【ラグビー/NTTリーグワン】痛感した、首位に立つチームとの差。 “満員御礼”の中で得た貴重な経験<トヨタV vs 埼玉WK>

トヨタヴェルブリッツ 岡田優輝選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

マッチエピソード&記者会見レポート
トヨタV 7-40 埼玉WK


プレーオフトーナメント進出へ、わずかな望みをつないでいたトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)だったが、無敗で首位を快走する埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)に序盤から圧倒されて敗戦。今季もプレーオフトーナメント進出はならなかった。

“満員御礼”が出たパロマ瑞穂ラグビー場。ラグビーワールドカップ出場経験者を多く擁するトヨタVの陣容なら番狂わせを起こせるかもしれないと、多くのファンが期待を寄せていた。しかし、開始15分までに3トライを奪われるなど力の差を見せ付けられた。

タックルもパスも接点の激しさも、トヨタVはすべて相手に上回られて、プレーオフトーナメント出場という今季の目標は達成できなかった。それでも、彼らのラグビーはこれで終わりではない。来季以降、この差をどう詰めていくのか。前ニュージーランド代表ヘッドコーチのイアン・フォスター氏がチームに加わることが発表されている中で、今季の残り2試合をどう戦うのかは非常に重要になる。ヒントをくれたのは最終盤に相手のディフェンスラインを突破し、スタジアムを大きく沸かせた岡田優輝だ。

「基本プレーができないとラグビーは絶対に成り立たない。技術もそうだしコミュニケーションもそうだし、それにやっぱりメンタル面もそう。どれか一つが欠けてしまってもダメだと思う。それを一人ひとりがやっていけば、自ずとチーム力になると思う」

前回、埼玉WKと対戦したときには倒せる手ごたえを得た。しかし、今回はまるでと言っていいほど通用しなかった。ならば時間はかかるかもしれないが、基本的なことからすべてをレベルアップしていくしかないだろう。

このゲームで先発し、貴重な経験を得た若手の和田悠一郎は、「一番外側にいる自分のところから内側に伝えることが全然できていなかった。立体的にフィールドを見て伝えるのが自分の役目でもあるので、もっと大きな声を出さないといけないですね。歌手の人にボイストレーニングでもしてもらおうかな……」と苦笑いを浮かべた。

ラグビーとボイストレーニング。突拍子の無い発想かもしれないが、あらゆる発明品は柔軟なアイデアから生まれるものだ。強くなるためにプラスになることなら何でも取り入れ、心・技・体のすべてを整えて来季を迎えたい。

(斎藤孝一)

【©ジャパンラグビーリーグワン】

トヨタヴェルブリッツ
ベン・へリング ヘッドコーチ

「単純に埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)がわれわれより上手でした。シーズンをとおしてよくコーチングされた、そして一貫したラグビーをわれわれにもぶつけてきたと思います。そこに尽きます」

――具体的にどんな差を感じましたか?
「自分自身としては、埼玉WK側のブレイクダウンのプレッシャーが非常に強かったと思います。特に相手のマイボールのときのブレイクダウンにプレッシャーを掛けられたことによって、われわれとしてはラックに入るスピードが遅れ、クイックボールを出されましたし、9番を起点としたアタックでしかけられました。前半の(4トライのうち)3トライに関してはスクラムを起点としたクイックボールからのラインブレイク、そういった展開でしたので、ブレイクダウンの差というものが非常に大きかったと思います。非常に学びの多い試合でした」

――この試合結果によって、トップ4入りが完全に消滅しました。そのことについてどう感じていますか?
「非常に残念な気持ちです。残り2試合、チームがそういった状況の中でどう挑むのかというところが重要になってくると思います。試合が終わってからのハドルの中で『前向きな気持ちで行こう』とか『ファンに感謝の気持ちを示そう』とか、そういう話をしました。われわれにとって残り試合は来季に向けてのプレシーズンと考えて、一体感、そして気持ちを高めて臨みたいと思います」

――後半はプレッシャーを強く掛けるようなイメージのディフェンスにしていたが、どんな修正をしたのでしょうか?
「前半に関しては埼玉WK側が良いラグビーを見せ、われわれとしてはプレッシャーを受けることが多かったので、後半はブレイクダウンをクリーンに行うこと、そしてボールキャリーというところで力を発揮しようという話をしました。それが理由で少し流れが傾きましたが、やはり埼玉WKは非常に辛抱強いチームで、そういった勢いをまた取り返されてしまいました。われわれとしてはそういった局面の中で得点を重ねることができなかったので、そこも課題、修正点だと思っています」

――戦力が整った中でプレーオフトーナメント進出ができなかった要因について、どう考えていますか?
「われわれとしては一貫性というところが欠けていると思います。いいチームではありますが、まだそこが足りていませんし、理由というのは多くありますので、シーズンが終わったらそこを深掘りしていきたいと思います。理由は一つではありません。オフシーズン、そしてプレシーズンをとおしてそういった一貫性という部分を作っていく必要があります。やはりチャンピオンになるためにはそういった部分が必要ですし、そういった模範例を今日の埼玉WKは見せていたと思います」

