2年連続の盗塁王は難しい?  小深田大翔と周東佑京は“ジンクス”を払しょくできるか

パ・リーグインサイト
チーム・協会

小深田大翔選手と周東佑京選手 【写真:球団提供】

2023年に盗塁王を獲得した2選手にとって、新シーズンは非常に重要なものに

 東北楽天の小深田大翔選手と福岡ソフトバンクの周東佑京選手は、ともに36盗塁を記録して2023年の盗塁王に輝いた。両選手にとって2024年は2年連続の盗塁王がかかるシーズンとなるが、近年のパ・リーグにおいて、2年連続で盗塁王を獲得するケースは極めて珍しいものとなっている。

 そこで、今回は直近11シーズンにおけるパ・リーグ盗塁王が、翌年に残した成績を確認。それに加えて、小深田選手と周東選手が昨季に見せた活躍や各種の指標を確認することにより、両選手が過去のジンクスを払拭してくれる可能性に期待を寄せたい。

盗塁王の翌年に、盗塁数が半分以下になったケースも多い

 2012年から2022年の11シーズンにおけるパ・リーグ盗塁王と、翌年の成績は次の通り。

【(C)PLM】

 盗塁王を獲得した翌年にも同タイトルに輝いたのは、2017年の西川遥輝選手のみ。また、前年を上回る盗塁数を記録した選手も、同年の西川選手だけだった。相手のマークが厳しくなる中で2年続けて盗塁を量産することは、非常に難しいことがうかがえる。

 また、過去11年間で延べ15人の盗塁王が誕生したが、そのうち10名は、タイトル獲得の翌年に盗塁数が半数以下まで減少している。西川選手や金子侑司選手のように、いったん盗塁数が減少した後に再び数字を向上させた選手も存在するものの、やはりパ・リーグの盗塁王は翌シーズンに苦しむケースが多いといえよう。

 そして、2021年は1シーズンで4名の盗塁王が誕生する異例の事態となったが、いずれも翌2022年は20盗塁を下回る数字に終わった。さらに、2022年の盗塁王である高部瑛斗選手も、2023年は故障の影響で一軍出場なしという非常に苦しいシーズンを送っていた。

ルーキーイヤーから即戦力の期待に応え、2023年は課題の確実性も大きく向上

 次に、小深田選手と周東選手がプロの舞台で記録してきた、年度別成績を見ていこう。

【(C)PLM】

 小深田選手は大阪ガスから、2019年のドラフト1位で東北楽天に入団。ルーキーイヤーの2020年にさっそくレギュラーの座をつかみ、規定打席に到達して打率.288、出塁率.364と好成績を記録。平良海馬投手と熾烈な新人王争いを繰り広げるなど、プロ1年目から鮮烈なインパクトを残した。

 続く2021年は打率.241、出塁率.328と打撃成績を落としたが、2022年は打率.267と復調。前年はわずか5個に終わった盗塁数も21と大きく増加させ、俊足の好打者として再び存在感を発揮した。

 2023年はチーム事情に応じて二塁、三塁、外野をこなすユーティリティ性を発揮し、4年連続となる規定打席に到達。2022年終了時点で通算の盗塁成功率が.672と確実性を課題としていたが、2023年の盗塁成功率は.857と飛躍的に向上。走者としての大きな成長を示し、自身初タイトルとなる盗塁王を手にした。

球界屈指の韋駄天は、WBC準決勝での見事な走塁も話題に

【(C)PLM】

 周東選手は、2017年の育成選手ドラフト2位で福岡ソフトバンクに入団。2019年の開幕直前に支配下の座を勝ち取ると、代走を中心に25盗塁を記録。翌2020年は二塁の定位置を掴んで打率.270を記録し、全120試合の短縮シーズンにもかかわらず50盗塁の大台に到達。自身初の盗塁王にも輝き、球界屈指の韋駄天として広く認められる存在となった。

 続く2021年は打率.201と打撃不振に苦しんだが、翌2022年は打率.267と復調。2023年に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、準決勝で代走として持ち前の俊足を発揮し、逆転サヨナラのホームを踏む見事な走塁を見せて脚光を浴びた。

