辻直人&比江島慎 ウインターカップで見せた名門・洛南エースの矜持
湊谷、辻と続いた洛南エースの系譜を引き継いだのが比江島だ 【月刊バスケットボール】
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洛南が創部初の連覇を達成したのが2007年のウインターカップ。決勝では福岡第一(福岡)を78‐73という僅差で下し、この年の有終の美を飾った。
辻直人(群馬)は、前年の同大会で対戦チームのマークが1年先輩の湊谷安玲久司朱(元横浜BCほか)に集中するスキを突き、準々決勝から決勝までの3試合全てで4本の3Pを決めて、ベスト5を受賞する活躍を見せた。しかし最上級生となり、自らがマークされる立場となった2007年、辻は3Pを意識するあまり、プレー面、精神面で不調に陥り、優勝候補と目されながらも洛南はインターハイ、国体では無冠に終わっている。
辻は高校の頃から3Pシュートを武器にしていた 【月刊バスケットボール】
「(ベスト5で名前を呼ばれた時は)心臓がキュンとなりました(笑)」と茶目っ気たっぷりに喜びを語った当時の辻。強豪校のエースとして背負った責任の重さ、そして、その責任を何としても果たさんとするプライドは、全て人懐っこい笑顔の内側に秘めていた。大一番で決め切る勝負強さ、そして自らの苦闘を表に出すことなく、ユーモアを交えながら仲間を盛り上げるムードメーカーぶりは、今も変わらない。
辻の勝負強さや仲間を盛り上げるムードメーカーぶりは今も変わらない 【(C) B.LEAGUE】
初戦となる2回戦から準々決勝までを全て100点ゲームで順調に勝ち上がり、準決勝ではインターハイ王者の延岡学園(宮崎)を洛南伝統のパス&ラン、セットオフェンスで撃破。決勝は前年と同じ、福岡第一との顔合わせとなった。両チームはインターハイ準決勝でも対戦し、この時には福岡第一が立ち上がりから一気に流れを奪い、21点差で勝利を収めている。
試合は3Qを終えて福岡第一が58‐53と僅かにリード。谷口大智の粘り強いディフェンスや、全員でリバウンドに飛び込む姿勢が功を奏し、洛南が接戦に持ち込んでいた。
高校の頃からエースだった比江島は、日本代表でもパリ五輪へ導く活躍を見せた 【(C) B.LEAGUE】
残り1分6秒に蛯名涼が速攻を決めて71‐69とついに逆転を果たすと、残り22秒、リバウンドを制した加藤寛樹からのパスを受けた比江島は、得意とするスクープシュートを放つ。フワリと宙に浮いたボールはその後、枠の上で時を止めたかのように静止。そして、吸い込まれるようにリングの中へ……。息つく間もない静と動を展開した末、勝利の女神は洛南に微笑んだ。
「コートの中ではみんなディフェンスを頑張ってくれていて、僕もディフェンスから頑張ろう。これが最後の試合なので、体がボロボロになってもいいからとにかく全部出そうって」。当時の比江島は、決勝4Qを前にした心境をそう語っていた。そして、最後のシュートについて、「あそこで決めてこそエースとして役割を果たせると思った」とも振り返っている。
あれから15年の時を経て、比江島は日本をパリへと導く、偉大なエースとなった。
文=月刊バスケットボール編集部
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