駑馬十駕 vs大分 1-2

note
チーム・協会
【これはnoteに投稿された聖地敷島さんによる記事です。】
 前半から決定機を作られながらも0で時計を進め、狙い通りセットプレーから先制したものの、千葉左サイドが高く張る形に徐々に押し込まれ追いつかれ、最後はPOを手中に収めようという相手の勢いに圧されての逆転負け。決して内容が悪いといったことはないが、ここで3ポイントを手にするためには、ゴール前での精度は求められる。

 2023シーズン、泣いても笑っても最後、勝って終わるべく臨む最終節の相手は大分。こちらもPOを目指していたものの最終節を待たずに可能性が消滅。2年でのJ1復帰とはならなかった。
 下平体制2年目の今シーズンは、3バックでスタートするも山形戦で5失点した辺りから4バックに変更。4-2-3-1をホームフォーメーションとしつつ、可変の3バックっぽく振る舞い、SBが高い位置で幅を取り、シャドーがハーフスペースに走ってくる。逆三角形の底に位置する保田はU-23代表に招集されるなど、シーズンを通してチームの中心として機能。3枚の中盤はボールを運ぶことも繋ぐこともできるメンバーが揃っていたものの、昇格までは辿り着かず。この試合を以て下平氏の退任することが決まっている。

 POの可能性がないとて、目の前の試合に全てを懸けることは変わらない。シーズンを通して積み上げたものが何なのかをピッチで表現し、60ポイントに乗せたい。

メンバー

【聖地敷島】

 ウチは前節からスタメン・サブ18人ノーチェンジ。今シーズンの集大成として、3ポイントを目指して戦う。

 対する大分もドローだった前節金沢戦からスタメンは変更なし。下平監督のラストゲームを勝利で飾れるか。

前半

 立ち上がりから大分がやや高めでボールを動かし、サイドで数的優位を活かして深くまで入り込んでクロスを上げようとする意図が見える。ウチは例によって中央を締めてはいるので、サイドに関してはある程度大分に割譲せざるを得ない。ただ、大分CBのペレイラと香川には1stプレス隊が結構タイトに掴みに行き、梨誉が上手く引っ掛ける場面も見られた。そこを上手く剥がされて保田にボールが渡ると、一気に大分がテンポアップして左の藤本・高畑・弓場辺りが絡んでアタッキングサードまで運べる。

 6分、大分がCKからいきなり決定機。保田のインスイングのボールをニアで酒井が頭に当ててコースを変えたが、そのボールが走り込んだ長沢にドンピシャで当たる。ピンボールよろしくゴール方向に向かっていたボールだったが、クロスバーに当たる。
 ニアに藤本・ペレイラの2枚を寄せてウチのゾーンの中心を誘き寄せ、ストーンの城和には香川が身体を密着させて自由を奪うことで、ターゲットである長沢をフリーにさせた。ウチとしてはゾーンの間に完全にフリーにさせており、あまりよろしくなかったが、酒井が何とかコースを変えたことで長沢にコントロールさせなかった。前節からクロスバーには何度も助けられている。

 12分も大分のチャンス。大分のビルドアップに対してウチが捕まえようとするが嵌めきれず野嶽がフリーとなると、野嶽から中央に顔を出していた長沢への斜めの楔が綺麗に通る。アマを背負っていた長沢が上手くターンしてフリーとなり、左に展開。高畑が少し運んで敵陣に侵入し、前方の藤本へ。藤本に対しては岡本が正対して対応していたが、ボールを奪い切れず藤本がPA内に侵入。深く抉りゴールライン上からマイナスのボールを入れる。送った先には誰もいなかったがファーの渡邉が先に反応して横にボールを流し、走り込んだ保田がバイタルから流し込むようにシュート。コントロールして狙いを定めたシュートだったが、櫛引がセーブ。
 大分のIHのポジショニングがとても気になってウチがボールホルダーにプレッシャーに行けないままシュートまで持っていかれた。野嶽に対しては竜士がチャレンジしたかったものの、内側に渡邉がいたから安易に前に行けず。長沢から高畑に渡った場面でも、外には藤本・ハーフスペースには弓場が走っており、どうしても佐藤も岡本も内側を絞っていたことで外まで押し出せないのは仕方ない。
 また、野嶽が持った際に渡邉と長沢の2枚でウチのCMFを上手く釣り出すことで、その後のサイドへの展開がしやすくなっている。サイド抉られる際にCMFが引き過ぎてバイタルにスペース空くのは水戸戦と同じ形で、完全にスカウティングされている。まあ、2人の担当するスペースが広いから横幅をカバーするのも難しいのはある。

