高井幸大の挑戦~川崎からカタール経由パリ行きへ

川崎フロンターレ
チーム・協会

【(c)NIKKAN SPORTS】

川崎フロンターレDF高井幸大(19)が麻生グラウンドから約8200km離れたカタール・ドーハで輝きを放っている。

パリオリンピックアジア最終予選を兼ねるU-23アジアカップカタール大会にU-23日本代表の最年少メンバーとして出場。初戦の中国戦で先発し、10人になりながらも無失点に抑えて勝利に大きく貢献した。興奮冷めやらぬ試合直後に思いを聞くと「そうですね。勝ててよかったというのが、まあ今思っている印象ですかね」とシンプルな高井節で答えた。

前半17分にいきなりセンターバック(CB)の相棒・西尾隆矢(セレッソ大阪)が退場するアクシデントにも、慌てなかった。「想定外でしたけど、10人になってもやることは変わらないですし、(ボールを)持たれる展開にはなりましたけど、全員が力強く守れたかなと」。川崎でも経験済みの10人での戦い方。長身選手をそろえてきた相手のロングボールをはね返し、ラインを統率するなど役割を全うした。

大舞台にも、高井らしさを貫いた。「サッカーは楽しむことが一番大切」。そんな思いはどこでプレーしようとも変わらない。「最初から使ってくれることに感謝しながらも、のびのびと楽しくプレーしようと心がけていました。難しい展開でしたけど、楽しかったなと思います」。このメンタリティ。高井が高井たるゆえんだ。

昨年9月にパリ世代に初めて呼ばれたときは「友達がいない」とこぼしていたが、すっかりチームに溶け込んでいる。「(田中)聡くんとは仲良いです。特に理由は無いですが」。

プレー経験のある日本代表DF谷口彰悟(32=アルラヤン)とも再会を果たした。ラインコントロールについて意見を交わし、頭の中を整理。「自分たちの思うようにやってほしいとは言われました。自分たちの感覚でいいと」。異国の地で川崎の先輩から金言を授かった。

カタールリーグでプレーする谷口彰悟。高井にとっては心強い存在だ。 【(c)NIKKAN SPORTS】

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自然体ながら、クラブの誇りを胸にアジアの舞台でも戦っている。

「いつも通りのプレーをすれば負ける相手ではない。アジアの戦いは簡単ではないことも分かっているし、それはチームでも共有されている。難しい時間帯もあると思うけど、コミュニケーション取りながらやりたい」

チーム最年少ながら、アジアでの経験値はトップクラスだ。CBというポジション柄、同世代はどうしてもクラブでポジションを確保できていない選手が多い。過去の五輪をさかのぼってみても、オーバーエージ(OA)枠でCBを補強するケースが見られる。今回選出されたCBの中で高井は、唯一アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)での出場がある。「年齢はピッチに入ったら関係ない。いつも年上の先輩たちとやっているので問題ないかなと思います」。頼もしい19歳だ。

高井を送り出す前、鬼木達監督(50)は「この数試合の取り組みを見れば、選ばれる人間だったのかなと思います。世界の舞台でアジアの舞台でどれだけ戦えるか。同年代の戦いの中で、だからこそ、引っ張っていける気持ちで臨んでほしい」とエール。まさにその通りの働きだった。

中国戦後には「クラブを代表してきているので恥じないプレーをしなければならないし、代表として来られているのでよかったんじゃないかなと思います」と納得の表情を浮かべた。

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好不調の波が課題であることは自覚している。中国戦は、まさに「良いときの高井」だった。3月末以降は継続して安定したパフォーマンスを披露しており、今後の韓国戦、そして決勝トーナメントでもそのままの集中力を保ち、チームを五輪出場に導きたい。

クラブは北京五輪の谷口博之、ロンドン五輪の安藤駿介、リオデジャネイロ五輪の大島僚太、原川力、東京五輪の三笘薫、旗手怜央と4大会連続で五輪メンバーを輩出している。高井もそんな川崎の期待を一心に受けている。「もちろん出場したい大会ですし、自分の価値を示せる大会。出場できるように頑張りたいなと思います」。川崎から世界へ―。大器が羽ばたく。

(取材・文:佐藤成[日刊スポーツ])
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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