早大野球部 【特集】ドラフト直前!プロ志望届提出選手特集 第2回 山縣秀&中村敢晴

チーム・協会
【早稲田スポーツ新聞会】記事 林田怜空
2024年のプロ野球ドラフト会議が、目前に迫っている。早スポでは、早大野球部からプロ志望届を提出した全5選手について徹底分析。第2回では、早大が誇る守備職人、山縣秀(商4=東京・早大学院)と、中村敢晴(スポ4=福岡・筑陽学園)をピックアップ。二遊間のレギュラーの座を争い続けた2人の4年間を振り返る。

※両選手の4年秋のデータは立大3回戦までを対象
用語解説

OPS:出塁率と長打率を足したもの。打率よりも得点との相関が強い。六大学における平均は.678
ISO:打者の純粋な長打力を表す。長打率は単打を計算に含めるため、全打席単打を放つ選手の長打率は10割となるが、この選手は真に長打力がある選手ではない。そこで、ISOは長打率から単打を除外する形で計算し、真に長打力がある選手を示そうとした。六大学における平均は.102
Contact%:スイングに占めるボールをコンタクトした割合を示す。NPBやMLBにおける平均は75~80%。
BB%:投手の場合は、与四死球割合。打者の場合は、打席に占める四死球の割合を示す。六大学における平均は10.9%
K%:投手の場合は、奪三振割合。打席に占める三振の割合を示す。六大学における平均は17.5%

山縣秀(商4=東京・早大学院)

 山縣は、「大学進学後に早大野球部に入部することは考えてもいなかった」と語る。しかし、早大学院時代、自らが副将として支えた薗部将大(教4=東京・早大学院)から熱心な勧誘を受け、2021年に早大野球部に入部。山縣のシンデレラストーリーはそこから始まった。フレッシュトーナメント等で徐々に頭角を現した山縣は、2年時の2022年東京六大学野球春季リーグ戦(春季リーグ戦)で守備固めとして初出場を果たすと、同年秋季リーグ戦で遊撃手として全試合にフル出場。打率.294、OPS.793という抜群の成績でブレークを果たした。3年時は熊田任洋(令6スポ卒=現トヨタ自動車)が志願して遊撃にポジションを移した影響で、二塁手としてほぼ全試合に出場。慣れないポジションでの出場が続いたことで攻守両面で苦しみながらもシーズンを完走し、早大内野陣の要としての地位を確立した。

その守備力はアマチュアNO.1だ 【早稲田スポーツ新聞会】

 迎えたラストイヤー。遊撃に戻った山縣は、水を得た魚のごとく躍動する。春季リーグ戦では、打率.366でリーグ4位にランクインすると、出塁率、長打率、OPS全ての項目でリーグ10傑にランクイン。ベストナインを獲得し、一気にドラフト戦線へと名乗りを上げた。その勢いはとどまることを知らず、大学日本代表にも選出。今季は打撃面で苦しんだものの、立大3回戦では決勝打となる適時二塁打を放ち、明大3回戦でも先制打を放つなど上り調子だ。プロ野球など夢のまた夢だった高校球児は、4年の時を経て、プロへの扉を開こうとしている。
 山縣の最大の長所は、やはりその守備力だろう。大学日本代表では、宗山塁(明大4年)、浦田俊輔(九産大4年)らが不在だったとはいえ、守備力を武器に正遊撃手の座を奪取。ホセ・イグレシアス(現MLBメッツ)や、鳥谷敬(平16人卒=元阪神タイガースなど)ら守備の名手を理想の選手として掲げる山縣。そのアクロバティックかつ独創的な守備は、すでに彼らを彷彿(ほうふつ)とさせる。ここまでリーグ通算で57試合に出場し、失策は僅かに4。たびたびその守備力が比較される宗山が、83試合出場10失策であることを考えると、正確性においては、山縣は宗山をも上回ると見ても良いかもしれない。過去六大学からドラフト会議で指名された選手と比較しても、その正確性は傑出している。今秋リーグ戦でも毎試合のように驚異的な守備範囲を示しており、守備についてはプロでもGG賞を十分に狙える選手となるだろう。

打撃面も徐々に改善させてきた山縣 【早稲田スポーツ新聞会】

 半面、打撃力については、過去の指名選手選手と比較すると、やや劣っていると評価せざるを得ない。特に、ISOについては通算で六大学平均を下回る.066と、非力さは否めない。積極的に仕掛けるスタイルも相まってBB%もやや低く、アプローチ面も明確な長所とはなっていない。しかし、山縣の打撃はチーム打撃に徹していることが多く、本人が自由に打席に入っている場面は少ない。プロに入り、どの程度山縣の打撃が通用するかは測りかねる側面もあるかもしれない。また、4年に入ると、山縣は打撃面でも徐々に改善傾向を見せてきた。課題とされてきたISO1は、今年の春季リーグ戦では.122と平均以上の数字を記録し、今秋はBB%も17.3%と、平均以上の数字を記録している。まだまだ長打力、アプローチ両面で伸びしろを残していると言えるだろう。

 また、打撃面においても、チーム打撃に徹する姿勢は、山縣の長所となるかもしれない。2番打者として全試合に出場している今季は、Contact%93.5%を記録。尾瀬や石郷岡らを抑え、チーム1位の数字を記録している。コンタクト能力の高さは、K%の低さにも表れている。通算のK%9.6%は、リーグ平均を多く下回る数字。積極的に仕掛けながらも粘り強くボールに食らいつくスタイルは、いやらしさ満点だ。犠打やバスターを確実に決める場面も多く、そのタスク遂行能力は明確な長所となるだろう。

プロへの扉を開くことが出来るか 【早稲田スポーツ新聞会】

 早大入学以降、大きく飛躍を遂げた山縣。その守備力を武器にプロ入りを果たすことが出来るか、注目が集まる。山縣の物語は始まったばかりだ。

中村敢晴(スポ4=福岡・筑陽学園)

 父は元早大主将であり、3年時に打率.475で首位打者を獲得した中村壽博、兄は元ソフトバンクの中村宜聖という野球一家に生まれた中村敢。自身も筑陽学園2年時に甲子園出場を果たす活躍を見せ、2021年にアスリート選抜で早大に進学。ここまでは順風満帆な野球人生を送っていた中村敢であったが、早大進学後は苦しい時を過ごすことになった。

 入学当初、本職とする遊撃手には、熊田がレギュラーとして君臨。2年秋には同学年の山縣が台頭し、二遊間は山縣、熊田で固定された。中村敢は、2人の壁に阻まれ出場機会を掴むことが出来ずに雌伏の時を過ごす。初出場を果たしたのは3年春季リーグ戦のことだった。大型内野手としてポテンシャルの高さを見せてはいるものの、なかなか殻を破り切れないシーズンが続いていた中村敢。それでも、今春のオープン戦では毎試合のように複数安打を放ち、春季リーグ戦では開幕スタメンを掴むなどチーム内でも立場を築きかけた。しかし、神宮で結果を残すことは出来ず。打率.200と不調にあえぎ、梅村大和(教4=東京・早実)にその座を明け渡してしまう。今季もスタメン出場は僅か1試合。ここまでのリーグ戦で活躍を見せることは出来ていない。

潜在能力はチーム屈指。中村敢がプロに殴り込みをかける 【早稲田スポーツ新聞会】

 体のサイズやしなやかさからもわかるように、その潜在能力は一級品。好調時に見せるバットコントロールは、見事の一言だ。ドラフト当日、未完の大器に吉報は届くか注目が集まる。
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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