攻守のデータに見る、熾烈なパ・リーグ最多勝争いの展望
【写真:球団提供】
2024年は、4年ぶりに新たな最多勝投手が誕生するシーズンとなる
今回は、今季のパ・リーグで最多勝の座を争っている投手たちの顔ぶれと、その活躍ぶりについて紹介。それに加えて、各投手が所属する球団の得点力と守備力に関する数字を確認することによって、今後の最多勝争いの行方を展望していきたい。(記録は9月8日の試合終了時点)
有原投手以外の6名にとっては、自身初の最多勝の座をかけた争いでもある
2024年最多勝争いを繰り広げる投手の成績 【ⓒPLM】
(*10日に12勝を挙げた)
リーグ上位に位置する2チームが、得点力の面でも優位に立っている
2024年パーソル パ・リーグ球団別打撃成績 【ⓒPLM】
北海道日本ハムは福岡ソフトバンクに次ぐリーグ2位の479得点を記録し、本塁打数も同じくリーグ2位の93本に達している。打率こそリーグ3位ながら得点力は一定以上の水準にあり、福岡ソフトバンクと同じく、投手陣を十分に援護できる状況にあると言えそうだ。
千葉ロッテはチーム打率こそリーグ2位の.250ながら、得点数はリーグ3位の434得点と、同2位の北海道日本ハムとは45点の開きがある。本塁打数もリーグ4位の63得点と長打力に課題を残しており、得点力という面では上位2チームとはやや差がある状況となっている。
東北楽天はリーグ4位の422得点、リーグ3位の65本塁打と、得点力に関しては千葉ロッテに近い数字を残している。打率もリーグ4位の.243と上位3チームとはやや差があり、今後はエースの早川選手の登板試合において、打線が援護を果たせるかが重要になりそうだ。
得点力に長けた2球団は、守備の面でも投手を大いにバックアップしている
ただし、被BABIPは打球をアウトにした割合を直接的に示すという特性上、チーム全体の守備力を図る際には非常に有用な指標となる。すなわち、チーム全体の被BABIPの数字が低い場合、そのチームは全体的な守備力に長けているということだ。
この項目では、パ・リーグ各球団におけるチーム全体の被BABIPに加えて、守備機会を失策なく終えた割合を示す「守備率」という2つの数値について、それぞれ確認していきたい。
2024年パーソル パ・リーグ球団別守備成績 【ⓒPLM】
北海道日本ハムは守備率こそ.986とやや低いものの、被BABIPに関してはリーグ2位の.264と、優れた値を記録している。得点力、守備力の双方がリーグ2位に位置しているという事実からも、今季の北海道日本ハムが躍進を果たしている理由と、3名の先発投手が最多勝争いを繰り広げている理由の一端がうかがえよう。
千葉ロッテも守備率は北海道日本ハムと同じ.986ながら、被BABIPは.277とリーグ3位の数字を残している。上位2チームにこそ及ばないものの、守備力という観点においては一定以上の水準にあり、着実に投手を助けていることが見て取れる結果となっている。
東北楽天は守備率に関してはリーグ2位の.988と、失策の少ない堅実な守備を見せていることがわかる。その一方で、被BABIPはリーグ唯一の3割超えとなる.304と、総合的な守備力という観点においては、やや課題が残る数字となっている点は気になるところだ。
多くの開幕投手が結果を残す今シーズン、最後にタイトルを手にするのは?
また、北海道日本ハムも得点数・被BABIPがともにリーグ2位と、先発投手にとってはプラスとなる環境だ。伊藤投手、加藤貴投手、山崎福也投手がそれぞれ自身初のタイトルを手にできるかは、今後もチーム全体で優秀なバックアップ体制を維持できるかにかかってくる。
千葉ロッテはリーグ3位の被BABIPと守備力に関しては一定以上の水準ながら、得点力の面で少なからず課題を抱えている。東北楽天も得点数がリーグ4位、被BABIPが最下位とやや苦しい状況であり、小島投手と早川投手は多少不利な状況にあると言えるか。両投手にはリードした試合を着実に勝ちにつなげる、まさにエースらしい投球が求められてきそうだ。
また、最多勝争いを繰り広げている投手のうち、有原投手、伊藤投手、早川投手、小島投手の4名は、今季の開幕投手を務めていた。主戦投手としての働きが期待された投手が多くの白星を積み上げている点も、今季の最多勝争いの大きな特徴といえよう。
期待通り、あるいは期待以上の投球を見せている先発投手が繰り広げる熾烈な争いを制して、最多勝の栄誉を手にするのは果たしてどの投手か。先発投手としての最大の勲章の一つを巡るハーラーダービーの行方に、今後もぜひ注目してみてはいかがだろうか。
文・望月遼太
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