GKには新井とオビ・パウエルを補強。シーズン開幕時点で、すべてのポジションにレギュラークラスが2名揃う豪華な陣容を作り上げた。
さらに大きかったのが、新加入組がいずれも戦力として機能した点だ。
宮代はWGやCFでの起用が予想されていたが、入団後はLIHとしても適性を発揮。ヴィッセルの新たな得点源として躍動した。中盤で輝きを放ったのが井手口だ。シーズン前半こそフィットに時間を要したが、山口の負傷離脱後はRIHに定着。抜群の運動量とボール奪取能力を武器に、神戸の中盤に君臨した。
ユーティリティ性を発揮しチームに貢献したのが、広瀬と鍬先だ。シーズン中に負傷者やコンディション不良でポジションに穴が生まれても、大崩れしなかったのは彼らの存在が大きい。
オフザピッチでの貢献ぶりが高かったのも、新戦力の特徴だった。GKの新井は持ち前のキャラクターとベテランならではの振る舞いで、チームの影のMVPとして活躍。オビ・パウエルも明るいキャラクターで絶えずチームを盛り上げる姿が印象的だった。
ベテランという点では、岩波の存在も頼もしかった。ACLでも気負うことなくプレーできる経験値の高さは、過密日程を戦うチームにとって貴重な存在だ。
まずエース大迫へのマークが厳しくなるのを想定して、川崎から宮代を獲得。さらに中盤には井手口と鍬先、SBには広瀬、CBに岩波を獲得した。GKには新井とオビ・パウエルを補強。シーズン開幕時点で、すべてのポジションにレギュラークラスが2名揃う豪華な陣容を作り上げた。
さらに大きかったのが、新加入組がいずれも戦力として機能した点だ。
宮代はWGやCFでの起用が予想されていたが、入団後はLIHとしても適性を発揮。ヴィッセルの新たな得点源として躍動した。中盤で輝きを放ったのが井手口だ。シーズン前半こそフィットに時間を要したが、山口の負傷離脱後はRIHに定着。抜群の運動量とボール奪取能力を武器に、神戸の中盤に君臨した。
ユーティリティ性を発揮しチームに貢献したのが、広瀬と鍬先だ。シーズン中に負傷者やコンディション不良でポジションに穴が生まれても、大崩れしなかったのは彼らの存在が大きい。
オフザピッチでの貢献ぶりが高かったのも、新戦力の特徴だった。GKの新井は持ち前のキャラクターとベテランならではの振る舞いで、チームの影のMVPとして活躍。オビ・パウエルも明るいキャラクターで絶えずチームを盛り上げる姿が印象的だった。
ベテランという点では、岩波の存在も頼もしかった。ACLでも気負うことなくプレーできる経験値の高さは、過密日程を戦うチームにとって貴重な存在だ。
夏移籍でのダメージはゼロ。パーソナリティに注目した補強方針も◎
さて編成部については、夏のマーケットの動きにも触れておきたい。ここ数シーズンJリーグでは、夏移籍で主力選手が海外へ移籍するケースが増えている。クラブも新戦力を獲得しダメージを最小限に抑えるが、戦力収支はマイナスになるケースが多い。
こうした状況にあってこの夏、神戸の主力の流出はゼロ。育成目的のレンタル移籍こそあったが、ベンチメンバーが出場機会を求めてクラブを離れるケースもなかった。
これは開幕時のチーム編成が成功し、その後もポジティブな関係性を構築できている証拠といえる。補強も古巣復帰となる森岡とレンタルバックの冨永のみだったことを考えれば、無理に新戦力の獲得に動かずとも、シーズンを戦い抜ける手応えがあったということだろう。
さらに特筆しておきたいのが、ここ数シーズンのヴィッセルは、能力だけでなく選手のパーソナリティも考慮して補強を進めている点だ。これは吉田監督のマネジメント手腕も大きいとはいえ、新加入で獲得する選手はいずれも向上心とチームへ貢献する姿勢を見せている。スカウティングの段階で選手のパーソナリティをチェックしているのは間違いない。
いずれにしても、これだけの過密日程の中、現場サイドがシーズンを通して戦力不足に悩むような展開を回避した編成部の手腕を、あらためて評価したい。
こうした状況にあってこの夏、神戸の主力の流出はゼロ。育成目的のレンタル移籍こそあったが、ベンチメンバーが出場機会を求めてクラブを離れるケースもなかった。
