早大ラクロス部女子 関西王者を撃破し、史上初の日本一に輝いた!/全日本大学選手権 決勝

チーム・協会

全日本大学選手権 決勝 12月15日 スピアーズえどりくフィールド

【早稲田スポーツ新聞会】記事 長屋咲希 写真 飯田諒、廣野一眞、髙岡紗也、石澤直幸、高津文音、辻岡真波、永吉結衣

 3週間前に行われた準決勝で、苦しみながらも南山大を倒し、『柏原組』はついに決勝の舞台に駒を進めた。最後の相手は6年ぶりの優勝を狙う関学大。明大との準決勝ではサドンビクトリーの末に勝利をつかむなど、非常に勢いに乗った相手との決戦となった。試合前半は相手の好守にも阻まれ、早大は思うように得点を挙げられず、リードを許す。しかし前半終了間際、MF田中美亜(スポ4=東京・国立)がドローブレイクからのショットを決めると、この得点を皮切りに、後半は怒涛の4連続得点で相手を一気に突き放した。関学大の意地の反撃もものともせず、勝利を収め、念願の「学生日本一」を達成した。

試合後、喜ぶ選手たち 【早稲田スポーツ新聞会】

 最初のドローを取った関学大は、速攻を仕掛けるが、早大の激しいディフェンスによりシュートまで持ち込ませず。ポゼッションを奪った早大は、こちらもランクリアから素早い攻撃を仕掛けるが、パスが通らずターンオーバーとなった。まだ落ち着かない展開の中、早大ディフェンスがファールを取られ、関学大はフリーシュートを獲得。しかしここはG柏原陽菜乃主将(創理4=東京・大妻多摩)がうまく弾き、先制点は許さなかった。再び攻撃権を手にした早大は、MF田中が1on1から攻め入りフリーシュートの機会を得るも、惜しくも枠外に。その後も、ショットに持ち込んでも相手ゴーリーにセーブされるなど、これまでの試合以上に苦戦している様子を見せた。そんな中、ポゼッションを取った関学大に対して、激しい早大のディフェンスがファールを取られ、マンダウン状態に。絶体絶命の状況の中、関学大は自陣ゴール前でのパス回しで早大を翻弄(ほんろう)。開始5分でこぼれ球を押し込み、先制点を挙げた。すぐに追いつきたい早大だったが、ゴール手前でバランスを崩しターンオーバーになるなど、反撃の糸口を見つけられない。苦戦を強いられる中、13分にMF脇田萌衣(教4=東京・白百合学園)がようやくフリーシュートを決め、1-1で最初の15分を終えた。

 第2Q(クオーター)も苦しい時間が続く。MF脇田がドローを制し、早大は積極的にゴールを狙うが、相手ゴーリーの好セーブもありなかなか得点を奪えない。相手に攻撃権を渡すと、関学大はランクリアからゴール前に一気に攻め込み、フリーシュートを獲得。上から振り下ろしたショットがネットを揺らし、勝ち越し点となった。すぐに追いつきたい早大だったが、クリアの最中でのダウンボールなどでポゼッションを逃し、得点のチャンスを作れない。対照的に、関学大は早大のダブルチームにも臆せず、ショットを次々に放っていったが、G柏原主将の再三の好セーブで追加点を防いだ。両校無得点の時間が続く中、残り30秒を切ったところで、AT林知奈美(関学大)の自身3点目となるバックシュートが飛び出し、2点差に。このまま関学大ペースで前半が終了すると思われたが、終了間際、MF田中がドローを制した勢いのままゴールに向かって一直線に駆け出し、そのままボールをゴールにねじ込んだ。試合の流れを変えるこの大きな1点で、前半の攻防が終わった。

最優秀選手賞を受賞したG柏原主将 【早稲田スポーツ新聞会】

 2-3の1点差で迎えた第3Q。ドローを制した早大は、ゴール前に攻め込み、幾度もショットのチャンスを伺う。フリーシュートを止められ、相手に攻撃権を渡すも、すぐに取り返し、再びゴール前でのパス回しを続けた。得点板が動いたのは8分、AT横幕円香(文構4=神奈川・公文国際学園)がフリーシュートを獲得。バウンドシュートを決め、同点に追いついた。勢いに乗った早大は、10分、MF脇田のフリーシュートで、この試合初めて勝ち越しに成功すると、直後の11分には、AT星川陽恵(スポ4=埼玉・浦和一女)が1on1からゴール前に入り込んで放ったショットで、2点差をつけた。関学大には全く付け入る隙を与えないまま、5-3で最後の15分を迎えた。

