【連載】早大『令和5年度卒業記念特集』 髙見愛佳/アーチェリー

チーム・協会
【早稲田スポーツ新聞会】記事 梶谷里桜、写真 星野有哉、梶谷里桜

「誰も諦めないチーム作り」を目指して

 62代女子アーチェリー部主将として1年間チームを率いてきた髙見愛佳(スポ4=エリートアカデミー)。常に意識していたのは「点数の差によって諦める人がいない」チーム作りだった。1年生の時から多くの試合に出場してきた髙見がチーム作りに秘めた思いとは何か。4年間の軌跡とともに振り返る。

関東学生リーグ戦で行射する髙見 【早稲田スポーツ新聞会】

 小学校5年生の時、転校をきっかけにアーチェリーを始めた。中学生までは地元・長崎で練習に励み、試合にも多く出場した。その実績が認められ、高校からはエリートアカデミーに入校。高校1年生の時にはU20ナショナルチームにも選出された。同年ナショナルチームに選出された中村美優コーチ(令4スポ卒=北海道・旭川北)が早稲田大学に進学すると知ったことがきっかけで、早稲田大学に興味を持ち始めた。近大と日体大が学生2強とうたわれる中で、それ以外の大学を盛り上げたいという気持ちもあり、早稲田大学への進学を決めた。

 「私が思い描いていた大学アーチェリーではない」。大学に入学して早々、新型コロナウイルスによって一変した試合や練習のあり方にこう感じたという。いつもは各大学の応援合戦でにぎわう全日本学生王座決定戦(王座)は応援が禁止になり、部員全員で戦う団結力が感じにくくなった。8月になり部活動が再開しても、練習は分かれて行うことが多く、同期と関わる機会は少なかった。そんな中開催が決定した9月の王座には1年生ながら団体メンバーとして出場した。結果はアーチェリー部史上初の準優勝。嬉しさよりも悔しさが勝った。それでもこの王座は髙見にとって、それから4年間に渡り、部活動に取り組む原動力になったという。

 それから2年。3年ぶりの有観客での開催となった王座の舞台に髙見の姿はなかった。学内の団体メンバー選考に落ちてしまったためだった。2年生の終わりごろから調子が上がらず、必死に練習しても点数が伸びない時期が続いていたという。王座後に代替わりがあり、すでに女子主将になることが決まっていた髙見は「気を落としている場合ではない」と切り替えて、自分の点数と向き合った。手探りであったが、コーチに何度もアドバイスをもらったり、練習場所を高校時代の射場に変えたり、試行錯誤を繰り返した。その努力の結果、2023年、引退試合となる最後の王座に、髙見は再び選手として出場することとなった。結果は4位と満足のいくものではなかったが、髙見にとって初めての「応援と一体になって射つ王座」は幸せで楽しかったという。

最後の王座ではメンバー唯一の4年生として笑顔でチームを率いた 【早稲田スポーツ新聞会】

 「チーム作りに関しては本当に大変だった」。こう振り返ったのには理由がある。髙見はチーム作りに対して強いこだわりがあった。それは「点数の差によって諦める人がいない」チームをつくること。早稲田大学のアーチェリー部にはアーチェリーを小学校から続けている人もいれば、大学に入ってから始めた人もいる。アーチェリーはふとしたきっかけで点数が上がり、誰でも全国大会に出る可能性があるスポーツだからこそ、誰にも諦めてほしくなかったという。そう感じるようになったきっかけは2年生のころ。女子部員が少なく、団体メンバーに入る人が一部の経験者で固定化されるようになってから、メンバーに入れない部員の顔が徐々に暗くなっていくことを身近に感じたためだ。その思いから髙見が主将になってからは、特に未経験者に対する声掛けを積極的に行ったり、部のルールを多く改正したりした。例えば王座のメンバーの選考について、選考期間を長くして、誰でも気軽に選考会に参加できるようにした。チーム作りについては「まだまだできることがあった」としつつも、髙見らが変えたルールがより今のチームに合った形で引き継がれているのを見て、変えてよかったと思ったという。

 早稲田大学での4年間を通して、アーチェリーの成績だけでなく、チーム作りにおいても多くの成果を残した髙見。2023年度アーチェリー部に入部した1年生はほとんどが未経験者だったが、「アーチェリーはやればやるだけ伸びるスポーツ」という髙見の言葉通り着実に点数を伸ばしている。これから髙見たちが残したチームの下で、アーチェリー部がさらなる成長を見せてくれることを楽しみにしたい。
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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