2年連続の盗塁王は難しい? 小深田大翔と周東佑京は“ジンクス”を払しょくできるか
小深田大翔選手と周東佑京選手 【写真:球団提供】
2023年に盗塁王を獲得した2選手にとって、新シーズンは非常に重要なものに
そこで、今回は直近11シーズンにおけるパ・リーグ盗塁王が、翌年に残した成績を確認。それに加えて、小深田選手と周東選手が昨季に見せた活躍や各種の指標を確認することにより、両選手が過去のジンクスを払拭してくれる可能性に期待を寄せたい。
盗塁王の翌年に、盗塁数が半分以下になったケースも多い
【(C)PLM】
また、過去11年間で延べ15人の盗塁王が誕生したが、そのうち10名は、タイトル獲得の翌年に盗塁数が半数以下まで減少している。西川選手や金子侑司選手のように、いったん盗塁数が減少した後に再び数字を向上させた選手も存在するものの、やはりパ・リーグの盗塁王は翌シーズンに苦しむケースが多いといえよう。
そして、2021年は1シーズンで4名の盗塁王が誕生する異例の事態となったが、いずれも翌2022年は20盗塁を下回る数字に終わった。さらに、2022年の盗塁王である高部瑛斗選手も、2023年は故障の影響で一軍出場なしという非常に苦しいシーズンを送っていた。
ルーキーイヤーから即戦力の期待に応え、2023年は課題の確実性も大きく向上
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続く2021年は打率.241、出塁率.328と打撃成績を落としたが、2022年は打率.267と復調。前年はわずか5個に終わった盗塁数も21と大きく増加させ、俊足の好打者として再び存在感を発揮した。
2023年はチーム事情に応じて二塁、三塁、外野をこなすユーティリティ性を発揮し、4年連続となる規定打席に到達。2022年終了時点で通算の盗塁成功率が.672と確実性を課題としていたが、2023年の盗塁成功率は.857と飛躍的に向上。走者としての大きな成長を示し、自身初タイトルとなる盗塁王を手にした。
球界屈指の韋駄天は、WBC準決勝での見事な走塁も話題に
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続く2021年は打率.201と打撃不振に苦しんだが、翌2022年は打率.267と復調。2023年に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、準決勝で代走として持ち前の俊足を発揮し、逆転サヨナラのホームを踏む見事な走塁を見せて脚光を浴びた。
シーズンでは8月終了時点で打率.172と打撃不振に苦しんだが、9月に月間打率.360と終盤に大きく調子を上げ、最終的な打率は.241まで上昇。外野守備でも俊足を活かしてたびたび好プレーを見せ、盗塁数も前年以上に増加。走攻守の全てで存在感を発揮し、3年ぶり2度目の盗塁王にも返り咲いている。
1年目の成績がキャリアハイだが、BABIPに目を向けると違った側面も見えてくる
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ただし、2020年はBABIPが.333と、キャリア平均の.308という数字を大きく上回っていた点は無視できない要素だ。BABIPは本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す数値であり、一般的に運に左右されやすいことに加え、長いスパンで見れば一定の値に収束しやすい特性を持っているとされる。
俊足の左打者である小深田選手は内野安打が期待しやすい特性を持ち、キャリア平均のBABIPも.308と、一般的な基準値とされる.300を上回っている。また、2022年のBABIPはちょうどキャリア平均と同水準だった一方で、2023年のBABIPはキャリア平均を下回っている。2023年の打率低下は、この数字に起因する部分もあると考えられる。
その一方で、ISO、BB/Kといった各種の指標は2022年と2023年で大きな変化がなく、選球眼を示す「IsoD」は前年よりも向上している。すなわち、2023年は打率こそ悪化したものの、打席内容自体は前年と同様、もしくはさらなる成長を見せていたことになる。
そのため、2024年にBABIPが上向きさえすれば、さらなる打撃成績の向上が期待できるはずだ。こうした数字は、盗塁王翌年のジンクス打破に向けて、非常に頼もしい要素の一つとなることだろう。
周東選手にもさらなる成績向上のチャンスは大いにあり
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また、2023年は打率が低下した一方でIsoDは.010上昇しており、選球眼に関してはキャリア最高の数値を記録している。そのため、小深田選手と同じく、BABIPがキャリア平均以上の水準に回帰すれば、例年以上に塁に出る機会が増える可能性も高いといえよう。
ただし、2022年はわずか80試合で自己最多の5本塁打を放ち、ISOも.097だったのに対し、2023年は114試合で2本塁打、ISOは.055まで低下。長打力を一昨年の水準まで戻せるか否かも、相手投手に打撃面で怖さを与えるうえでは重要な要素になりそうだ。
直近の11年間におけるジンクスを払拭し、新たな流れを生み出すことができるか
しかし、パ・リーグの歴史を振り返ってみると、「世界の盗塁王」福本豊氏が、1970年から1982年まで13年連続で盗塁王という圧倒的な記録を樹立した。2000年代に入ってからも、西岡剛氏、片岡治大氏、本多雄一氏といった選手たちが、2年連続での盗塁王に輝いている。
果たして、小深田選手と周東選手は西川選手以来となる、2年連続のパ・リーグ盗塁王という快挙を達成できるか。2名の韋駄天が直近11年間の盗塁王にまつわるジンクスを払拭し、新たな流れを作ってくれることに期待したいところだ。
文・望月遼太
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