 続く15分にも大分の決定機。スローインの流れから重心が押し上がり、保田がハーフウェーを越えたところでボールを受け、左の香川へ。香川はウチの1stラインの脇を突くべくそのままコンドゥクシオン。撤退していた佐藤が身体の向きを変えたのを見計らって外に張っていた高畑へ。高畑は左足でクロスを上げると、長沢の後ろに走っていた弓場が頭で合わせる。タイミングは完璧だったが、ここも櫛引がセーブ。
 このシーンでは香川がボールを持ち出す時に藤本と高畑がレーンを被らないように立ち、尚且つ藤本の動きによって佐藤と岡本を同一レーンに置いた上で高畑がフリーとなるシチュエーションを作った。シュートを打った弓場もずっとライン間で浮いていた。クロス対応を担う城和に長沢を当ててクリアを許さず、その外側で勝負するのも含め、綺麗な崩し。

 ウチは20分までに複数回の被決定機を何とか耐え抜いて、少しずつアジャスト。ウチのボール保持時、大分1stラインはかなり自重。というよりも、兎に角アマと風間を潰しに来た。最終ラインではボールを持たせてもらえるけど、次に刺す場所がない。竜士が風間の脇まで落ちてきてチャンネル作って局面変えていたのは流石だなと思いつつ、ちょっと詰まり気味。それでも僅かな隙間を突いてCMF使おうしているのは、今シーズン積み上げた部分。
 また、大分は1stラインがリトリートながら最終ラインは高めなので、梨誉が香川とペレイラの間を走って長いボール1本で形を作ろうともした。中塩が持った際には必ずと言って良いほど佐藤が斜めにラインブレイクする動きを見せており、香川が少しナーバスにはなっていた。だが、ウチもやはり前向きにボールを持てる時間は長くならず、やや低めの重心を維持。

 のらりくらりと振る舞っていたが、24分に大分が試合を動かす。大分の陣形が押し込み、最終ラインがハーフウェーを越えた状態でボールを動かす。ペレイラからボールを受けた保田が1stラインの間を自ら運んで突破し、隣の野嶽へ。CMFの脇でフリーとなった野嶽はアーリー気味でクロスを入れる。この高い弾道のボールにファーに流れていった長沢が合わせて先制。
 保田がボールを運んで局面打開されたのが全てだった。真ん中割られたことでウチは陣形がやや崩れる。野嶽に対してチャレンジしきれなかったし、高さにストロングを持つ選手に高さで勝負できる状況を生み出してしまった。

 先制して勢いに乗る大分は更に決定機を作る。29分、ウチが高い位置まで掴みに行くが、弓場が左に流れてアマを引き出し、そのスペースに香川が走ってきて打開。香川は左の藤本に付けると、そのまま藤本は運んでグラウンダーのクロス。これは酒井が何とか反応するが、バイタルでセカンドを弓場が拾ってワンタッチで渡邉へ。弓場・高畑・藤本・渡邉の4枚が絡んでPA角付近でボールを細かく動かしてウチの選手たちの視線をボールに集める。すると、渡邉が急加速して弓場とのワンツーでPA内に侵入し、難しい体勢からニアに強烈なシュート。櫛引も逆も取られたシュートだったが、これはポストに弾かれる。

 決めきれなかった渡邉だったが、37分にゴールに絡む。1つ前のフェーズで左サイドからのクロスに弓場が飛び込んだが合わせ切れず。一息ついてマイボール、となるはずが副審は大分ボールと判断。ウチの陣形が整う前に大分はリスタート。野嶽からボールを受けた渡邉は鮎川とのワンツーで一気にPA内に入り、右足で流し込む。これは櫛引が見事な反応だったが、こぼれを弓場がプッシュ。
 判定に納得はできないが、それによって生じた隙を大分は見逃してくれなかった。

 閉塞感がある内容ではないものの、なかなか好転しないまま45分が過ぎていった。ゴールに近付くことがほぼできないまま2点ビハインドで折り返す。

後半

 後半開始からウチは竜士→惇希。竜士とはタイプが異なる縦にボールを運べる惇希を入れて流れを変えようとする。
 開始直後から明らかにプレス強度を上げていた。CB2枚+ボールサイドSB+保田の4枚をウチのFW+SHの4枚で蓋をしに行く。スプリントしなければいけない距離は必然的に長くなるが、それでも辞さずにプレスを敢行。すると、前半はあまり見られなかった大分CB2枚のプレスに対する脆弱性が現れる。保田まで繋がるとボール奪取する確率は少なくなるが、CBが持っている際に詰めることで蹴り捨てさせる場面を増やした。両チームともにインテンシティが高まり、そのタイミングでややレフェリーがコントロールを失った感はあるが、前半と比べるとボールを動かすよりも球際をクローズアップする場面が増えていた。