 迎えた最終第4Q。最初のドローを逃したが、DF山田麻由(商3=東京・国立)、DF戸上沙耶佳(スポ4=埼玉・市浦和)を中心とするマンディフェンスで関学大の反撃を封じ込み、ポゼッションを奪い返した。2点のリードを保持している早大は、敵陣に入ってからパス回しに徹した。関学大も決死のライドを見せるが、安定感のあるパス回しで時間の経過を待った。攻撃権を保持したまま、7分、関学大ディフェンスがファールを取られ、AT横幕がフリーシュートを獲得。ここを確実に決め切り、6点目を挙げた。しかし、西の女王関学大も黙ってはいない。直後のドローを制すると、ここまで早大ディフェンス陣から厳しいマークを受けていたMF大井里桜(関学大)が、ディフェンスを振り切りショットを決め、点差は2点に縮まった。残り時間は6分。2点差をひっくり返すにはまだ十分な時間である。ここまで高いドロー率を保ってきたMF脇田が、2連続でドローを逃し、再びポゼッションは関学大に。どことなく怪しい雰囲気が漂う中、チームを救ったのはG柏原主将。なんとか点差を縮めようとショットを多発する関学大を冷静に食い止め、攻撃権を取り戻した。DF戸上が右サイドからランクリアで敵陣に攻め込むと、ボールを受けたAT星川が右サイドからゴール左下を狙ってシュート。これがゴールに収まり、貴重な追加点を挙げた。相手に向かいかけた流れを再びこちらに取り戻す大きな1点に、普段は冷静な表情を浮かべるAT星川も満面の笑みを見せた。試合時間は残り3分。ここで意地のプレーを見せたのは、AT林(関学大)だ。早大のマンディフェンスをすり抜け、力ずくのショットで点差を再び2点とした。一進一退の攻防が続いたが、最後はAT横幕のフェイクを生かしたショットで勝負あり。最終スコア8-5で関学大を下し、『柏原組』は創部史上初の学生日本一に輝いた。

シュートを決め、ガッツポーズするAT星川 【早稲田スポーツ新聞会】

 六大学交流戦・立大戦での大敗から始まった今シーズン。5年ぶりの勝利を目指し挑んだ早慶戦でも大逆転負けを喫するなど、悔しい思いもたくさんした。その悔しさをバネに、全員が「学生日本一」という高い目標に向かって、「不屈」の精神のもと努力を重ねた結果が、最高の形で実を結んだ。こうして学生トップの座を手にした『柏原組』は、2025年1月に日本一のラクロスクラブチーム、Neoとの最終決戦に臨む。日本代表選手が8名所属する、正真正銘日本一のチームに対し、G柏原主将は、「学生だからこその強みや早稲田の強みを最大限発揮していきたい」と息巻いた。泣いても笑ってもこれが最後。学生日本一のその先へ、選手たちの最後の勇姿をともに見届けよう。

試合後インタビュー

鳴澤眞寿美GM兼HC

――初優勝を果たしました、今のお気持ちを教えてください
 これまでに感じたことのない喜びで満ち溢れています。「学生王者」というレベルの高い目標を追いかける日々は、夢のような時間でした。部史上初めて学生リーグの関東制覇や全国制覇をしてきたことは嬉しいことですが、それ以上に苦しい時期や困難に打ち勝ち乗り越えてきた経験を沢山積み重ねられたことこそ、最高に幸せなことだと感じています。
――早稲田を日本一に導くまでどのようなチーム作りをしてきましたか
 早稲田大学女子ラクロス部GM兼HCという役職であるので、2つの立場からチーム作りについてお話しできればと思います。GMとしては、「対内対外様々な関係者との連携」を大切にしてきました。大学の競技スポーツセンターやスポンサー企業、稲門会やOBOG、保護者や日本代表関連の方々など、弊部に関わりを持ってくださる方々のハブとなり、これまでになかった支援の形やコミュニケーションを生み出しました。そういった方々にとって、応援する価値の高いチーム作りに精を出しました。HCとしては、「目標への方向性やマインドセットをビジュアライズすること」に最も集中しました。私たちは今どこにいて、どこに向かっているのか。その過程で何が起こりそうなのか、私たちを取り巻く環境や相手はどのように変化してどのようなマインドセットで次の試合に臨むのか、などを言語化して情報整理を行い、目線合わせのMTGを毎回念入りに積み重ねてきました。また、「総合力で勝ちに行く」戦略で、各個人の強みを最大限に活かせるような選手選考やチームプレーの合わせを行ってきました。結果として、リーグ戦では未経験者の1〜4年生まで幅広い年次の沢山の選手が出場することになり、層の厚さが戦術に幅を持たせてくれました。これらがどれだけ評価されることなのかは実際にチームメンバーに聞いてみないと分からないことですが(笑)。
――この1年間の選手の戦いぶりを評価してください
 試合をするたびに強くなっていく、まさに今年のスローガンであった「不屈」をまさに体現したチームでした。粘り強く、決して諦めない姿勢を常に貫いていました。調子が良い時は慢心せず、調子が悪い時はその状況を的確にとらえて仲間で助け合いました。最も注力した点は、学生王者になることを見据えて長期戦を戦い抜くコンディショニングや時間の使い方にこだわりを持ったことです。怪我や病気を長引かせずピークをいつにするのかを個別具体的に対応したり、睡眠時間を確保するために22時以降の部連絡は原則禁止、日々の練習強度調整や真夏の練習を1、2時間に限定して短時間集中メニューを組んだりするなど、常にラクロスに対して良い状態を保てるようにネガティブ要素になりえる部分との向き合い方に創意工夫を凝らしました。また、試合を通して成長し続ける姿に指導者側の私たちも刺激を受けるほどで、相手分析や戦術提案の内容も毎試合レベルが上がり、プレーの安定感が高まり続けた気がします。それらを高い基準で学生がやり続けてくれた積み重ねがあったからこそ、学生王者になるまで早稲田がずっと全力で走り続けられたのだと感じます。
――今後の目標を教えてください
 直近では、2025年1月18日に行われる全日本選手権大会で「真の日本一」に本気で挑戦することが目標です。中長期的に見れば、「真の強豪校になること・真に強いチームであり続けること」が目標となります。今年の結果に自信は持っても満足することなく、一時的ではなく永続的に日本のトップレベルでラクロスを楽しみたいです。日本ラクロス界に変革をもたらすチームとなるべく、個人・組織の両面で成長し続けていきます!

G柏原陽菜乃主将(創理4=東京・大妻多摩)

――優勝した今の気持ちを教えてください
 正直未だ実感がないですが、学生王者という目標を達成するためにこの一年、死ぬ気で頑張ってきたので目標を達成することができて素直に嬉しいです。
――前半は苦しい展開が続きましたが、振り返っていかがですか
 始めは早稲田がやりたいことを体現するのに苦戦した部分もあったのですが、負けている状況でも決して諦めることはなく、勝つために全員が気持ちを強く持って、全力を出して戦えたのではないかと思います。
――最優秀選手賞に選出されました、改めて今日のご自身のプレーを振り返ってください
 セーブでチームを勝利に導くという目標があったので、少しはチームの勝利に貢献できたのではないかなと思っています。この賞を頂けたのもDFがセーブしやすいところまで守ってくれたり、練習中からATが沢山ショットを打ってくれたりするおかげなので、仲間に感謝しています。
――早大ラクロス部の歴史上最高の結果を残すことができたことに関していかがですか
 素直に嬉しいという気持ちがあります。この結果を残すことができたのはこれまで早稲田の土台を築き上げてきてくださった先輩方や、リーグ戦を通じてご支援、ご声援をくださったたくさんの方々のおかげなので感謝の気持ちでいっぱいです。
――来月の全日本選手権はどんなプレーを見せていきたいですか
 相手は社会人でとても強い相手にはなると思いますが、個人としてはセーブでチームを勝利に導きたいと思っているのでどんな相手に対しても強気のプレーをしていきたいです。チームとしては、学生だからこその強みや早稲田の強みを最大限発揮していきたいです。