これは開幕時のチーム編成が成功し、その後もポジティブな関係性を構築できている証拠といえる。補強も古巣復帰となる森岡とレンタルバックの冨永のみだったことを考えれば、無理に新戦力の獲得に動かずとも、シーズンを戦い抜ける手応えがあったということだろう。
さらに特筆しておきたいのが、ここ数シーズンのヴィッセルは、能力だけでなく選手のパーソナリティも考慮して補強を進めている点だ。これは吉田監督のマネジメント手腕も大きいとはいえ、新加入で獲得する選手はいずれも向上心とチームへ貢献する姿勢を見せている。スカウティングの段階で選手のパーソナリティをチェックしているのは間違いない。
いずれにしても、これだけの過密日程の中、現場サイドがシーズンを通して戦力不足に悩むような展開を回避した編成部の手腕を、あらためて評価したい。
【指揮官・戦術】
「これが僕のサッカーですし、ヴィッセルのサッカー」。優勝直後のインタビューで吉田監督が述べた言葉だ。
昨季ヴィッセルにクラブ史上初のリーグタイトルをもたらした吉田監督。今季大きく変わったのは、ピッチ際での佇まいだ。試合中も動揺や焦りを見せるシーンが減り、じっくり試合の流れを読みながら、どこで手を打つかを見定める。昨季の優勝で得た手応えを自信に、指揮官として一皮むけたような印象だ。
普段はチームの一体感を強調する指揮官が「僕のサッカー」と自分を主語に置いたのは、自負のあらわれに受け取れた。確かな手応えがあったシーズン。では今季の吉田ヴィッセルはどのような戦い方でタイトルを獲得したのか。
昨季ヴィッセルにクラブ史上初のリーグタイトルをもたらした吉田監督。今季大きく変わったのは、ピッチ際での佇まいだ。試合中も動揺や焦りを見せるシーンが減り、じっくり試合の流れを読みながら、どこで手を打つかを見定める。昨季の優勝で得た手応えを自信に、指揮官として一皮むけたような印象だ。
普段はチームの一体感を強調する指揮官が「僕のサッカー」と自分を主語に置いたのは、自負のあらわれに受け取れた。確かな手応えがあったシーズン。では今季の吉田ヴィッセルはどのような戦い方でタイトルを獲得したのか。
昨季に引き続きハイインテンシティがベースに
昨季から引き続き今季のヴィッセルも、ハイインテンシティ(高強度)をベースとした戦術を採用している。
基本の立ち位置は中盤の底を1枚とする4‐3‐3。これが守備時はLIHがCFと並ぶように2トップを形成。さらに両WGも高い位置を取り、4‐2‐4のような形でハイプレスを仕掛ける。相手のDFラインがプレッシャーから逃れるようにボールをリリースさせるのが狙いで、このボールを奪いカウンターに繋げるのが基本戦術だ。
ボール奪取が難しい場合は、素早くトランジション(切り替え)し、4‐4‐2のブロックを敷く。神戸はこのトランジションの速さが大きな特徴で、守→攻だけでなく、攻→守の場面でも素早くボールを展開し、一気にゴール前へ攻め込む形を得意にしている。リーグ最終節に武藤が決めた2点目のゴールは、まさに神戸の十八番とも呼べる得点シーンだ。
とはいえ、シーズン序盤は昨季ほどの破壊力が披露できない時期も続いた。特に影響が大きかったのが、大迫への徹底マークだ。前線でボールを収め後方の攻め上がりを促す大迫は、神戸の攻撃を支える要とも呼べる。しかし今季は開幕から大迫に複数人でマークを付けるなど、起点を潰されるシーンが増え、ゴール前での迫力を欠いた。
さらに神戸のロングボールを警戒し、最終ラインのキッカーに対して早めにプラスを仕掛ける、あるいは3CB(守備時は5バック)を採用し、神戸のプレスを機能させないといった対策も浸透。こうした他クラブの包囲網に対して、微調整を加えながら打開策を探るような序盤戦だった。
基本の立ち位置は中盤の底を1枚とする4‐3‐3。これが守備時はLIHがCFと並ぶように2トップを形成。さらに両WGも高い位置を取り、4‐2‐4のような形でハイプレスを仕掛ける。相手のDFラインがプレッシャーから逃れるようにボールをリリースさせるのが狙いで、このボールを奪いカウンターに繋げるのが基本戦術だ。
