早大フィギュア部門・山田琉伸 3回転アクセルに2度挑戦 悔しさ残る演技も攻めの姿勢を貫く/全日本選手権男子FS

チーム・協会
全日本選手権 12月21日 大阪・東和薬品RACTABドーム
【早稲田スポーツ新聞会】記事 吉本朱里、写真 荘司紗奈

 競技2日目に行われた男子フリースケーティング(FS)。目標としていたショートプログラム(SP)通過を果たした山田琉伸(人通2=埼玉栄)がトップバッターで演技を行い、FS86・29点、総合146・49点で24位となった。ジャンプのミスが目立つ悔しい演技となったものの、3回転アクセルを2本投入した攻めのプログラムを滑り切り、大歓声の中初めての全日本選手権を終えた。

『Cinema Paradiso (Se)』を演じた山田 【早稲田スポーツ新聞会】

 客席からの力強い「ガンバッ」の声に背中を押されるように、堂々とした表情でリンクに登場した山田。SPを通過できれば、FSには絶対に入れると決めていた3回転アクセルで演技をスタートさせた。1本目は空中で回転がほどけ、1回転アクセルに。すると、練習を重ねてきたジャンプを「やらずに終わるのは嫌だ」という思いから急遽構成を変更し、再度3回転アクセルに挑戦。しかし、2本目も回転不足で着氷し、転倒してしまい、成功とはならなかった。その後も序盤の2本のミスが影響したのか、ジャンプでも回転の抜けや転倒など、珍しいミスが続く。3回転ルッツからのコンビネーションを2本着氷させる意地を見せたものの、ジャンプで苦しむ展開となった。SPとは打って変わってスピン、ステップでもレベルを取りこぼすなど、精彩を欠いた。

 それでも、終盤の見せ場となるステップシークエンスとコレオシークエンスでは、長身を生かしたのびやかな滑りを披露。スピード感のあるレイバックイナバウアーでは観客の拍手を誘った。相次いだ転倒による足の疲労で思うように滑ることができなかったというものの、着実に力をつけてきたスケーティングや身体の使い方で、郷愁を誘う優しい曲調と力強いボーカルのコントラストが美しい『Cinema Paradiso (Se)』をしっかりと表現した。沖縄から埼玉へ、埼玉から現在の拠点の新横浜へ。環境の変化を繰り返しながら一歩一歩、成長を重ねてきた山田のスケートをしかと見せつけた。

力強く滑りきった山田 【早稲田スポーツ新聞会】

 納得のいく演技を見せることができず、悔しさをにじませた山田。しかし、初めての大舞台で堂々とした姿を見せた。初日の公式練習から、滑りながら笑顔を見せる場面も多く、「ショートもフリーも緊張よりも楽しいの方が勝っていた」という。第一関門のSP通過、3回転アクセルへの挑戦など、収穫も多い大会となったはずだ。「この舞台にまた出られるように頑張りたい」。初めての大舞台での充実した経験を糧に、この先もスケートを磨き続けていく。まずは年明けの全日本学生選手権(インカレ)での山田の演技に期待したい。

結果

▽男子シングル

山田琉伸

SP 24位 60・20点
FS 24位 86・29点
総合 24位 146・49点

コメント

山田琉伸(人通2=埼玉栄)

――かなり構成を変えてチャレンジをしたフリー(FS)だったと思います。ご自身で振り返っていかがですか

 今回の全日本はショート(SP)を通ることが一番の目標だったので、フリーで自分の今できる精一杯を出すということと、挑戦するジャンプも入れていこうかなと思っていました。予定では3回転アクセル1本の構成だったのですが、最初シングル(1回転)になってしまうミスがあったので、2本目に入れてみたり、自分の今できる最大の難度の構成で挑んでみたのですが、ちょっと納得のいく結果ではなかったです。

――その中でもスケーティングの向上という点では魅せるものがあったと思いますが、ご自身ではいかがですか

 ミスの連発によって足に負担がかかっていたというか、疲労が蓄積していたので、思うようなスケーティングが100パーセント見せることができた自覚はあまりないのですが、昨年の自分よりはスケーティングの部分で大きく成長できたかなと思います。

――紀子先生から終わった後に何か声をかけられましたか

 「どうしても3回転アクセル入れたかったんだね」と優しく言ってくださりました。

――先生には相談せずに、3回転アクセルを入れたのですか

 昨日のショートでまず入れるか迷っていて、(SP)通過した後、フリーでは入れますというお話をして。今日は投入というかたちになりました。

――3回転アクセルを入れることはショート後に決めていたのですか

 そうですね。ショートを通過したら、絶対3回転アクセルはやると決めていたので。試合に来る前からそれは決めていました。1本目がシングルになってしまったのですが、ひたすら1カ月間3回転アクセルの練習をいっぱいやってきたので、さすがにやらずに終わるのは嫌だと思って、2本目を急遽3回転アクセルにしました。

――これまで3回転アクセルは試合で決まっていましたか

 3月の地方大会で一応成功はしているのですが、そこからまだ成功はないです。今シーズンは成功できていないので、残りの試合で入れていきたいと思います。

――(3回転アクセルは)練習ではいかがでしたか

 降り始めたのが昨シーズンの最後で、その時は軽々跳べるくらいまでは行っていたのですが、今シーズンは安定していなくて。シーズン中盤にちょくちょく練習で降りるようにはなっていたのですが、ちょっと今回の試合では成功できませんでした。

――理想の3回転アクセルなどはありますか

 羽生選手(結弦)の3回転アクセルはすごく好きです。ジャンプタイプが違うので真似できるかと言われるとちょっと厳しいと思うのですが、きれいな質の、加点がもらえるアクセルを目指していきたいです。

――今回はフリー進出が目標とおっしゃっていました。ショートが終わって第一関門突破というかたちでしたが、ショートと比べて緊張はいかがでしたか

 今回はショートに全神経を注いできたと言っても過言ではないくらい、ショート通過が自分の中で一番の目標でした。フリーは気が楽だったとはいえ、もう精一杯最後まで出し切ろうという思いがあったので、気合いは入っていました。ただ、ショートのような緊張でガタガタというのはあまりなかったです。

――大きな声援もありましたが、これだけの観客の方々の前で滑る経験についてはいかがですか

 正直ショートもフリーも緊張よりも楽しいの方が勝っていました。自分の演技によって大きな歓声が生まれるということが自分にとってはすごく嬉しかったので、この舞台にまた出られるように頑張りたいです。
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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