【SPECIAL】日本で過ごした4年は人生最良の時間だった~アルベルト・ザッケローニ氏 殿堂入り記念インタビュー#1
【©JFA】
――日本サッカー殿堂に選ばれての率直な感想をお聞かせください。
ザッケローニ まずは驚きました。映画やテレビなどで殿堂入りとよく聞きますが、実際にどんなものかを知っていたわけではありません。インターネットで調べてみたら、イタリアサッカー連盟(FIGC)にもあり、私の仕事仲間であるマルチェロ・リッピやファビオ・カペッロなども入っていることを知りました。今回の知らせが届くまで、そういうことも全く知らずにいたのです。
――JFAからの知らせは「青天のへきれき」だったのですね。
ザッケローニ 正式にアナウンスするまでは内密にということだったので、誰とも喜びを共有できずにいました。それから数日が経ち、JFAから情報が公開され、非常に誇らしくなりました。私は日本と心がつながっています。日本の人たちの他者を尊重しながら社会をうまく機能させているところがすごく好きなんですね。日本人とイタリア人はすごく似ていて、私自身は好物がお寿司というくらい日本人寄りの方なんですが(笑)。日本での4年間は私の人生の中で最良の時間だったと思っています。
2011年の東日本大震災のとき、ザッケローニ氏はサッカーを通して日本に寄り添った 【©JFA】
ザッケローニ 功罪両面あったと思いますが、良かった点は選手とスタッフを含め、チームの全員が自分のことよりチームの勝利を最優先に考えてくれていたことでした。これは日本以外ではなかなか見られない現象です。何事もバランスが大事なので、選手の中にある個人的な思いとチームの勝利のバランスが取れるポイントを、監督の大事な仕事の一つとして常に探していたと思います。
――4年間の滞在中、あるいは監督生活の中で忘れがたいエピソードはありますか。
ザッケローニ 印象に残ったこととは少し違うかもしれませんが、私が好きだったのは何気ない日常のひとこまでした。例えば、みんながお辞儀をして「こんにちは」とあいさつをしてくれる。1日がそういう形で始まる生活がとても心地良かったのです。
監督の仕事で言えば、自分がやりたいことを実現させるには三つの事柄が重要だという言い方を私はしています。一つ目はコンストラクション、次にコンストラクション、そして最後もコンストラクション。コンストラクションとは「つくる」「建てる」という意味ですね。築いたものは絶対に崩さない。毎日少しずつでもいいから積み上げてチームを構築していく。そういう信念を持って指導者の仕事をしてきました。
ザッケローニ氏の初陣は2010年のアルゼンチン戦。岡崎慎司の得点で勝利を飾った 【©JFA】
ザッケローニ 観察し、理解することです。この選手は今、どんな問題を抱えているのか。改善を促すために技術面からも心理面からもアプローチしていかなければならない。私の古巣には、その観察を怠り、適材適所をタイムリーにできていないチームが今もあります。単純に才能の開花や自覚、成長を促すためだけに10番やキャプテンマークを与えてはいけないのです。
キャプテンを託すならハセベ(長谷部誠)のように他の選手たちが一目置く人間にしなければなりません。ハセベがパッと他の選手の目を見たときに、その選手はハセベが言いたいことをすぐに分かる。そのような人間がキャプテンであるべきなのです。
――今、SAMURAI BLUEを率いる森保一監督は、「最高の景色を見にいく」、つまりFIFAワールドカップ優勝をターゲットに掲げています。これは10年前、ブラジル大会に臨むとき、ザッケローニさんが考えていたことと同じですね。
ザッケローニ 私もそう思っていました。このメンバーなら本気でカップを狙えると。
多くのタレントとともに2014年のワールドカップに臨んだが、勝利を挙げられなかった 【©JFA】
ザッケローニ サッカーの質は間違いなくありました。準備も万端でした。しかし実際にプレーする「足」と「頭」のバランスが、本大会が始まると、うまく取れなくなった。私は試合を見ながら「もっといける」と思っていたのですが、選手たちは必ずしも全員がそうは思っていなかったようでした。そう考える習慣がなかったのかもしれません。
最初のコートジボワール戦の出だしは良かったんですね。ケイスケ(本田圭佑)が最初に得点を決めて。でも、そこでもうプレーをやめてしまった感じがありました。その後に2ゴールを奪われて逆転負けしたのは、全員で同じ目標を頭の中に私が設定させられなかったことが原因だと思っています。
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日本サッカー殿堂掲額式典に出席したザッケローニ氏。懐かしい人たちとの再会を喜んだ 【©JFA】
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