――終盤に崩れる試合が多かったのも一貫性の問題なのでしょうか?
「そうですね。一貫性に関して、われわれの今季のパフォーマンスには波があったと思います。一貫性という言葉の定義は難しいですが、そういった部分に関してプレーヤー、そしてコーチ陣全体でオフシーズン、プレシーズンをとおして作っていきたいと思います」

トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン

「まずはこの瑞穂(パロマ瑞穂ラグビー場)にたくさんの観客の方が入ってくれたことをうれしく思います。その中でいいラグビーをしたかったですが、ベン(ベン・ヘリング ヘッドコーチ)が言ったとおり、自分たちの力が分かった試合だと思います。埼玉WKのラグビーとは差がありました。そこに尽きると思います」

――埼玉WKにディフェンスでうまく対策されたという感覚はありましたか?
「もともと、埼玉WKはリーグワンの中でもベストなディフェンスチームだと思っています。少しでも中盤でもたついてしまうと、ジャッカルのうまい選手もいるし、ゲーム運びが難しくなります。その中でどうやっていくのか、もう少し考えないといけないと思います。1本のトライも自分たちの強みであるモールにこだわって、コーナーでラインアウトを取ってからのものでした。自分たちの強みをもうちょっと理解してプレーの選択をしないといけなかったと思います。もちろん埼玉WKのディフェンスに関してはいつもプレッシャーを感じていますし、なかなか打ち合う(展開に持ち込む)ことができませんでした」

――この試合でプレーオフトーナメント進出が消滅したが、どう感じていますか?
「ベン(・ヘリング ヘッドコーチ)と同じです。前しか自分たちは向いていないですし、前を向いてやるしかないと思います」

――厳しい内容だったが、この試合から得た学び、これから生かせることはありますか?
「ボーデン(・バレット)とも話しましたが、自分としてはゲーム運びをもう少しうまくできたのではないかと感じましたし、ブレイクダウンのところも課題がありました。アタックに関しても、自分たちのシェイプを失いかけている場面があって、いろいろやらないといけないところがありますけど、一つひとつの課題をクリアにして、直していくという作業をしていかないといけないと思います」

【©ジャパンラグビーリーグワン】

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督

「本当にうれしい結果だと感じています。トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)さんがすごく必死にくることは分かっていたので、それに対して迎え撃つことができたというのは本当にうれしく思っています。大西(樹)やジャック(・コーネルセン)はポジションを変更して出場しましたが、そこもうまく対応できていたと感じています」

――トヨタVとの差は基本的な技術なのか、それとも準備の差なのか、どう感じますか?
「トヨタVさんに対して具体的な準備もしていますし、それが今日の試合に出たのはうれしく思っています。相手を1トライで抑えられましたが、そのトライもペナルティや規律の部分の乱れからきています。相手が勢いをつけていくプレーが多かった中で、全体的にディフェンスとしてはそこで何も与えませんでした。そこからプレッシャーを掛けられたのではないかと感じています。

今日の結果には満足していますが、また来週ですね。すごく大きな試合があります。堀江(翔太)選手の(ワイルドナイツ通算)200キャップのゲームとなりますので、ぜひ良い試合にしたいと思います。みなさんは、『プレーオフ、プレーオフ』と言っていますが、その中で坂手(淳史)キャプテンのおかげで、選手たち一人ひとりがその試合に集中して、フォーカスして練習に取り組めています。本当に坂手選手の影響がすごく大きくて、チームに結果をもたらしてくれていると感じています」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「結果としては、すごくいい結果だったと思いますし、今週準備してきたものを多く出せたゲームだったと思います。ただ次に向かっていくにあたって、前半の途中から自陣に入ってこられる大きな原因となったペナルティやラインアウトの部分はしっかりと修正して、スキを見せないようなチームを目指していきたいと思いますし、みんなどういうところがペナルティだったのか、どういうところがゲインにつながったのかも理解できているので、しっかりと修正して、またいいゲームができればと思います。みんなのパフォーマンスには満足していますし、ディフェンスもすごくよくて7失点だけで終えられたことも良かったと思います」

――ここから先の歩みが大事になるが、今日の試合ではこれまでやっていなかったサインプレーも試していたような印象を受けました。
「この1週間、いろいろな準備がある中でアタックのコーチだったり、アタックのリーダーだったりから提示されたプレーをしたので、新しいものはそんなに多くなかったと思います。一つひとつのプレーの質、精度を上げていくことがすごく大事だと思うので、少しミスしてしまったところも含めて次につながると思います」

――トヨタVに対してどんな準備をしてきたのでしょうか?
「すごくいいジャッカルをするプレーヤーがいたり、すごく前に出てくるディフェンスをしてきたりする選手がいることはスカウティングでも分かっていたので、効果的なエリアでアタックしたり、オフロードを使ったりとか、そういったところで相手のディフェンスに対してプレッシャーを掛けていくということは今週1週間で準備をしました。ブレイクダウンのところでも、まずはキャリアーがしっかりと前に出て、サイドにポジショニングしている選手がいいサポートをすることによって、次にいいスペースが生まれてくる。基本になる部分ですが、そこをいかに効果的にやり続けられるのかがすごく大事になるので、そこを1週間で整えました」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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