【ラグビー/NTTリーグワン】湯気が上がるほどのシーソーゲーム。 そのわずかな差は“勝ち方を知っているか”<三重H vs 相模原DB>

三重ホンダヒート ヘイデン・ベッドウェル=カーティス選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

マッチエピソード&記者会見レポート
三重H 26-31 相模原DB


「こんなに風のないスポーツガーデン(三重交通G スポーツの杜 鈴鹿)は初めてです」と選手たちが口をそろえるほど、珍しく風はないものの、時折雨が強く降る中で行われた三重ホンダヒート(以下、三重H)と三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)の一戦。スリッピーな状況の中、両チームともにキックを多用し、セットピースとテリトリー重視でゲームを進めた。

先制したのは、2連勝とホストゲーム初勝利を狙う三重Hだった。前半15分、リーグ最高成功率を誇るラインアウトから、5シーズン相模原DBに所属していたヘイデン・ベッドウェル=カーティスがトライを奪った。

「2日前のトヨタヴェルブリッツとの練習試合に80分フルで出場していた中で、今朝、急きょ出場が決まり、どれだけ足がもつかと少し緊張していました。(古巣との対戦は)とてもクールで、とても不思議な感じでした。トライのシーンは、李承爀とコミュニケーションが少し取れていなくてファンブルしかけたのですが、古巣からトライを取れてとてもうれしいです」(ヘイデン・ベッドウェル=カーティス)

先制後はラインアウトスティールなどで粘った三重H。しかし前半26分、41分と強力なドライビングモールから相模原DBにトライを与え、8対14と逆転されてハーフタイムを迎える。

後半はシーソーゲームに。三重Hはラインアウト、相模原DB はラインブレイクと強みを織り交ぜた攻撃で2トライずつ挙げ、後半のスコアは18対17と互角の戦いを繰り広げたが、前半の貯金を生かした相模原DBがトータル26対31で逃げ切った。

正確なタッチキックやロングキックを自らチェイスして何度もチャンスを演出したトム・バンクスは、「テリトリーゲームになるのは分かっていました。特に後半に入ってからはコンテスト(競り合い)によりフォーカスを当てようと考えていました。キックを使うことで、自分たちがボールを取り返すことができたのは良かったですが、そこからの実行力をさらに突き詰めていく必要があると感じました。自分たちも良いパフォーマンスを出すことができましたが、三菱さん(相模原DB)は勝ち方を知っていて、そこが差になったと思います」と振り返った。

三重ホンダヒート トム・バンクス選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

勝った相模原DBは今季5勝目となり、三重Hは貴重なボーナスポイントを獲得した。勝った相模原DBは今季5勝目となり、三重Hは貴重なボーナスポイントを獲得した。トム・バンクスは「シーズンの中で基盤ができ上がってきましたし、自信がついてきました。このまま進み続けるしかありません」。スクラムやモールから湯気が上がるほどの熱戦は、両者にとって今季積み上げてきたものを証明する試合となった。

(山田智子)は「シーズンの中で基盤ができ上がってきましたし、自信がついてきました。このまま進み続けるしかありません」。スクラムやモールから湯気が上がるほどの熱戦は、両者にとって今季積み上げてきたものを証明する試合となった。

(山田智子)

【©ジャパンラグビーリーグワン】

三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ

「とても残念です。われわれとしては非常に良いプレーができた時間帯が多くありました。また良いキックやディフェンス時のプレッシャーといった、用意してきたゲームプランを遺憾なく発揮できたと思います。ただ、ハーフタイム直前にミスが重なったところからトライを取られてしまったことが残念な結果につながってしまいました。負けはしましたが、今日の試合は今季のベストパフォーマンスだったと感じています。今日の良いパフォーマンスを次戦以降も続けていきたいです」

――今日の試合の収穫と課題を教えてください。
「相手にラインブレイクを許してしまった場面もありましたが、ディフェンスのコネクションについては改善してきていると感じています。課題は(アタックの際に)22m内に入ったときに確実に得点を取るという部分です。いずれにしても、チームとしての小さなステップを登りながら、成長していきたいです」

