【ラグビー/NTTリーグワン】課題だった若手選手の成長。 勝利必須の試合で起用された3選手の活躍<RH大阪 vs 釜石SW>

レッドハリケーンズ大阪 山内俊央選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

マッチエピソード&記者会見レポート
RH大阪 21-18 釜石SW


4月19日、19時にヨドコウ桜スタジアムでキックオフしたディビジョン2の4〜6位順位決定戦第1節。レッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)と日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)の今季3度目の対戦は、リーグ戦の2試合と同様、観る者に緊張と興奮を与える白熱したゲームとなった。

終盤まではRH大阪が15点リードしていたが、残り時間10分を切ったところから釜石SWが2トライ1ゴールを奪い、3点差に詰め寄った。後半36分には、釜石SWがペナルティゴールでの同点ではなくラインアウトからのトライで勝利を狙うも、RH大阪が辛抱強く守り切り、21対18でノーサイド。RH大阪は勝ち点4、釜石SWは勝ち点1を得た。

直近の対戦より、RH大阪はナンバーエイトとバックス6枚を変更し、試合に臨んだ。スクラムハーフに山内俊央、スタンドオフに呉嶺太、フルバックには山口泰輝と、ゲームコントロールを担うポジションに若手選手を置いた。

この試合でフル出場だった山内俊央は、直近の公式戦となった第10節が、この2シーズンをとおして初めてのフル出場だった。呉嶺太は、昨季のディビジョン3第9節で初めて先発出場して以降、D3優勝が決まる第13節までは山内俊央と先発で並んで立つことはなく、ハーフ団のペアにはベテランの鶴田諒が置かれていた。昨季のシーズン前を振り返れば、RH大阪のチーム再編時にはベテラン選手と試合経験の少ない若手選手の比率が高い構成となっており、若手選手の成長は、大きな課題の一つとして挙げられていた。絶対に負けるわけにはいかない大事な試合で、彼らは先発起用され、勝利に貢献。昨季の第5節からすべての試合に先発している島田久満だけでなく、ほかの若手選手たちも成長し、台頭してきている証だと言えるだろう。

さらにフルバックに関しては、昨季チームの得点をけん引していた吉澤太一が7人制日本代表での活動により、RH大阪の試合に出場できる機会は限られていた。バイスキャプテンを務める山本貫太は今季初めに負傷があり、小村健太はウィングで起用していたため、第4節にはスタンドオフのブライス・ヘガティをフルバックに置く状況もあった。フルバックで起用できる選手の獲得と育成は、今季の火急の課題だった。山口は「攻守ともに、自分自身にはまだ40点ぐらいしかつけられない」とは話していたものの、ファーストキャップとともにこの日のプレーヤー・オブ・ザ・マッチを獲得し、その課題が解消されていることを示した。

レッドハリケーンズ大阪 山口泰輝選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

今季は苦しい試合も多く、次の試合への課題を残してはいるが、チームとしての成長は着実に重ねている。キャプテンの杉下暢が語ったとおり、次のホストゲームでは「今シーズンのベストゲームを見せたい」。

(前田カオリ)

【©ジャパンラグビーリーグワン】

レッドハリケーンズ大阪
マット・コベイン ヘッドコーチ

「日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)さんと今季対戦した2試合と同じような、熱狂的な試合となりました。釜石SWさんは、立ち向かうスピリットの強い、本当に良いチームであることをあらためて感じました。

私たちは最後の10分間で、また自分たち自身で自分たちの首を絞めるような展開にしてしまいました。毎週出てくる課題はいくつもありますが、ターゲットを絞って取り組んでいます。けれど、一貫性を保ち続けることは、まだまだ足りていません。まだ改善できていない課題があるということを今日の試合でも感じました。

前半は、フィールドポジションがうまく取れませんでしたが、ハーフタイムに話をして、後半は良くなりましたし、それによって得点することもできました。規律面に関しては、1週間をとおして話をしていましたが、レフリーへの対応力は少し足りなかったと感じています」

