【コベルコ神戸スティーラーズ】 和製チェスリン・コルビ⁉︎WTB/FB松永 貫汰、大きな目標に向かって走り出す

チーム・協会

日本代表が掲げる「超速ラグビー」。エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチがその体現者として名前を挙げる南アフリカ代表のWTBチェスリン・コルビを、体の小さな松永も理想の選手像として追い求める。 【コベルコ神戸スティーラーズ】

2022年4月、筑波大学から入団。2年目となる今シーズンは、これまでリーグワン6試合にフル出場を果たし、現在ゲインメーター1位をはじめ、ディフェンス突破、ラインブレイクは2位と、選手スタッツランキング上位に入る出色の活躍を見せる。
1月30日に発表された2月6日、7日の日本代表トレーニングスコッド福岡合宿参加メンバー36人にもFLサウマキ アマナキ、NO8ティエナン・コストリー、SO李 承信と共に選ばれた。松永自身にとって15人制の代表入りは、高校日本代表候補以来となる。
「日本代表に入って、ワールドカップに出ることが目標」という松永は、夢の実現に向けて一歩を踏み出した。(取材日:2024年1月31日)

決意の入団2年目のシーズン

嬉しい知らせは突然だった。

第6節横浜キヤノンイーグルス戦に向けての練習が終わった後、グラウンドの隅で仲の良い李 承信とボールの片付けをしていた時のこと。

デイブ・レニーディレクターオブラグビー/ヘッドコーチ(HC)から「日本代表のトレーニングスコッドに入ったよ」と声をかけられた。考えてもいなかったことなので驚いたというが、その後、李と顔を見合わせハイタッチ。

「日本代表はラグビーをはじめた時からずっと目指していた場所でした。目標に少し近づいたなという感じですね」と爽やかな笑顔を見せる。

1999年生まれ、大阪府大阪市出身。ポジションは、WTB/FB。
1歳上の兄は、東芝ブレイブルーパス東京に所属するSO/FB松永 拓朗。

子供の頃から足が速かったという松永は中学1年からラグビーをはじめ、大阪産業大学附属高校を経て筑波大学へ。
昨シーズンのリーグワン新人賞を獲得しラグビーワールドカップ2023フランス大会に出場したCTB長田 智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ)や昨年日本代表に招集されたWTB木田 晴斗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)は、同学年で、2人とも関西出身だ。

「中学時代から知っている選手が昨年日本代表に入って。特に長田選手は、ワールドカップに出場しすごく刺激を受けました。4年後に自分がその舞台に立つためにも、まず今シーズン、試合に出ないと代表入りに向けてアピールができない。とにかくチームで試合出場を目指そうと思って今シーズンに臨みました」

決意の入団2年目のシーズンだった。

チームで試合に出るためには、どういうプレーをすればいいのか。
グラウンドで自分がやるべきことを整理した。

というのも、昨シーズンは開幕スタメンを勝ち取り、先発2試合を含む8試合出場も自分自身のパフォーマンスは納得がいくものではなかった。

「リーグ戦の途中で怪我や脳震盪があり戦線離脱した時期がありましたし、プレー自体も良くなかったです。自分の中でやるべきことが明確でなくて、フワフワした感じというか…。それにアタックも積極性がなかったですし、ディフェンス面は特に悪くて、自分だけが前に出てしまったり、終盤疲れて足が止まった時にタックルを外されてしまったり…。今シーズンはアタック面ではどうやったらボールタッチの回数を増やすことができるのか、カウンターの際も良い状況でボールをもらうことができるよう考えながらプレーし、すごくいい感じできています。ディフェンスに関しても、周りと連携することを意識しながら、焦ることなく落ち着いて守ることができています。昨シーズンよりも明らかにプレーが良くなっていると感じています」

加えて、レニーHCからそれぞれの役割を示されることで、自分のプレーに対して責任感が強くなったことも好調の理由だとも。

試合を重ねるごとに逞しさが増している松永。

第6節を終え、ラインブレイク「9」(選手スタッツランキング3位)、ディフェンス突破「32」(3位)、ゲインメーター「623」(1位)という数字を叩き出す。

ノエビアスタジアム神戸で開催された第3節東京ブレイブルーパス東京戦は、公式戦で初めて兄弟対決が実現した。「トライは取れましたが、兄(拓朗)に抜かれる場面があって。試合にも負けてしまって、悔しさが残ります。次の対戦では必ず勝ちたいです」ときっぱり。 【コベルコ神戸スティーラーズ】

ベン・スミスのアドバイスが転機に

167cm、78kg。
体は決して大きくはないが、抜群のスピードと体幹の強さを兼ね備え、セブンズでは、これまでU20日本代表、ユニバーシアード代表、7人制日本代表に選ばれている。

だが、実は大学入学時には、体のサイズからSHへの転向が持ち上がったこともあったそうだ。そこで通用するところを見せて、大学1年からSOで試合出場。2年からはFBでレギュラーを勝ち取った。

当時、プレーのお手本にしていたというのが、2020-21シーズンから2シーズン、神戸スティーラーズでプレーした元ニュージーランド代表のUTBベン・スミスだ。

「ハイボールキャッチ、カウンターアタック、タックルなど、すべてがハイレベルです。自分でトライを取り切るタイプではないですが、ベンダー(ベン・スミス)のプレーがトライに直結する。ベンダーのプレー映像を見て参考にさせてもらっていました」

そんな尊敬するベン・スミスとは、神戸スティーラーズのクラブハウスで話すことができた。そこで言われた言葉はよく覚えている。

“世界にはチェスリン・コルビ(東京サントリーサンゴリアス)といった小さくても素晴らしい選手がいる。その体をいかして頑張ればいい”

その頃、ウエイトトレーニングで鍛えながら体重を増やして体を大きくしようと考えていたところだった。それを聞いて無理に体を大きくすることは止めよう、持ち味であるスピードを最大限に発揮できるような体づくりをしようと意識が変わった。

だから、リーグワンでプレーするようになっても大学時代と同じ体重をキープしながら筋肉量を増やしてきた。

スミスの助言に出てきた南アフリカ代表のWTBチェスリン・コルビとは、1月6日、秩父宮ラグビー場で行われた東京SG戦で対峙した。

「ステップがすごかった!」と興奮気味に話すが、試合の中では山下 楽平をかわして抜けてきたコルビをタックルで前進を食い止めた。

「コルビ選手を止めることができて、ちょっと嬉しかったです」

今、目指しているは、172cm、80kgと自分と同じような体格のコルビのような選手になることだ。

スピードもあり、キック処理も上手くて、キックも蹴れる。まさに自身にとって理想とするラグビープレーヤー。

しかも、日本代表が新たに目指す『超速ラグビー』の体現者として、エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチが名前を挙げる選手だ。

「自分も小さくても世界で通用するというところを見せたい!」

そう意気込む松永。

これからまだまだリーグワンの戦いは続く。

「チームの目標は優勝です。毎試合、全力でプレーして、良いパフォーマンスを発揮し、勝利に貢献したい。それが、ひいては代表入りへつながると思いますから」

代表候補から日本代表。そして、ラグビーワールドカップ出場へ。

大きな夢に向かって、松永の挑戦ははじまったばかりだ。

文/山本 暁子(チームライター)

第2節静岡ブルーレヴズ戦では後半33分、試合を決めるトライをマークし自身にとって初となるプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた。「次はホストゲームでプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれて神戸ビーフをもらいたいですね」と笑う。 【コベルコ神戸スティーラーズ】

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著者プロフィール

兵庫県と神戸市をホストエリアとして、日本最高峰リーグ「NTTジャパンラグビー リーグワン」に参戦しているラグビーチーム「コベルコ神戸スティーラーズ」。チームビジョンは『SMILE TOGETHER 笑顔あふれる未来をともに』、チームミッションは『クリエイティブラグビーで、心に炎を。』。 ホストエリア・神戸市とは2021年より事業連携協定を締結。地元に根差した活動で、神戸から日本そして世界へ、笑顔の輪を広げていくべく、スポーツ教室、学校訪問事業、医療従事者への支援など、地域活性化へ向けた様々な取り組みを実施。また、ピッチの上では、どんな逆境にも不屈の精神で挑み続け、強くしなやかで自由なクリエイティブラグビーでファンを魅了することを志し、スタジアムから神戸市全体へ波及する、大きな感動を創りだす。 1928年創部。全国社会人大会 優勝9回、日本選手権 優勝10回、トップリーグ 優勝2回を誇る日本ラグビー界を代表するチーム。

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