「最高です」山下美夢有今季初Vで3年連続女王へ照準
【Photo:Atsushi Tomura/Getty Images】
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《グリーン=スティンプ:12フィート コンパクション:21mm》
「最高です。やっぱり優勝は違うな、と思いながら、歓声を浴びさせていただきました」。
18番のグリーン上で行われた、表彰セレモニー中のインタビュー。声を上ずらせた山下の頬を、幾筋もの涙が伝った。昨季5勝を挙げた2年連続年間女王にとって、今季初勝利への道のりはあまりに長かった。
プレーオフで一騎打ちとなった古江彩佳とは、共通点が多い。年齢は山下の方が1歳下の23歳だが、ほぼ同年代で、出身も関西同士。幼少の頃一緒にゴルフを始めた父親が、今もかけがえのないコーチ役を務めている。磨き抜いた技術と圧倒的な安定感で、世界に通用するトッププロとしてプレーしている。
宿命の対決とも言えるプレーオフは、舞台となった18番パー4で、グリーン手前に口を開けた深いバンカーが勝負を分けた。1ホール目の第2打で、そこへ先に打ち込んだのは山下だった。バンカーショットが絶壁を上り切れず、足元まで戻ってきてしまった選手が何人もいた「蟻地獄」から、山下は鮮やかに脱出し、ピンまで4メートルに寄せる。パーパットこそ惜しくもカップの右を通過したが、ボギーに収め、グリーン右のラフからのアプローチを寄せきれなかった古江とタイで終えた。
こうして迎えた2ホール目。今度は古江の第2打が、このバンカーに捕まり、しかも絶壁の際にボールが止まったことから、第3打はピンへ向かって打つことができず、横へ出すしかなかった。約18メートルのパーパットが惜しくもピンに弾かれた古江に対し、山下は第2打をピン横6メートルに載せ、2パットで勝利をもぎ取った。
【Photo:Atsushi Tomura/Getty Images】
最終18番では、約13メートルの長いパーパットをねじ込んだ。「入れるしかない、と思って打ちましたが、実際にはなかなか入らない距離なので、ラッキーでした」と笑うが、結果的に、このパッティングが入っていなければプレーオフに進むこともできなかったことになる。
優勝がなかったとはいえ、2位は今季実に7度。海外でも、6月の全米女子プロゴルフ選手権で2位。日本代表として出場したパリ五輪も、メダルまであと一歩の4位だった。「思い通りのショットが打てない」ともどかしい思いを抱き続けている。はた目には決して悪くないショットにも、「当たった時の音がいまひとつ」などと首をかしげる。優勝したこの日さえ、「ショットは思うように打てませんでした。パッティングに助けられました」と満足していない。最初に年間女王の座に就いた一昨年のスイングのイメージを、追い続けている。
悩みながらも、日々のルーティンは丁寧にこなしている。この日もスタート前には、ドライビングレンジで弾道計測器で様々な数値を測り、父・勝臣さんのアドバイスを受けながら打ち込む姿があった。勝臣さんは「特に重視している数値は、キャリーとスピン量です。スピン量は、多くても少なくてもいけない。クラブごとに、美夢有にとって最適の数値に調整するようにしています」と説明する。
今季メルセデス・ランキングでは、まだ1勝にも関わらず、7勝を挙げている竹田麗央に541.40ポイント差の2位につけた。「竹田さんは本当に素晴らしい選手です。プレースタイルは違いますが、これからも私らしいプレーをして、少しでも上位で戦えるように、精一杯やっていきたいです」と決意を新たにした。残り6試合。3年連続女王を諦めはしない。(宮脇 広久)
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