――前節の今季初勝利を経て、今日は選手が自信を持ってプレーしているように感じました。チームの変化をどのように感じていますか?
「序盤は上位チームとのチャレンジングな対戦が続きました。いまは、その期間に経験したことが試合の中で発揮される時期に入ってきています。ここからまた上位チームとの対戦がありますので、自分たちが積み重ねてきたことを証明できるように準備していきたいです。特に今日は小林(亮太)ゲームキャプテンがホンダ(三重ホンダヒート)での公式戦100キャップを達成しました。彼がリーダーシップを発揮してくれていることによって、チームとして素晴らしい功績を成し遂げられたと思っています」

三重ホンダヒート
小林亮太ゲームキャプテン

「本当に残念ですが、ハードワークをし続けたチームメートを誇りに思います。自分たちのやるべきことをしっかりと遂行できた時間帯も多くありましたが、ほんの少しのところで、自分たちに流れを手繰り寄せることができませんでした。チームとしては悪くない状態にあるので、いい準備をして、次のゲームに臨みたいと思います」

――前節の初勝利を経て、チームの変化をどのように感じていますか?
「9連敗して自信を失うところがあったのですが、全員で“セイムページ”を見られるように(戦い方・ビジョンの共有)リーダーグループが中心になって引っ張ってくれました。ここ2、3試合は、自分たちの強みをどうしたら出せるのかという部分が明確になってきたことが良いパフォーマンスにつながっていると感じています。現状に満足することなく、でも、しっかりと胸を張って、進んでいきたいと思います」

――三重Hでの公式戦100キャップを達成されました。
「先輩方、コーチ、スタッフ、家族などみなさんのおかげで達成できた記録だと感謝しています。これからもこのチームで良い景色を見られるようにハードワークしていきたいです」
三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「どちらの方向に進む可能性もあった試合だと思います。今日は本当に(三重)ホンダヒートが熱さを出してプレッシャーを掛けてきたため、私たちはそれに耐えられず、らしくないミスをたくさん犯しました。したがって、接戦になったのは驚くべきことではありません。ただ、自分たちがやるべきことを遂行できれば勝てると思っていました。勝利を収めることができて良かったと思います」

――らしくないミスが起こってしまった理由はなんですか?
「一番はメンタルです。集中が切れたところがありました。特に雨の中でプレーするときには少しタイミングがズレることがあるので、どれだけ一瞬、一瞬に集中できるかがカギになるのですが、今日の試合では少し集中が切れた時間帯がありました」

――相手に先制された要因についてはどう考えていますか?
「自分たちがいくつかのミスを犯してチャンスを与え、相手がプレッシャーを掛けてきたところでわれわれがそれを止めることができなくて、得点されてしまいました。あの場面では単純に相手が勝っていただけだと考えています」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「勝利できたことをうれしく思いますが、今日はスキルエラーや判断ミスなど、われわれのスタンダードではないプレーがたくさん出てしまったので、非常に悔しく、残念に思います。われわれはもっともっと上を目指していかなければいけないと考えていますし、今日のようなプレーをしていたら上にはいけません。しっかりと反省して、自分たちにベクトルを向けて、成長していきたいです」

――らしくないミスが起こってしまった要因についてはどうお考えですか?
「よくチームで『まず一つ目の仕事をしっかりしよう』ということを言っているのですが、今日はそこができていませんでした。雨天というコンディションの中で、ボールを取る前に先に相手を見てしまったり、先のことを考えてしまったりしたせいで、ミスが起きたと思います」

――相手に先制されたことが影響した部分はあったのでしょうか?
「特にディフェンスを崩された場面はなかったのですが、いらないペナルティを犯して、自陣にクギ付けにされたことがファーストトライを取られた原因だと思いますし、流れをつかめなかった要因だと感じています。ロッカールームで『相手は関係なく、自分たちの仕事を一瞬、一瞬考えて遂行しよう』と話してグラウンドに出たのですが、少し空回りしてしまったところがあったと思います」
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント