早大ラグビー部 【連載】対抗戦開幕対談 第4回 佐藤健次×安恒直人×清水健伸
最終回に登場するのは佐藤健次主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)、安恒直人(スポ4=福岡)、清水健伸(スポ2=東京・国学院久我山)の3名だ。彼らが競うのは、チーム内でも特にメンバー争いが激しいポジションの一つであるHO。大学ラグビー界でも屈指の実力を持つ3人が、赤黒の2番を目指し、ライバルとして日々奮闘している。主将として早大の日本一奪還を背負う佐藤。4年生として最後のシーズンに挑む安恒。そして世代別代表にも選ばれ期待を背に成長を続ける清水。メインシーズンを迎える彼らのそれぞれの想いに迫った。
※取材は9月6日に行われたものです。
笑顔でお互いの印象を語る清水 【早稲田スポーツ新聞会】
佐藤 安恒君です。福岡高校から早稲田にきて、高校ではスタンドオフをやっていました。かなりスキルフルな選手だったみたいで、キックもパスもめっちゃ上手いっていう今では想像できないような選手だったらしいです。あとは「ぼんちゃん」って呼ばれてます。
安恒 清水健伸君です。国学院久我山高校から来たすごい選手で、彼は良い意味で後輩らしくなくて、フラットに接してくるような独特な世界観を持った人です。今腕についてるブレスレットみたいに、自分の世界を持ってる人間だなって思います(笑)。
清水 佐藤健次選手です。桐蔭学園からきました。小学校の時は高崎(ラグビークラブ)、横浜(ラグビースクール)に行って太陽生命カップで活躍されてました。
佐藤 すごいな(笑)。
清水 ポジションは中学時代はWTBとして活躍されていましたが、高校ではNO・8、大学では2年生ぐらいからHOに転向しました。身体が強くて、ウエイトも(部内で)ほぼ全てで一番、フィットネスも速い。世代別代表ももちろん選ばれていて、この前はフル代表にも選ばれていました。日本の宝といっても過言ではない選手だと思います。
佐藤 なんか安恒が一番しょうもないね(笑)。俺はちゃんと言ったよ。
ーー安恒選手何か付け足しますか
佐藤 確かに、付け足したほうがいいんじゃない?
清水 俺の出身小学校は?
安恒 知るかよ(笑)。あ、でも柔道してて。得意技何だっけ、背負い投げ?
清水 あほか、したことないわ(笑)。
ーー3人で共通した思い出は何かありますか
清水 この間の帝京A戦じゃない?
佐藤 確かに。初めて3人で同じ試合に出場しました。
ーーそれぞれから見る、それぞれのプレー面での強みとは何だと思いますか
佐藤 二人とも圧倒的にディフェンスが良いです。僕は全然ディフェンスダメなんで。あとは、僕は結構気分でプレーしているんですけど、二人は正統派HOみたいな感じでディフェンスもアタックもしっかりこなすって感じですかね。
安恒 僕はこの二人は圧倒的に運動量がすごいと思ってます。フィットネスも他のHOに比べてすごくて、どんなきつい時でもFWの中で一番走ってます。後はセットプレーの引き出しが多くて、二人ともいろんな舞台を経験してきたという違いがあるのかなと思います。
清水 僕からみたら二人とも華があるプレイヤーだと思います。安恒さんはスタンドオフなので。
一同 (笑)。
清水 元BKというのを感じさせるようなランが魅力的です。健次さんもパワフルなランニングだったりコンタクトスピードなど僕が絶対持っていないような尊敬できるところがたくさんあります。
ーー二人には負けない自分の強みは何だと思いますか
佐藤 僕はアタックです。
安恒 粘り腰。
一同 (笑)。
清水 僕はスクラムの引き出しです。一番HOの歴が長いんで。
ーーHOへの思い入れはありますか
安恒 ラグビー部に入って、まさかフロントローでHOやってるとは思ってなかったです。思い入れって言われると難しいですね。
佐藤 僕も思い入れはないですね(笑)。
ーーこだわっているポイントはありますか
佐藤 僕と安恒はまだHO始めてから2年半なんで、ミスっても良いかなって思ってます。
安恒 セットプレーはまだまだなので、フィールドで頑張ろうと思ってます。
清水 僕は高校の時にPRからHOに転向して、OBの青木さんから非常に色々なことを教えてもらって、自分が活躍することでその恩返しをしたいと思ってプレーしています。
ーー4年生のお二人は大学でコンバートを経験していますが、他ポジションとHOの大きな違いはなんだと思いますか
佐藤 前まではセットプレーが休みだったんですけど、きつくなりました。
安恒 セットプレーに対する責任感は強いです。FWのなかでも一番役割が重いので、セットプレーに対する姿勢は大きく変わりました。
最後の春シーズンを振り返る安恒 【早稲田スポーツ新聞会】
佐藤 一番自分が頑張らなければならないと思っていたので、チームを勝たせたいという思いで戦ってました。
安恒 自分はこれまでリーダー経験が無くて、これまでは自分のことを好きなようにやってきたんですけど、健次が代表行ってる間とかはFWの雰囲気があまり良くない時もあって、「リーダーとして」って隆道さんにもよく言われて、慣れないことも多くて難しいシーズンだったなと思います。
ーー清水選手は2度目の春シーズンということで、ルーキーイヤーから違いはありましたか
清水 去年の春シーズンは下のカテゴリーに居て、良くてもBだったんですけど、今年は昨シーズンの終盤から結構上のカテゴリーで試合を出させてもらうことが多くて、経験を積めました。最後の帝京戦では思うようなパフォーマンスを発揮できず、チームの足を引っ張ってしまったので、二人の偉大さを感じたシーズンでした。
ーー春シーズンの結果を振り返っていかがですか
佐藤 チーム全体としては良いシーズンを送れたんじゃないかなと思います。
安恒 ほとんどの試合に勝つことはできたんですけど、王者と言われる帝京にあのような負け方をしてしまったというのは難しさを感じます。
ーーBチームの全勝という結果はチーム全体にどんな影響がありましたか
佐藤 負けられないなと思いました。大学対抗でみたら、いくらB、C、Dが勝ってもAチームが負けたら「早稲田が負けた」と言われるので、負けちゃいけないというプレッシャーは感じていました。良いプレッシャーを感じていました。
安恒 同じです。ただ、Bチームで出る時には、チームを勢いづけることも大事だけど、何よりも上のチームを目指すことが大事だってよく話してました。
清水 安恒さんと一緒です。下のチームで出るときは上のカテゴリーを目指すし、下のチームの同期が頑張ってると俺も頑張らなきゃなって思いがこみあげてきて原動力になります。
ーー春シーズンはディフェンス、スクラムに注力していたと伺いましたが、どのように成長できましたか
清水 スクラムの部分では、U20日本代表での活動などでいろんなチームやリーグワンの選手ともスクラムを組ませていただいたことで、どうやってPRを活かすのかといったスクラムの引き出しの部分で成長したかなと思います。
安恒 スクラムはまとまりやヒットなど、大前提のところを今年は意識していて、初めは上手くいかないこともあったんですけど、シーズンが深まるにつれていい感触を持てたかなと思います。ディフェンスは去年は止めるという意識だったんですけど今年は奪い返すというイメージで、一人一人がファイトする意識を持って、新しい文化、プライドができたかなと思います。
佐藤 スクラムは全チーム良い感覚で組めていて、良い文化として出来上がってきてるのではないかと思います。ディフェンスは22メートル内に入られたときの粘り、簡単にスコアされなくなったなという印象があります。
ーー春シーズンで印象深い試合を教えてください
安恒 自分は高麗大学との定期戦が心に残ってます。特にスクラムなんですけど、レフェリーが初めて海外の人で、こんなにコミュニケーションが取りづらいんだなということが印象に残ってます。
清水 僕は春の帝京戦です。健次さんも居なくて、初めてスタメンで出た試合でした。FWをコントロールするのは大変だし、チームにコミットしきれずに形を崩してしまったという反省が強い試合だったと思います。
佐藤 僕も帝京戦ですかね。絶対に勝てると思って観ていたので、前半のスクラムもめっちゃいい感じで勝てるなと思っていたんですけど、チームが上手く噛みあっていなくて崩れてしまったんですけど、地力の強さは上がってきたなと思いました。
ーー佐藤主将は日本代表に選出され、試合にも出場しましたが、代表活動における収穫や課題を教えてください
佐藤 スクラムは自信を持つことができたんですが、ラインアウトの高さが日本と早稲田では全然違うので、そこのアジャストが大変だなと思いました。
ーー清水選手はU20日本代表に選出され、実感した成長や課題点を教えてください
清水 成長できたポイントは、健次さんと一緒に行ったサモア遠征です。自分としては初めてのインターナショナルの公式戦で、大きなプレッシャーを感じて思ったようなプレーができなかったんですが、後半に健次さんが出て、冷静さとか大きな違いを見せてもらったので、そこでターニングポイントだったかなと思います。
ーー安恒選手にお聞きします。代表活動で佐藤主将が不在の時間も長かったと思いますが、練習の雰囲気など難しさはありましたか
安恒 緊張感が欠けてしまう場面などがあって、健次に甘えてる部分があったなと4年生のFWみんなで自覚しました。そこからは自分たちで意識を変える、アクションすることを心がけていけたかなと思います。
夏の振り返りと秋への意気込みを語る佐藤 【早稲田スポーツ新聞会】
清水 自然が多かったなと思います。2年目でしたけど、やっぱり自然が多すぎて苦労しました。
佐藤 全体的には楽しかったです。もちろん練習はきつかったんですけど、楽しかったです。
安恒 確かに楽しかったな。長いリハビリから復帰した選手とかも夏合宿で試合に出れたので、そういった選手のプレーを観れて楽しかったです。
ーー夏合宿では帝京大に勝利しましたが、その要因と春シーズンとの違いは何だと思いますか
佐藤 夏は縮こまることなく普通にプレーできたことが良かったのかなと思います。いつも帝京と試合するときは、みんなびびっていつも通りのプレーができなくなってしまうので、「いつも通り」できたら勝てたので、良かったなと思います。早稲田が120%の力を出して勝ったわけではなく、普通にやって勝てたってことが良かったです。
安恒 本当に同じです。春に負けてからやってきたことをそのままやり切れた結果だと思います。帝京だから死ぬほど燃えていつも以上の力を出したというよりかは、自分たちがやってきたことを信じた結果が表れたのかなと思います。
清水 同じです。
ーー一方で天理大に負けてしまった要因は何だと思いますか
佐藤 帝京に勝って気が緩んじゃったのかなと思います。
安恒 僕も試合に出れてなくて外から観ていたんですけど、少しの気のゆるみと外国人選手との一対一で乗られてしまう部分があったのかなと思います。
清水 帝京との試合に比べて、相手からボールを奪うという熱意や覇気、細部にこだわるといった部分が徹底できていなかったと感じます。
ーー昨年は京産大に敗北を喫し、今回の天理大も強力な外国人プレーヤーを擁するチームでしたが、そのようなチームにどのように戦っていくかというプランなどはありますか
佐藤 何もしないです。何も意識しないことですかね。今年はディフェンスにこだわっていて、各々のインディビジュアルのタックル練習もたくさんやってます。相手チームの一番大きい選手と、早稲田で一番小さい田中(勇成、教3=東京・早実)が一対一しても田中が勝つと思うので、そんなに崩されることはないのかなと思います。もし崩されたとしても、試合中に修正すればどうにでもなるのかなと思います。
ーーこの3人の中で誰がHOとして組んだ時に一番スクラムが強くなりますか
佐藤 相手によりますね。
安恒 タイプが違うよな。
ーースクラムでのタイプの違いについて詳しく教えてください
清水 健次さんは「馬力」って感じです。強いなって感じです。安恒さんは「詰まってる」って感じですかね。
佐藤 わかる、詰まってるわ。
安恒 二人に比べて身長が低いんで、その影響もあるかもしれないですね。
佐藤 健伸は「上手い」です。この3人だったら誰が出ても押せるんじゃないかなと思います。
ーー夏合宿で個人的に成長した点を教えてください
佐藤 規則正しい生活のルーティーン化ができたことですかね。朝早かったので。
安恒 ラインアウトのスローイングが良くなったかなと思います。いつもより時間があって、たくさん練習できたので少しは良くなったのかなと思います。
清水 睡眠の向上ですかね。結構良く寝れました。去年は1年生は練習の準備をしなければいけなくて、朝練前の5時前に起きなければならないんですけど、同部屋の先輩を起こさないようにアラームも鳴らせないので、ドキドキして目が覚めるとまだ4時、みたいなこともありました。今年はそれがなかったので良く寝れました。
ーー夏合宿での楽しかったエピソードなどはありますか
佐藤 エピソードってわけではないんですけど、いろんな人の試合をフルで観れて、試合観戦が楽しかったです。
安恒 部屋の二段ベッドで上が僕で下が文介(栗田文介、スポ3=愛知・千種)だったんですけど、暑くて寝れない時に上から文介にいたずらするのが楽しかったです。
清水 みんなと生活できたのが楽しかったです。寮より人が多かったので、いつもより楽しかったです。
ーー対抗戦で注目してほしい自身のプレーを教えてください
安恒 簡単に倒れない、というところです。アタックでも、ディフェンスでも少しでも前に出て、ゲインライン切れるように頑張ります。
清水 僕はディフェンスのワークレートですかね。外国人選手に苦手意識あると思われてると思うんですけど、自分から積極的にバチバチぶつかりにいってターンオーバーするぐらいのインパクトあるタックルを見せたいです。
佐藤 僕は全部です!
ーーチームとして見てほしいところはありますか
佐藤 ディフェンスとセットプレーの後のみんなの喜びを見てほしいです。モールでトライを取った後の喜びを見てください。
ーー対抗戦への意気込みとファンへのメッセージをお願いします
清水 全チームに『Beat Up』して、ボコボコにします。さらに「漢」を磨いて女性ファンを獲得できるように頑張ります。
佐藤 最後の対抗戦なので相手を全部0で抑えて、ボコボコにしたいです。まずは対抗戦を優勝して、そのままの勢いで『荒ぶる』まで成長していければ良いなと思います。早稲田のファンの方々は非常に多くて、色々な方々に見に来てもらえるので、今年はたくさんの「佐藤健次」って書かれた手作りグッズに応援されたいです。みんな作ってください!
安恒 ラストイヤー、誰よりもこだわって、自分たちが決めた『BEAT UP』を体現できるように相手をボコボコにします。今年の早稲田は特にFWが違うので、セットプレーで相手を倒して、自分は誰よりもいい笑顔で喜ぶのでぜひ見てください。
ーーありがとうございました!
【早稲田スポーツ新聞会】
2003(平15)1月4日生まれ。177センチ。107キロ。桐蔭学園高校出身。スポーツ科学部4年。1年時から早大FWの屋台骨を担ってきた佐藤主将。今年はついに日本代表として招集。マオリ・オールブラックス戦では代表初トライも挙げ、世代を代表するスタープレイヤーです。
◆安恒直人(やすつね・なおと)
2003(平15)年2月5日生まれ。172センチ。97キロ。福岡高校出身。スポーツ科学部4年。タックルされても倒れない力強いプレーが魅力的な安恒選手ですが、高校時代のポジションはスタンドオフ。パス、キック、多彩なアタックで相手を翻弄するスキルフルな選手だったようです。
◆清水健伸(しみず・けんしん)
2004年(平16)年12月27日生まれ。178センチ。102キロ。国学院久我山高校出身。春シーズンはU20日本代表にも選出され、国際大会を経験。経験豊富なHOで、スクラムの上手さでは主将からお墨付きをもらうほど。独特な世界観を持っており、「漢」磨きを欠かさない期待の2年生です。
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