【ラグビー/NTTリーグワン】「ワクワクしていた」。 窮地さえも楽しむ眞野泰地の決勝トライ<BL東京 vs BR東京>

東芝ブレイブルーパス東京 眞野選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

マッチエピソード&記者会見レポート
BL東京 40-33 BR東京


東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は3月24日、秩父宮ラグビー場でリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)に40対33で競り勝った。これで10勝1敗としたBL東京はリーグ2位、2勝9敗となったBR東京はリーグ10位となった。

後半18分、BR東京がネタニ・ヴァカヤリアのトライで33対33の同点とすると、秩父宮ラグビー場には“番狂わせ”の空気が渦巻いた。

フルバックのアイザック・ルーカスは魔法のようにスペースを突き抜け、両ウイングの西川大輔とネタニ・ヴァカヤリアは疲れを知らずに何度も疾走する。BR東京応援団の歌声が響く中、二人のシンビンで13人になっていたBL東京は、いまにものみ込まれそうだった。

それでも、眞野泰地は試合後に笑った。

「これがラグビー。ワクワクしていました」

根拠がないわけではなく、虚勢を張っているわけでもなかった。眞野は「自分たちの用意しているプレーや、そこまでのフィジカル勝負を考えたときに、ボールを持てばトライを取り切れると思っていました。自分たちのアタックがめちゃくちゃに崩れているわけではなかったので」と振り返る。

15人に戻ったBL東京は、眞野の言葉どおりにジリジリとゴールラインに迫る。そして後半34分、ペナルティからのサインプレーでパスを受けた眞野が二人のタックルを受けながらも懸命に体を伸ばしてグラウンディング。チームを救う決勝トライとなった。

「少しでも相手がズレていたらトライまでもっていこうと思っていました。シャノン(・フリゼル)が引き付けてくれて、良いトライになったと思います」

レギュラーシーズンは残り5試合、悲願の優勝を狙うBL東京にとって重要な戦いが今後も続く。緊張感が高まるタフな試合でこそ、冷静に戦況を見極めて窮地さえも楽しむ眞野の存在は、勝利への大きなカギとなりそうだ。

(安実剛士)
東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

「本当にエキサイティングな試合でした。記者のみなさんも楽しんでいただけましたか?(笑)。すごく良い形で試合に入れましたが、自陣からの脱出のところで正確性を欠いてしまって、そこから続けてペナルティを冒して、自分たちにプレッシャーを掛けてしまいました。後半にはイエローカードが二枚出て、前に出る勢いを削がれました。その中でも選手たちはタフに、逆境をはねのけて戦いました。リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)さんは体が大きくてパワフルで、すごく良いチームだと分析していましたが、実際に良い試合になってたくさんの学びを得ました。最終的に勝利できたことをうれしく思います。来週はバイウィーク(試合のない週)で次の試合まで一週間空くので、選手たちにはリフレッシュしてもらいたいと思います」

――今節は上位チームが苦労する試合もありましたが、バイウィークの前の試合は難しいのでしょうか?
「下位チームが勝っているのはリーグワンの競争力の高さを証明していると思います。BR東京さんは順位表では下位かもしれませんが、馬力があります。接戦になったことについても驚いてはいません。厳しい試合になると予測していました」

東芝ブレイブルーパス東京
原田衛バイスキャプテン

「前半は良い形で終われたのですが、後半は自陣からの脱出をクリーンにできなくて、プレッシャーを受けて、(イエロー)カードのプレッシャーもあったので苦しい試合になりました。チーム内で控えの選手を『アルファ』と呼んでいるのですが、彼らが良いプレーをしてくれて、13人の時間帯も耐えることができました。『アルファ』のエナジーのおかげで勝利できたと思います」

――後半にBR東京が盛り返す展開になりましたが、相手の圧力をどう感じていましたか?
「感触としては、前半からフィジカルで圧倒できていたわけではなくて、コンタクトやブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)で良いプレッシャーを掛けられていたので、ワンサイドゲームにはならなかったのだと思います。仲間には『ノーペナルティ』と声を掛けていましたが、その自分にイエローカードが出てしまいました」

――イエローカードが出る前からレフリーと話していましたが、どこの解釈についてでしょうか?
「ブレイクダウンにおいて、僕らが改善したくても改善しようがないような指摘を受けたので、そこについて話しました。僕らとしてはペナルティをしたいわけではなく、相手のパスダミーに見えるプレーが要因になっていたので、分かるように伝えてほしいと言っていたのですが、うまく伝わらなくて、修正できませんでした。(ノットロールアウェイの判定も多かったが)お互いに解釈がかみ合っていなくて、ペナルティが多くなったと思います」

【©ジャパンラグビーリーグワン】

リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ

「まだちょっと試合のことを考えているところです。まずは東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)さんに『おめでとう』と伝えたいです。前半はうまくプレッシャーを積み上げられず、ボールを長くキープできれば良いアタックができるのではないかと思っていました。前半に良いトライが二つありましたが、ターンオーバーも多過ぎました。また、BL東京さんが私たちの22mライン内に侵入してからは簡単にトライを取られてしまいました。ハーフタイムにもう一度チームとしてつながることができて、後半に見せたファイトを誇りに思います。どちらに転んでもおかしくない試合でしたが、残念ながら今回は私たちのほうには転びませんでした。今日はアーリーエントリーの若い選手が二人出ました。(リーグワンデビューの)山本嶺二郎は(日本語で)スバラシイ。キャップ1では終わらないだろうと思いました。サミュエラ・ワカヴァカの後半のパフォーマンスもすごく良かったです」

――競った展開で最後に勝てませんでしたが、どう評価していますか?
「前半は正しいエリアには行けていたのですが、ここでアタックができれば……というところでターンオーバーをしてしまい、ダメージを与えることができませんでした。もちろんミスはあるのですが、ミスが続いてしまうので改善が必要です。また、前半に取られたトライは簡単過ぎたので、見直します」

――マット・マッガーン選手を12番にした狙いと、その結果はいかがでしたでしょうか?
「リスクはもちろんあったと思いますが、ベストプレーヤーをグラウンドに立たせたいという狙いがありました。今日はあのメンバー構成で良かったです。(スタンドオフの)中楠一期の周りに経験のある山本昌太や(マット・)マッガーンを置いて、アイザック・ルーカスは現時点では15番がベストだと思っています。(マット・)マッガーンの一番良いところはコミュニケーションをすごく良く取れるところです。インサイドとアウトサイドのバックスをつなげてくれました。あと、絶対に言及しておきたいのは礒田凌平についてです。彼は毎週すべてを出し切ってくれます。試合のプレビュー記事などで名前は挙がらないかもしれないですが、自分のできることを必ずすべて全力でやってくれる選手です」

――アイザック・ルーカス選手も終盤はややスピードが落ちていたのでしょうか?
「そこはもっと練習しないといけません(笑)。ただ、動きが多い試合だったので、そこは彼が悪いわけではありません。後半35分に南昂伸がチャージをして、アマト・ファカタヴァが追いかけましたが転んでしまったシーンもありました。『今日はそういう日だったのかな?』と思います(笑)。私も椅子のギリギリのところに座って、ドキドキして見ていました」

――ハーフタイムにどのようなメッセージを送ったのでしょうか?
「シンプルです。アタックならフェイズを続けよう、ディフェンスはちょっと消極的なのでプレッシャーを掛けにいこうと話しました。あとはセットピースについてフォワード陣で話をしていました。すごく落ち着いていて、リーダーも話をしてくれて、必要だった微調整ができたと思います」

リコーブラックラムズ東京
山本昌太 共同バイスキャプテン

「率直に悔しいゲームでした。前半はBL東京さんにラインアウトでプレッシャーを受けましたし、相手にチャンスを与えたあとに粘り強さがなく、簡単にスコアされてしまって、自分たちにとって良くないプレーを積み重ねてしまいました。ハーフタイムにどう戦うのかを修正して、後半のパフォーマンスにつながったことにチームの成長を感じました。この1週間、『勝ちたい』という意志を見せようとトレーニングをしてきて、そこを見せることはできたと思います。このマインドセットを次のゲームに持っていきたいです」

――これまでの1週間の練習で変えたことはあったのでしょうか?
「トレーニング内容やスケジュールは変わっていないですが、徹底的に準備をしようというところです。やり残したことはないか、自分にできることをすべてやったのか、ということを確認して試合に臨もうと言い続けてやってきました。良い1週間を過ごせたと思っています」

――前半は、スコアした直後にトライを取られるなどリズムに乗れなかったように感じます。
「今季のチームとして成長しなければいけないところだと思います。その話はしていますが、実行力がついていない状態です。『いま、そういう場面だ』と気づけている選手と気づけていない選手がいます。僕や松橋(周平)が早く気づいてチームとして実行する、というところまで前半はできていませんでした。ペナルティをしてしまう選手はもちろんですが、僕もリーダーとして成長しないといけないと思っています」

――ハーフタイムにどのようなメッセージを送ったのでしょうか?
「選手の中では、スコアを追いかけ過ぎずに、その場の一瞬、一瞬に必要なこと、シンプルなことをやろうと話して、グラウンドに立ちました」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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