ボール奪取が難しい場合は、素早くトランジション(切り替え)し、4‐4‐2のブロックを敷く。神戸はこのトランジションの速さが大きな特徴で、守→攻だけでなく、攻→守の場面でも素早くボールを展開し、一気にゴール前へ攻め込む形を得意にしている。リーグ最終節に武藤が決めた2点目のゴールは、まさに神戸の十八番とも呼べる得点シーンだ。
とはいえ、シーズン序盤は昨季ほどの破壊力が披露できない時期も続いた。特に影響が大きかったのが、大迫への徹底マークだ。前線でボールを収め後方の攻め上がりを促す大迫は、神戸の攻撃を支える要とも呼べる。しかし今季は開幕から大迫に複数人でマークを付けるなど、起点を潰されるシーンが増え、ゴール前での迫力を欠いた。
さらに神戸のロングボールを警戒し、最終ラインのキッカーに対して早めにプラスを仕掛ける、あるいは3CB(守備時は5バック)を採用し、神戸のプレスを機能させないといった対策も浸透。こうした他クラブの包囲網に対して、微調整を加えながら打開策を探るような序盤戦だった。
シーズンを通して課題を修正しながら、戦い方の幅を広げる
ただ、こうした課題を修正しながら、戦い方の幅を広げていったのが今季の神戸だった。
大迫対策に対しては、宮代が大きな役目を果たした。大迫は自身にマークが集中するのを逆手に取り、あえてサイドに流れるようにしてマークを引き付け、味方のスペースを作り出していた。吉田監督はこの大迫の動きをさらに生かすため、宮代をLIHやLWGで起用。昨季は武藤と大迫の右サイドに偏っていた攻撃に、宮代という左サイドの“槍”を加えた。
宮代は3節で初ゴールを決めると、その後もコンスタントに得点を重ね、最終的に2桁得点をマーク。天皇杯決勝のゴールをはじめ、カップ戦でも印象的なゴールを決めるなど、神戸の新たな得点源として機能した。
最終ラインのプレスに対しては、後方でボールをつなぐビルドアップに取り組んだ。基本戦術はボールを奪ったら縦に速く蹴るのがベースだが、シーズン終盤は後方でポゼッションするシーンも増加。ある程度マーカーを喰いつかせ、ひっくり返すように前線にボールを供給するといった柔軟性も披露した。
3CBにはサイドに守備能力が高い広瀬らを起用し、よりはっきりとパスコースを限定。後方ラインを高く保ち、きちんと中盤で“網”を張る意識を徹底させ、苦手意識を払拭していった。
終わってみれば、2桁得点が3人。“戦術大迫”とも形容された昨季の神戸だが、シーズンを経てチーム全体で得点を奪う集団へと進化を遂げた。
さて、攻撃面への言及が多くなったが、神戸のベースは安定した守備にあるのは間違いない。今季もGKの前川、CBの山川・トゥーレル、アンカーの扇原を軸に強固なセンターラインを形成。幾度も決定機を刈り取り、攻撃陣へバトンを渡した。また、前線の選手もネガティブトランジション(攻→守)では積極的にプレスバックし、隙を見せないプレーぶりが光った。
大迫対策に対しては、宮代が大きな役目を果たした。大迫は自身にマークが集中するのを逆手に取り、あえてサイドに流れるようにしてマークを引き付け、味方のスペースを作り出していた。吉田監督はこの大迫の動きをさらに生かすため、宮代をLIHやLWGで起用。昨季は武藤と大迫の右サイドに偏っていた攻撃に、宮代という左サイドの“槍”を加えた。
宮代は3節で初ゴールを決めると、その後もコンスタントに得点を重ね、最終的に2桁得点をマーク。天皇杯決勝のゴールをはじめ、カップ戦でも印象的なゴールを決めるなど、神戸の新たな得点源として機能した。
最終ラインのプレスに対しては、後方でボールをつなぐビルドアップに取り組んだ。基本戦術はボールを奪ったら縦に速く蹴るのがベースだが、シーズン終盤は後方でポゼッションするシーンも増加。ある程度マーカーを喰いつかせ、ひっくり返すように前線にボールを供給するといった柔軟性も披露した。
3CBにはサイドに守備能力が高い広瀬らを起用し、よりはっきりとパスコースを限定。後方ラインを高く保ち、きちんと中盤で“網”を張る意識を徹底させ、苦手意識を払拭していった。
終わってみれば、2桁得点が3人。“戦術大迫”とも形容された昨季の神戸だが、シーズンを経てチーム全体で得点を奪う集団へと進化を遂げた。
さて、攻撃面への言及が多くなったが、神戸のベースは安定した守備にあるのは間違いない。今季もGKの前川、CBの山川・トゥーレル、アンカーの扇原を軸に強固なセンターラインを形成。幾度も決定機を刈り取り、攻撃陣へバトンを渡した。また、前線の選手もネガティブトランジション(攻→守)では積極的にプレスバックし、隙を見せないプレーぶりが光った。
際立ったマネジメント能力
こうして見ると、神戸の戦術には攻守の継ぎ目がないことが分かる。攻撃時は守備を、守備時は攻撃を常に意識し、いわゆる4局面(攻、守、攻→守、守→攻)がシームレスに連動している。近年はこうしたサッカーがトレンドだが、口で言うほど簡単なものではない。フィジカル、メンタル、インテリジェンス、いずれの能力にも高い負荷が掛かる。
このサッカーをシーズン通してやり切るにはコンディション維持が欠かせないが、際立ったのが吉田監督のマネジメント能力だ。
例えば過密日程によりコンディションが落ちれば、主力をベンチスタートにする試合も多かった。吉田監督はシーズン後、コンディション維持だけでなく選手を発奮させる意図もあったと話したが、昨季はスタメンの入れ替えを最小限に留めていただけに、大きな変化と言える。
さらにカップ戦をうまく利用し、戦力の上積みに成功したのも、大きな成果だ。基本的にカップ戦ではレギュラークラスを温存し、出場機会が少ないメンバーで試合に臨んだ。カップ戦で好プレーを披露すれば、リーグ戦でも起用。普段の練習から評価の基準を一定にし、試合で結果を出せば出場機会を得られる。好調時はチームをいじらないという原則は変えないものの、負けや引き分けのタイミングではスタメンを思い切って入れ替える大胆さも持ち合わせていた。
昨季から大迫や武藤が指揮官への厚い信頼を口にしているが、イレギュラーな存在を作らない「孝行式」マネジメントは、間違いなく連覇達成の鍵だった。広瀬や鍬先、山内や日髙らを本職以外のポジションで起用し、プレイヤーの可能性を広げるような起用法もハマった。
シーズン終盤は交代策がピタリとハマる試合も多く、チームだけでなく指揮官もJ王者仕様にアップデートされたシーズンだった。
このサッカーをシーズン通してやり切るにはコンディション維持が欠かせないが、際立ったのが吉田監督のマネジメント能力だ。
例えば過密日程によりコンディションが落ちれば、主力をベンチスタートにする試合も多かった。吉田監督はシーズン後、コンディション維持だけでなく選手を発奮させる意図もあったと話したが、昨季はスタメンの入れ替えを最小限に留めていただけに、大きな変化と言える。
さらにカップ戦をうまく利用し、戦力の上積みに成功したのも、大きな成果だ。基本的にカップ戦ではレギュラークラスを温存し、出場機会が少ないメンバーで試合に臨んだ。カップ戦で好プレーを披露すれば、リーグ戦でも起用。普段の練習から評価の基準を一定にし、試合で結果を出せば出場機会を得られる。好調時はチームをいじらないという原則は変えないものの、負けや引き分けのタイミングではスタメンを思い切って入れ替える大胆さも持ち合わせていた。
昨季から大迫や武藤が指揮官への厚い信頼を口にしているが、イレギュラーな存在を作らない「孝行式」マネジメントは、間違いなく連覇達成の鍵だった。広瀬や鍬先、山内や日髙らを本職以外のポジションで起用し、プレイヤーの可能性を広げるような起用法もハマった。
シーズン終盤は交代策がピタリとハマる試合も多く、チームだけでなく指揮官もJ王者仕様にアップデートされたシーズンだった。
【来季】
最後に、12月19日現在の情報をベースに、来季の展望を述べてみたい。
シーズン終了後から、さっそくチーム編成の情報が飛び交っている。基本的に神戸は契約更新のリリースは発表しない。情報管理も徹底されているため、例年OUT→INの流れで行われるクラブリリースを待つしかない。