 シーズンでは8月終了時点で打率.172と打撃不振に苦しんだが、9月に月間打率.360と終盤に大きく調子を上げ、最終的な打率は.241まで上昇。外野守備でも俊足を活かしてたびたび好プレーを見せ、盗塁数も前年以上に増加。走攻守の全てで存在感を発揮し、3年ぶり2度目の盗塁王にも返り咲いている。

1年目の成績がキャリアハイだが、BABIPに目を向けると違った側面も見えてくる

 続いて、小深田選手と周東選手が記録してきた、年度別の指標を紹介したい。

【(C)PLM】

 2020年に残した打率.288、出塁率.364という数字が、打撃面における現時点でのキャリアハイとなっている。また、同年は長打力を示す「ISO」が.093、打席での忍耐力を示す「BB/K」が.712と、打撃内容の面でも最も優れた数字を記録していた。

 ただし、2020年はBABIPが.333と、キャリア平均の.308という数字を大きく上回っていた点は無視できない要素だ。BABIPは本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す数値であり、一般的に運に左右されやすいことに加え、長いスパンで見れば一定の値に収束しやすい特性を持っているとされる。

 俊足の左打者である小深田選手は内野安打が期待しやすい特性を持ち、キャリア平均のBABIPも.308と、一般的な基準値とされる.300を上回っている。また、2022年のBABIPはちょうどキャリア平均と同水準だった一方で、2023年のBABIPはキャリア平均を下回っている。2023年の打率低下は、この数字に起因する部分もあると考えられる。

 その一方で、ISO、BB/Kといった各種の指標は2022年と2023年で大きな変化がなく、選球眼を示す「IsoD」は前年よりも向上している。すなわち、2023年は打率こそ悪化したものの、打席内容自体は前年と同様、もしくはさらなる成長を見せていたことになる。

 そのため、2024年にBABIPが上向きさえすれば、さらなる打撃成績の向上が期待できるはずだ。こうした数字は、盗塁王翌年のジンクス打破に向けて、非常に頼もしい要素の一つとなることだろう。

周東選手にもさらなる成績向上のチャンスは大いにあり

【(C)PLM】

 周東選手は球界屈指の韋駄天として知られているだけに、通算BABIPも.312と小深田選手以上に高い水準にある。そして、2022年のBABIPがキャリア平均とほぼ同水準であり、2023年のBABIPがキャリア平均を下回った点も、奇しくも小深田選手と共通している。

 また、2023年は打率が低下した一方でIsoDは.010上昇しており、選球眼に関してはキャリア最高の数値を記録している。そのため、小深田選手と同じく、BABIPがキャリア平均以上の水準に回帰すれば、例年以上に塁に出る機会が増える可能性も高いといえよう。

 ただし、2022年はわずか80試合で自己最多の5本塁打を放ち、ISOも.097だったのに対し、2023年は114試合で2本塁打、ISOは.055まで低下。長打力を一昨年の水準まで戻せるか否かも、相手投手に打撃面で怖さを与えるうえでは重要な要素になりそうだ。

直近の11年間におけるジンクスを払拭し、新たな流れを生み出すことができるか

 プロ野球界には「2年目のジンクス」という言葉が存在する。前年の疲労や対戦相手の研究などによって成績を落とす選手は少なくないが、とりわけパ・リーグで盗塁王を獲得した選手に関しては、その翌年に苦しいシーズンを送るケースが多いことは否めない。

 しかし、パ・リーグの歴史を振り返ってみると、「世界の盗塁王」福本豊氏が、1970年から1982年まで13年連続で盗塁王という圧倒的な記録を樹立した。2000年代に入ってからも、西岡剛氏、片岡治大氏、本多雄一氏といった選手たちが、2年連続での盗塁王に輝いている。

 果たして、小深田選手と周東選手は西川選手以来となる、2年連続のパ・リーグ盗塁王という快挙を達成できるか。2名の韋駄天が直近11年間の盗塁王にまつわるジンクスを払拭し、新たな流れを作ってくれることに期待したいところだ。

文・望月遼太
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

「パ・リーグインサイト」は、ニュース、ゲームレビュー、選手情報、スポーツビジネスなど、パシフィックリーグ6球団にまつわる様々な情報を展開する、リーグ公式ウェブマガジンです。「パーソル パ・リーグTV」を運営する、パシフィックリーグマーケティング株式会社が運営しています。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント