【UFC】UFC月間レポート:2024年8月

UFC
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【Jeff Bottari/Zuffa LLC】

2024年8月にはUFC APEXとアメリカ国外を交互で舞台とした4つのイベントが行われた。

それぞれのイベントで、ファンやオブザーバーの話題となるような来事が豊富に起こり、複数の階級に即座に影響するような試合結果もあった。2024年のラスト4カ月を迎えるにあたり、議論するべきことも、これから注目すべきことも満載だ。

8月の傑出したパフォーマンスを、下記のレポートでご紹介。

ブレイクアウト・パフォーマンス:マイケル・モラレス

エクアドル出身の25歳、マイケル・モラレスはデイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ・シーズン5でニコライ・ヴェレテンニコフにユナニマス判定で勝利し、UFCへの切符を手にした。今月の最終試合として組まれたニール・マグニーとの対戦を迎えるにあたり、モラレスはウェルター級の若手注目株の中で唯一ランキング入りを果たしていない選手だった。

【Chris Unger/Zuffa LLC)】

16勝0敗というモラレスの戦績は、シャフカト・ラフモノフ(18勝0敗)やイアン・マシャド・ギャリー(15勝0敗)と肩を並べるほどの偉業だが、2人がすでにタイトル争いに食い込んでいるのに対し、モラレスはまだトップ15入りを目指している状態だった。

そこからモラレスは、第1ラウンドで圧巻のテクニカルノックアウトを決めてマグニーを倒し、一気にランキング入りを果たした。

試合の流れが大きく変わったのは、第1ラウンドの中盤を過ぎたあたりだった。フェンス際でモラレスはウェイストロックの体勢に入ったマグニーに不意を突くスピニングバックエルボーを打ち込み、クリンチから一気に脱出した。この一撃でマグニーがよろけてキャンバスに倒れ込むと、モラレスはすかさず追撃。マウントポジションを取って連続攻撃を繰り出し、見事なテクニカルノックアウト勝利へとつなげた。

この試合は、負け知らずの有望選手の才能を強く印象づける一戦となった。長い間、マグニーはトップ15を目指す新進気鋭のファイターたちにとって登竜門のような存在だったが、ラスベガスでモラレスが見せたような圧倒的なパフォーマンスで彼を倒したファイターはこれまでにいなかった。

【 Chris Unger/Zuffa LLC】

ラフモノフはマグニーに1本勝ちを収めているが、それは第2ラウンドまでかかったもので、マシャド・ギャリーは3ラウンドの末に判定勝ちを手にしている。ジェフ・ニール、フィル・ロウ、マイク・マロットに至っては、この試練を乗り越えることすらできなかった。

どの試合もファイターもそれぞれ異なるが、マグニーを倒すことの意味は誰もが理解している。モラレスがそれを破壊的な強さで成し遂げ、絶妙なタイミングで予想外の攻撃を仕掛け、フィニッシュに持ち込んだことは、モラレスがオクタゴンにもたらす創造性と才能のレベルの高さを如実に示している。これらの資質は、モラレスが今後さらに経験を積み、ファイターとして成長していく過程で大いに役立つだろう。そして現在、ラフモノフ、マシャド・ギャリー、ジャック・デラ・マダレナがモラレスよりも上位にいるという事実は、モラレスにとって有利に働く可能性があり、階級のランクを一歩ずつ着実に上がっていく機会をもたらすかもしれない。

もちろん、モラレスがマグニーのような熟練した相手を次々と倒し続けるのであれば、目標に向けて多くの機会を要することはないだろう。

特別賞:ステファニー・ルシアーノ、ユーセフ・ザラル、ジャック・ジェンキンス、ヘスス・アギラー、ワン・ツォン

サブミッション・オブ・ザ・マンス:ユーセフ・ザラル vs ヤルノ・エレンス(UFCファイトナイト・ラスベガス95)

【Al Powers/Zuffa LLC】

テクニックや難易度といった観点から見ると、今月にUFC APEXで行われた2つのイベントのうちの1つで、ザラルがエレンスをフィニッシュした方法は特に目を見張るものではなかった。ザラルはチャンスが訪れるとすぐに相手の背中に飛び乗り、ポジションを確保し、リアネイキドチョークを決めて、試合開始から4分も経たないうちにエレンスからタップを引き出している。

しかし、このサブミッションが今月の栄誉に輝いたのは、27歳のフェザー級ファイターであるザラルを改めて紹介する意味合いが強い。ザラルは今年、リベンジを果たすべくUFCに復帰し、テクニカルノックアウトで2勝をあげ、再びこの階級で注目を浴びる存在となっている。

ザラルは、ファンタジースポーツの熱狂的なファンが“ポスト・ハイプ・スリーパー”と呼ぶ選手そのものだ。これは、キャリアの初期に高評価を得ながらも一時不振に陥り、その後再び注目を集め、将来性を感じさせる選手を指す言葉だが、まさにファクトリーX所属のザラルにぴったりの表現と言えよう。

“ザ・モロッカン・デビル”の異名を持つザラルは、UFC初参戦となった2020年2月から8月までの7カ月間で3連勝を飾ったが、その後の4試合では結果を出せずに苦しむことになった。この連敗は現フェザー級王者のイリア・トプリアに判定負けを喫したところから始まり、最後は引き分けに終わったバンタム級でのダモン・ブラックシアとの対戦に締めくくられ、ザラルは過ちの原因を常に模索しているように見えた。

