アジアの舞台で急成長を遂げた19歳~高井幸大 パリ五輪への道
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急成長を遂げた川崎フロンターレの背番号2は、アジア王者となった大会をこう簡潔に振り返った。「成長した大会かなと思います」。その言葉通り、パフォーマンスは頭一つ抜けていた。大会前に自ら課題と語っていた「好不調の波」もほとんどみられず、ロングボールを多用する戦術をとる相手の長身FWとも対等以上に渡り合った。
出場5試合中、3試合で無失点。「特に変えた部分はありませんけど、慣れかな。試合に対しての取り組みや、練習の積み重ねかなと思います」。重圧のかかる実践を重ねる中で確かな手応えをつかんだ。世界クラスのサイズと川崎仕込みの足元の技術。そのポテンシャルは、日本を背負う逸材と評価を受けてきた。一方で自身も口にするような、若さゆえのムラっ気が課題とされていたが、別次元に足を踏み入れたかのような1カ月間のプレーだった。
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一体感が魅力の大岩ジャパンで高井は愛されキャラだった。五輪切符を獲得した準決勝イラク戦前夜には、選手だけで開かれたミーティングの中で、幹部から指名された。皆の前で「温かく迎え入れてもらえてありがとうございます」と感謝の思いを伝えると、「いまさら?」「もう大会終わるぞ!」と突っ込まれた。より仲を深めて臨んだイラク戦は、大会の中でも特に印象深いという。「(五輪出場を)決めたときは思い出に残っています。勝った瞬間ホッとしました」。チームメートと抱き合って喜びを分かち合った。
決勝前日に激励の訪れた日本サッカー協会(JFA)宮本恒靖会長(47)からも、皆の前で自身の成長について言及された。2年前のU-19日本代表時代に、団長としてラオスでのU-20W杯予選をともに戦った会長から、若手選手の成長スピードを伝えるための例として取り上げられ「この立場を想像できたか?」と問われた。それほど分かりやすい飛躍ぶりだった。
大岩剛監督(右)の隣で練習を視察するJFA 宮本恒靖会長 【(c)NIKKAN SPORTS】
19歳。世界的なスケール感を持つ高井のキャリアにおいて、意義深い大会だったに違いない。「間違いなく先につながっていると思うし、川崎だけのサッカーではない、代表に行っていろいろなサッカーに対応するのは大切だなと思っている。対戦相手もいつものJリーグとは違うし、いろいろな選手がいる中で、守備の対応はすごく学べたかなと思います」とうなずいた。
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(取材・文:佐藤成[日刊スポーツ])
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