すでに決定している情報では、MF中坂が契約満了で退団。高卒でGKウボング・リチャード・マンデー(福知山成美高校)の加入が内定。さらにアカデミーからDF山田の昇格が10月に内定している。同じくアカデミーのMF濱﨑は、26年シーズンからの加入内定が発表された。レンタルバックを含めまだ動きは少ないが、ここから年末に向けて慌ただしい動きが予想される。
シーズン終了後から、さっそくチーム編成の情報が飛び交っている。基本的に神戸は契約更新のリリースは発表しない。情報管理も徹底されているため、例年OUT→INの流れで行われるクラブリリースを待つしかない。
すでに決定している情報では、MF中坂が契約満了で退団。高卒でGKウボング・リチャード・マンデー(福知山成美高校)の加入が内定。さらにアカデミーからDF山田の昇格が10月に内定している。同じくアカデミーのMF濱﨑は、26年シーズンからの加入内定が発表された。レンタルバックを含めまだ動きは少ないが、ここから年末に向けて慌ただしい動きが予想される。
難しい立ち回りを迫られるチーム編成
今季の戦いぶりから新シーズンの編成を予想してみたいが、編成部は難しい立ち回りを迫られるのではないか。リーグ2連覇を達成した今季のチームは、昨季のチームに比べ格段に完成度が高い。主力・控えを含め陣容は充実しており、選手を入れ替える緊急度は低い。
こうなると、マーケットでも昨季ほどの積極的な動きは難しくなる。新陳代謝を促すような新戦力は欲しいが、これだけ陣容が固まったチームへの移籍には、選手側にも相応の覚悟と魅力的なギャランティーが必要だ。
その一方で、来季は今季以上の過密日程が予想される。レンタルバックで陣容を整えるにしても、出場機会が限られる状況で若手をチームに留めておくのは得策ではない。選手の数は必要だが、数に見合った出場機会を用意できないのが実情だ。
となれば、まずは既存戦力の慰留が最優先事項。仮に退団選手が出た場合は、レンタルバックとの兼ね合いを見ながら補強に動くことになる。編成部としてはどうしても後手に回らざるを得ない。
こうして考えると、一時代を築いたクラブがいかに難しい編成を迫られていたのかが想像できる。とくに若手や中堅が欧州へ移籍するのが当たり前となった近年は、チーム編成が振り出しに戻る事態も想定しておかなければならない。幸い神戸はここまで海外への移籍では上手く立ち回ってきた印象だが、来季ACLEが終了した夏のマーケットでは何かしら動きがあるかもしれない。
編成部が頭を悩ますもう1つの理由が、世代交代だ。昨季から主力選手の年齢は議論されてきたが、四天王をはじめ神戸のベテラン組は競争でスタメンを勝ち取っている。稼働率がやや落ちてきているのも事実だが、安易な世代交代はチーム内にネガティブな影響をもたらしかねない。これまで吉田監督が築いてきたチームマネジメントの根幹にも関わる部分だ。若手の突き上げでスタメンが入れ替わるのは大歓迎だが、クラブ主導で動くとなれば、デリケートな判断が必要だ。
レンタルバックとピンポイントの補強で前半を戦い、状況に応じて夏の移籍で新戦力を獲得する。これが一番現実的な動きか。
こうなると、マーケットでも昨季ほどの積極的な動きは難しくなる。新陳代謝を促すような新戦力は欲しいが、これだけ陣容が固まったチームへの移籍には、選手側にも相応の覚悟と魅力的なギャランティーが必要だ。
その一方で、来季は今季以上の過密日程が予想される。レンタルバックで陣容を整えるにしても、出場機会が限られる状況で若手をチームに留めておくのは得策ではない。選手の数は必要だが、数に見合った出場機会を用意できないのが実情だ。
となれば、まずは既存戦力の慰留が最優先事項。仮に退団選手が出た場合は、レンタルバックとの兼ね合いを見ながら補強に動くことになる。編成部としてはどうしても後手に回らざるを得ない。
こうして考えると、一時代を築いたクラブがいかに難しい編成を迫られていたのかが想像できる。とくに若手や中堅が欧州へ移籍するのが当たり前となった近年は、チーム編成が振り出しに戻る事態も想定しておかなければならない。幸い神戸はここまで海外への移籍では上手く立ち回ってきた印象だが、来季ACLEが終了した夏のマーケットでは何かしら動きがあるかもしれない。
編成部が頭を悩ますもう1つの理由が、世代交代だ。昨季から主力選手の年齢は議論されてきたが、四天王をはじめ神戸のベテラン組は競争でスタメンを勝ち取っている。稼働率がやや落ちてきているのも事実だが、安易な世代交代はチーム内にネガティブな影響をもたらしかねない。これまで吉田監督が築いてきたチームマネジメントの根幹にも関わる部分だ。若手の突き上げでスタメンが入れ替わるのは大歓迎だが、クラブ主導で動くとなれば、デリケートな判断が必要だ。
レンタルバックとピンポイントの補強で前半を戦い、状況に応じて夏の移籍で新戦力を獲得する。これが一番現実的な動きか。
レンタルバックでは泉・櫻井・尾崎に注目。ピンポイントの補強はSBと前線に
レンタルバックでは泉、櫻井、尾崎といった所属先で出場機会を得た選手達に期待がかかる。泉がLWGで計算できれば、RSBに広瀬を想定できる。櫻井は神戸には少ないプレイメーカータイプ。扇原のポジションを鍬先と争えれば面白い。尾崎に関してはCBが本職と考えているが、愛媛でRSBとしてシーズンを戦った成長は一度確認しておきたい。
ピンポイントの補強をするとなれば、RSBと前線に厚みを加えたい。今季やりくりに苦労したのが、RSBとLWGだ。RSBは酒井が盤石だが、できれば広瀬クラスを控えに置ける体制を整えたい。LWGはコンディション不良もあり、スタメンが固定できなかったポジション。宮代を起用する手もあるが、個人的には中央寄りのポジションに適性があると見ている。佐々木を起用するにしても、もう1枚は攻撃的な選手が欲しい。ACLEを見据えて、CFに外国籍選手を獲得し、佐々木らをWGやIHで起用するのもありだ。
来季を見据え、編成部と吉田さんがどこに手を加えるのか注目だ。
ピンポイントの補強をするとなれば、RSBと前線に厚みを加えたい。今季やりくりに苦労したのが、RSBとLWGだ。RSBは酒井が盤石だが、できれば広瀬クラスを控えに置ける体制を整えたい。LWGはコンディション不良もあり、スタメンが固定できなかったポジション。宮代を起用する手もあるが、個人的には中央寄りのポジションに適性があると見ている。佐々木を起用するにしても、もう1枚は攻撃的な選手が欲しい。ACLEを見据えて、CFに外国籍選手を獲得し、佐々木らをWGやIHで起用するのもありだ。
来季を見据え、編成部と吉田さんがどこに手を加えるのか注目だ。
2024年はヴィッセルにとって、間違いなくクラブ史に残るシーズンだった。着実にチーム力が向上し、クラブが総力戦で挑む体制が構築されはじめている。
個人的に2025年シーズンはクラブの集大成になると予想している。チームの年齢構成を考えれば、26年からは本格的な世代交代が訪れる。シーズン移行のタイミングも含めれば、クラブが新たなターンを迎える可能性が高い。
となれば、来季は是が非でもタイトルを獲得したい。3連覇という偉業はもちろん、悲願であるアジアタイトルに一致団結して挑んでいきたい。
まずはこのオフにどれだけスカッドを揃えられるか。年明けの戦力分析で、筆者のポジティブな声を届けられるのを願っている。
個人的に2025年シーズンはクラブの集大成になると予想している。チームの年齢構成を考えれば、26年からは本格的な世代交代が訪れる。シーズン移行のタイミングも含めれば、クラブが新たなターンを迎える可能性が高い。
となれば、来季は是が非でもタイトルを獲得したい。3連覇という偉業はもちろん、悲願であるアジアタイトルに一致団結して挑んでいきたい。
まずはこのオフにどれだけスカッドを揃えられるか。年明けの戦力分析で、筆者のポジティブな声を届けられるのを願っている。
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