――前回の対戦では、試合終盤に「(ハラハラする試合展開で)倒れそうになった」とおっしゃっていましたが、今回はいかがでしたか?
「今回は、残り10分のところで点差があっても、何が起こるか分からないとほかのコーチ陣とも話していました。点差があったのに最後に3点差となるような展開にしてしまったマネジメントについては、残念だったと感じています。今シーズンはこういう展開も多かったので、しっかり学んでいこうと話していたにもかかわらず、それを修正できていません。もう一度、コーチングスタッフでどのようなメッセージを(選手たちに)伝えていくのかを考えなければなりません。最終的に勝利できたことはうれしいですが、私たちが持つ本来の力はこのようなレベルではなく、もっとできるはずだとも思っています。次の試合に向けてしっかりと準備をし、良い勝利で終えたいと考えています」

レッドハリケーンズ大阪
杉下暢キャプテン

「釜石SWさんとの今季の2試合と同じような試合になりましたが、勝利することができ、本当に良かったと思っています。勝つことができた要因はいくつかあると思いますが、そのうちの一つは、フォワードのスクラムやモールで優位性を持てたことだと感じています。前回の試合もそうでしたが、流れが相手に渡ってしまいそうになったときにも、こちらがプレッシャーを掛けることができたので、ゲームの主導権を握ることができました。しかし、最後の10分間は、何度もラインブレイクされてしまいました。その原因について追求し、次の九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)さんとの試合までに修正していきます」

――その次の試合に向けての準備では、どのような部分に注力したいと考えていますか。
「シンプルに、ドミネートの部分です。そして、今シーズンのベストゲームにします」

――今日は、以前より楽しみにされていた(今季からRH大阪がホストゲームで勝利した際に行う)大阪締めをすることができました。実際にやってみて、いかがでしたか。
「最後にイエローカードをもらってしまっていたので、ちょっと後ろめたい気持ちもありましたが、最高でした」

【©ジャパンラグビーリーグワン】

日本製鉄釜石シーウェイブス
須田康夫ヘッドコーチ

「本日のナイトゲームは、素晴らしい環境でした。その素晴らしい環境の下でゲームできたことを非常に誇りに思います。ご尽力された関係者の皆さまには感謝申し上げます。

順位決定戦ということで、各々のチームに大変プレッシャーの掛かるゲームだったと思いますが、見ている方たちには非常に楽しいゲームだったのではないかと思うので、その点においては少しうれしいと感じています。

釜石SWとしては、前半は優勢な部分もあったと思いますが、思うように得点できず、後半に入ってもミスが続いてしまいました。選手たちはキーとなるようなセットピースやプレーの中での選択は、正しく判断してくれていました。最後に3点差まで追い上げて勝ち点1を取れたことは大きいと感じていますし、次の試合に勝つしかなくなったので、次に向けて気持ちを切り替え、準備していきます」

――次の試合に向けて、どのように準備されますか。
「われわれもベストの状態で挑んでいますので、できることはやっていきます。九州KVさんとの試合も今季3回目になりますし、相手がどのようなチームカラーなのかということは大体知ってはいますが、いかに自分たちにフォーカスしていけるか、ということが大事だと考えています」

日本製鉄釜石シーウェイブス
サム・ヘンウッド バイスキャプテン

「ヤスさん(須田ヘッドコーチ)が話してくれたとおりです。私たちには、大事な場面でのミスが多過ぎました。それがこの結果につながったと感じています。勝利できる試合だったはずですので、今日の試合では自分たち自身が一番の敵であったと感じています。ポジティブな面で言えば、3点差で勝ち点1を取れたことは、次の試合で勝利することができれば、少し安心できる材料になるのではないかと感じています」

――この試合で「敵」となってしまった自分たち自身に打ち克つために、次の試合に向かう1週間をどのように過ごしたいですか。
「やはりミスが多過ぎたことは、大きな反省点です。1週間でチームが急に強くなることは難しいかと思いますので、やはりマインドセットの部分が大事になるかと思います。メンタルの部分を切り替えていくしかないと思っています」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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