地方の大会に戻ったザラルは3試合連続で1本勝ちを収め、今年初め、急きょ組まれたビリー・ クアランティーロとの試合でオクタゴンに復帰すると、隙のない強さを見せつけた。以前と何が変わったのだろう。

憶測に過ぎないが、ザラルはファイターとしても人としても成熟したのではないか。自分の能力、UFCのレベルで競い、成功するために必要なこと、そしてそれに求められる覚悟に対する理解が深まったのだろう。すべて理にかなっている。なぜなら、これらは21歳から30歳にかけて、多くの人が責任やキャリア、そしてその他のあらゆることに向き合いながら、一人前の大人になっていく中で身につけるものだからだ。

ザラルはUFCでデビューした時点ですでに将来有望な選手だったが、今ではさらに興味深い存在となっており、2024年の最初の2試合で見せたパフォーマンスを続けていけば、年内にランキング入りに手が届く位置まで到達できるかもしれない。

特別賞:マイケル・キエーザvsトニー・ファーガソン、風間敏臣vsハラランポス・グリゴリオウ、セルゲイ・スピバックvsマルチン・ティブラ、ヘスス・アギラーvsスチュワート・ニコル、ヴァルター・ウォーカーvsジュニア・タファ、ドリカス・デュ・プレシvsイズラエル・アデサニヤ、ジェラルド・マーシャートvsエドメン・シャバージアン

ノックアウト・オブ・ザ・マンス:ワン・ツォン vs. ビクトリア・レオナルド(UFCファイトナイト・ラスベガス95)

【Chris Unger/Zuffa LLC】

8月最後のイベントが始まるまで、2024年の女子フライ級で記録されたノックアウトまたはテクニカルノックアウトによるフィニッシュは、わずか1回しかなかった。それは2月頭にまでさかのぼり、ルアナ・カロリーナが体重制限を2パウンドオーバーしながらも、ラスベガスで行われた試合の終盤にユリヤ・ストリアレンコを仕留めた際のものだった。

今月、女子フライ級で行われた19試合のうち16試合が判定に持ち込まれる中で、ワンがレオナルドに放った強烈なワンツーノックアウトは、この賞にふさわしい一撃として際立っていた。

「試合を変える一撃」や「試合を終わらせる一撃」というフレーズはよく使われるが、それがどれほど重要であるかを適切に説明したり、それが試合の流れを大きく左右する場面をしっかりと把握できたりしているわけではない。

ほとんどの選手が強烈な打撃を持ち、一発で試合がひっくり返ることが当たり前となっているヘビー級で話題になることはないだろう。そういった一撃が本当の意味で評価され、最も重要かつ危険となるのは、試合を終わるだけのパワーを持ち、それを定期的に発揮できる選手が非常に少ない、より軽量の階級だ。

【Chris Unger/Zuffa LLC】

ワンにとってはオクタゴンでのデビュー戦であったにもかかわらず、フィニッシュにつながったそのワンツーは、恐るべき滑らかさと正確さを誇っていた。今年、いや、近年でさえも、この階級でこれほどのノックアウトパワーを見せた選手はいないため、この一撃でワンは間違いなく女子フライ級で注目すべき存在になるだろう。

UFCでは新人である32歳のワンは、今年の初めにUFCのベテランファイター、ウー・ヤナンを破り、その後ROAD TO UFC(ロード・トゥ・UFC)で第1ラウンドでの1本勝ちを収め、今回はレオナルドを62秒で倒してオクタゴンデビューを飾った。この一連の活躍に興奮を覚えずにはいられない。

もしワンがこのようなパワーと正確さを今後も発揮できれば、同じような爆発力を持つ選手がほとんどいない女子フライ級において、すぐさま脅威となるだろう。

特別賞: ヨエル・アルバレス vs エルブス・ブレナー、アザマト・ムルザカノフ vs アロンゾ・メニフィールド、ジャック・ジェンキンス vs ハーバート・バーンズ、カルロス・プラチス vs リー・ジンリャン、カイ・カラ・フランス vs スティーブ・エルセグ

ファイト・オブ・ザ・マンス:ダン・フッカー vs. マテウス・ガムロット(UFC 305)
試合が終わる前から、ファイト・オブ・ザ・マンスにふさわしい戦いであることは明らかだった。

フッカーとガムロットは、パースで互いに激しい打撃戦を繰り広げ、2024年の最もエンターテーニングなノンタイトルマッチの1つを生み出した。結果はフッカーがスプリット判定で勝利を収めたものの、ガムロットもライト級での地位を失うことはなかった。それどころか、ポーランドの有力株であるガムロットは、いまだにその実力を疑っていた人たちに対し、自分が本物であることを証明して見せた。

このような試合があるからこそ、今までも、そしてこれからもこのスポーツを愛し続けることができる。
2人はそれぞれの目標を果たすべく、オクタゴンに上がった。ガムロットは自分がエリート級の選手であり、“退屈なレスラー”以上の存在であることを示したいと考えていた。一方、フッカーは、ここで初めてフライ級のヒエラルキーを一気に駆け上がるとともに、2度の腕の骨折による1年間のブランクからの完全復帰を目指していた。

両者は互いに一歩も譲らず、15分間にわたり打撃を交わし合い、どちらも傷つき、血まみれになりながらも、オクタゴンで共に戦ったことでより強くなった。

特別賞:ウマル・ヌルマゴメドフ vs コーリー・サンドヘイゲン
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