【ラグビー/NTTリーグワン】北の大地で解き放った呪縛。 “明日”を切り拓くホストゲーム初勝利<S東京ベイ vs 神戸S>

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 根塚選手と立川選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

マッチエピソード&記者会見レポート
S東京ベイ 39-29 神戸S


チームの士気と勝敗という現実の狭間に生じていた正体不明の不気味なギャップが、ようやく取り払われた。昨季は『えどりく』(スピアーズえどりくフィールド)で無敗記録を更新し続けたクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)が今季ホストゲーム初勝利。意外にも、その舞台になったのは、ジャパンラグビー リーグワンでは初開催となる札幌ドームだった。

屈強なフォワード陣がその力を集結して楕円球をゴールエリアにねじ込む。そんな“らしい”戦いを展開してゲームをリードするS東京ベイと、ピタリとその背中を追うコベルコ神戸スティーラーズ。前半16分、負傷したデイン・コールズに代わってピッチに入ったルーキー・江良颯は、試合終了までスクラム最前列で果敢に戦い続けた。後半31分には江良と同じくルーキーの為房慶次朗がニュージーランド代表の“あの”アーディ・サベアからボールを豪快に奪い取った。

それはまさにS東京ベイのいまと未来の歯車がしっかりとかみ合ったかのような猛攻だった。たとえ同点に追いつかれても、つかみかけた勝利は意地でも手放さない。今季入団のJD・シカリングが力強く前進し、そしてシーズンをとおして小さな体を張り続けた藤原忍が、高校・大学の先輩であるファウルア・マキシからのパスを受けてゴールエリアに突進。結果的に、この一撃が勝敗の行方を決定づけるトライとなった。

「一人ひとりが自分の仕事をしたおかげで僕にボールが回ってきてトライができました。みんなのハードワークが、あのトライにつながったと思います」(藤原)

ここ数試合は前半を優位に進めながらも、後半に一気に失速して勝利を取りこぼしてきたS東京ベイ。しかし、今回は後半の競り合いの中でもチームの心は乱れず。第3節・静岡ブルーレヴズ戦から続いたホストゲームでの逆転負けの連鎖が、北の大地でようやく断ち切られた。

「もちろんスコアボードは大事ですが、点差のことはあまり気にせずに、起こってしまったことに対して考え込むのではなく、次に自分たちがすべきことにフォーカスできたので、(最後に)点差を離すことができたのかなと思います」(立川理道)

練習で掲げていたキーワードは「昨日よりも今日、今日よりも明日」。残る公式戦はあと二つ。新しい明日を創るための戦いは続く。

(藤本かずまさ)

クボタスピアーズ船橋・東京ベイの(左から)フラン・ルディケ ヘッドコーチ、立川理道キャプテン、藤原忍選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「札幌ドームで初めて試合をしましたが、素晴らしい施設でいい経験ができました。今日の勝利には、感謝しています。選手たちとこの数週間話してきた中、ハードワークをしっかりと遂行してくれて、勝利を祝うことができてうれしいです。試合自体はすごい接戦で、ラスト10分間は試合をしっかりとコントロールし、セットピースからのプレーの正確性も上がり、最後にしっかりとスコアを取って勝ち切ることができました。今季は、あと2試合残っています。次の試合まではショートウィークですが、問題だとは思っていません。まずはしっかりとリカバリーと微調整をして三重ホンダヒート戦に備えていきたいと思います」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
立川理道キャプテン

「勝ち切れたことをすごくうれしく思いますし、札幌ドームで試合ができたこともすごくうれしく思います。最後、試合が終わったあとにコベルコ神戸スティーラーズの選手もファンサービスを含めて一緒にやってくれたことにすごく感謝しています。試合内容に関しては、(第5節の)前回対戦もそうでしたが、ここ最近の試合はお互いに接戦で、最後に勝ち切れない試合が多かったのですが、自分たちは今回そこの部分で成長できたと思っています。試合の中でも全員が同じ絵を描きながら戦えたことはすごくポジティブな要素だと思っています。あと2試合、しっかりとフォーカスをして勝っていけるようにしていきたいと思います」

——前節からどういったところを修正して今日の試合を迎えましたか?
「前節の静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)との試合では前半をコントロールできたものの、後半は巻き返されてドローに終わってしまい、プレッシャーが掛かったときに自分たちが同じ絵を描いて戦うことができなかったという反省がありました。今回は(得点を)取って、取られてという状況の中でも全員が冷静に判断できていたと思います。ハドルの中でもリーダー陣が話したことをしっかりとみんなが共通認識としてもって戦えたことが最後に突き放せた要因かなと思います。そこは練習中からトレーニングができていたところなので、良かったと思います」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
藤原忍選手

「タフなゲームの中でしっかりと勝ち切れたので良かったです。ここ何試合かは接戦で負けることが多く、週の初めに『昨日より今日、今日より明日』というキーワードを立ててやってきたのですが、それがしっかりと出せてとても良かったです。来週もショートウィークですが、しっかりとコンディションを整えて頑張っていきたいと思います」

コベルコ神戸スティーラーズの(右から)デイブ・レニー ヘッドコーチ、ブロディ・レタリック共同キャプテン、日和佐篤選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ

「本当に残念です。タイトな試合の中でクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)さんは本当に効率的にモールなど私たちの弱い部分を突いてきたと思います。体の大きな選手も多いですし、コンタクトのエリアで私たちが負けた部分もあったと思います。ここ最近は結果がついてきていなかったかもしれませんが、ここ数週間、S東京ベイさんはいいパフォーマンスをされていたと思います。今日は勝利に値していたと思います」

——プレーオフトーナメント進出を逃してしまったことについてはどうお考えですか?
「今季は間違いなく学ぶことが多かったシーズンだと言えます。カンファレンスもタフだと思いますし、来週も静岡BR戦とタフな試合が続きます。そうした中で今日のような形でソフトなポイントを与えてしまえば、自分たちが最後に勝者で終わることはできないと思います。トライライン前のディフェンスの粘りが足りていません。それがプレーオフトーナメントに進出できないことにつながったと思います。とても残念な気持ちです。ただ、今季の学びからコーチ、スタッフ、選手たちは間違いなく来季は成長できると思います。そこに向かって取り組んでいきたいと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ
ブロディ・レタリック共同キャプテン

「タイトな試合の中で自分たちが求めていた結果が得られず、本当に残念です。タックルの部分で外されてしまったり、モールのところでトライを取られてしまったり、そうした部分が最後の勝敗を分けたと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ
日和佐篤選手

「二人と同じ意見です。(山下)楽平の公式戦100キャップを(勝利で)祝いたかったという気持ちがあったので、すごく残念に感じていま
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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