MF田中美亜(スポ4=東京・国立)

――優勝した今の気持ちを教えてください
 ずっと目標にしてきた舞台だったので、みんなと勝つことができて最高に嬉しいです!!
――前半は苦しい展開が続きました、振り返っていかがですか
 早稲田の流れをつかみきれない時間もありましたが、その中でもドローが取れたり、シュートまでいけるシーン、ナイスDFやナイスセーブも多かったので、ビハインド状況でも早稲田がやりたいことをやり続ければ絶対大丈夫だって思ってプレーしてました!
――前半終了間際のドローブレイクからのショットが流れを変えたと思います、あのシーンを振り返ってください
 脇田選手がいい場所にドローをあげてくれて、取りきって前を向いた瞬間走るコースが見えて、練習でも上手くいっていた形だったので、最後絶対1点決めて終わる!と迷わず強気で攻めることができました!
――後半の攻防を振り返っていかがでしたか
 3、4Qはしっかり早稲田の流れをつかむことができて、早稲田の強みが発揮できていたと思います!攻め気を持ちながらもポゼッション時間を増やして点差も広げられ、理想的な後半の戦い方をできたのがすごく嬉しかったです!
――全日本選手権に向けて意気込みをお願いします
 最高の舞台で最高の相手と試合できることが本当に楽しみです!!柏原組最後の試合、早稲田らしく完全燃勝するので、応援の程よろしくお願いします!!

AT星川陽恵(スポ4=埼玉・浦和一女)

――優勝した今の気持ちを教えてください
 まだ実感がないのですが、今までやってきたことを全て出し切って優勝することができたので本当に嬉しいです。また、この柏原組で優勝することができたことが自分にとってはとても嬉しく、同期、下級生、コーチの方々、関わってくださったOGの方々など、全員でつかみ取った勝利だと思います。
――前半はなかなか得点にこぎ着けませんでしたが、ハーフタイムで話したことがあれば教えてください
 前半もこれまでやってきたことを発揮することはできていたのですが、最後ショットを決め切ることができていませんでした。そのため、やることは特に変えず、細かいところの修正やコミュニケーション、最後のショットの決めきりなどをもう一度意識高く持ち、挑もうという話をしました。
――後半は4連続得点で一気に流れをつかみました、振り返っていかがですか
 ハーフの前に田中がブレイクで決めてくれて、流れを引き寄せられたのが大きかったかなと思います。また、ハーフ間に、あまり上手くいってないにも関わらず一点差しかつけられてない、というコーチの言葉を受けて、少し余裕を持つことができ、後半の追い上げにつなげることができたと考えています。
――シュートシーンをそれぞれ振り返ってください
 1点目は、横からの1on1で、自分の得意な形に持ち込むことができたことで得点につなげられたと思います。2点目は、相手がボールを奪おうと上げてきたところをうまく狙うことができたと思います。相手の得点が入った後、相手に流れがいきそうなときに、しっかりと決め切ることができて良かったです。
――全日本選手権に向けて意気込みをお願いします
 相手は、日本代表にも選ばれているような、日本のラクロス界を引っ張っている方々です。ですが、自分たちのラクロスを最大限発揮することができれば通用する部分もあると思います。私にとっては最後の試合になります。最後の最後の瞬間まで楽しんで、自分の持っていること全てを出し切りたいと思います。

AT横幕円香(文構4=神奈川・公文国際学園)

――優勝した今の気持ちを教えてください
 素直に嬉しいです!
――前半は点がなかなか決まりませんでしたが、どのように相手ディフェンスを突破しようとしていきましたか
 相手DFの疲れが見えてくる後半が勝負だと思っていたので、粘り強く攻めていこうという話をしていました。後半はオフェンス時間を有効に使い、ファールを取ったりショットまでつなげたり、理想の形を作れたと思います。
――3得点挙げられましたがご自身のプレーを振り返っていかがですか
 ここ2試合チームに貢献できていなかったので、得点を挙げられてまずはホッとしています。DFが奪ってくれたボールを確実にショットまで持っていけたので、早稲田の流れを持ってくるという意味でも決められてよかったです!
――全日本選手権に向けて意気込みをお願いします
 相手は社会人ですが、学生らしく勢いとフレッシュさで走り勝ちます!
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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