 61分、大分は弓場→野村、藤本→梅崎の2枚替え。2点のリードを持っていることで柔軟な選手起用ができるのは間違いないが、ウチとすると散々藤本に手を焼いた試合だったので、このタイミングで下がることにより、益々攻撃的に仕掛けられる。
 ウチも62分、佐藤→北川。惇希をRSH、梨誉をLSHに移し、北川がゴールに近い位置でチャンスを窺う。

 64分、少しずつボールを運べるようになってきたウチがチャンスを得る。右サイド深い位置でのスローイン、岡本から惇希へのボールは掻っ攫われるが、すぐに惇希が野村に寄せてボールを奪いに行く。そのこぼれを北川が拾いワンタッチでクロスを入れると、香川の手に当たってPKを得る。
 キッカーはクロスを上げた北川。冷静に左隅に沈めて1点差。

 73分、大分は長沢→伊佐、渡邉→中川の2枚替え。より良い「無駄走り」ができる選手を投入し、ウチのビルドアップを少しでも規制しつつボールを持って押し込もうと試みる。

 74分、ウチが同点に追い付く決定機を迎える。自陣でボールを回収し、最終ラインでボールを回す。CMFの2枚の近くに大分の選手が4枚いる構図で縦が刺せない。自らは死んだような状態になっているアマが身振りでサイドに高い位置を取るように促す。中塩がボールを持ったところで平松が左に流れてきて上手くボールを引き出してフリーになる。そのまま敵陣に入り、追い縋る相手を吹っ飛ばしながら前に運び、サイドに張った梨誉へ。梨誉は右足に持ち替え、北川に鋭いクロスを入れる。北川は完璧な1stタッチで前を向き、そのまま左足でボレー。見事にミートしたシュートだったが、西川に阻まれる。
 中塩とSHの距離が遠くなるのはシーズン通して起こる事象であり、風間がそこを補完するのが通常の対処法なのだが、ここでは平松が低く落ちてきたのがとても効果的だった。この平松のライン間を取る立ち位置により、大分は簡単に潰すことができず、平松がそのまま運ぶスペースと時間を得た。梨誉から北川への速いクロスも良かったし、北川の1stタッチは永遠に見てられる。

 追いつこうとするウチは、平松→彰人、アマ→畑尾、梨誉→武と選手交代を行い、最後はスクランブルに近い陣形でゴールに迫る。ただ、徐々にオープンな展開となり、ウチのプレスを掻い潜られ、プロフェッショナルファウルで止める機会が数度。最終盤は大分も後ろの枚数を増やして対応してきたこともあり、ウチは押し込んでセットプレーを得ることも難しくなった。

 2023シーズン最後の試合は1-2で終了。

雑感

 千葉戦でも同様のことを感じたが、やはりやるべきことをやっても届かない部分がある。そしてその差はすぐには埋まらない。勿論、これまでに比べて今年の差を埋めるペースは明らかに早まっているが、それでも追い越すところには及ばない。

 ディフェンスはLSBとLSHとLIHが全員高い位置を取ることが、ウチの右片上がりと良い具合に噛み合ってしまった。高畑がほぼWBのように振る舞い、藤本と弓場と3人で3レーンを作った。ウチも佐藤と岡本で高いポジションを取ろうとして、ローテーションでIH化する分、ネガトラ時のスタートポジションが内側になってしまい、一番外側のレーンを大分に自由に使われた。大外は捨てるってのも選択肢にはなるが、厄介なことに同じ高さでハーフスペースにも走られているので、ウチはボールにアタックするポイントを失って前進を許した。
 後半に関してはそもそもパスの供給源を断つことに重きを置いたので、前で引っ掛ける場面が増えた。リスク負ってGKまで掛けた分、網からすり抜けられると即CBというまあまあスリリングな立ち位置ではあるが、ビハインドではそういう選択も必要。リスク面と体力面を考えるとこれを90分保つのは難しいと思うが、こうしたオプションを使えるようになると幅が広がる。

 オフェンスは、ラインブレイクの動きを繰り返して相手に意識させ、それによって下がった最終ラインのライン間で楔を受けるシーンが何度か見られた。惇希の投入によって縦への矢印が強くなったし、そういうカードがあるのは大きい。あとは、来シーズンはいよいよバイタルでのボールの動かし方に手を付けるのではないかとの期待を持っている。

 チームとしてはこれまでよりも飛躍し、自らの可能性を示すシーズンとなった。終盤にかけてPOという目標も夢物語ではないと感じさせた。最後は現状での最高到達点に辿り着いて飽和状態になったようにも思うが、まだまだ志半ば。ここからチームの課題を抽出し、クラブとしてどのように考えるのか。このまま上向きの成長曲線を描くことを当然誰しも期待するが、必ずしもうまくいくとは限らない。選手のプロテクトもそうだし、リーグ内でのスカウティングも進む。そうした包囲網を上回っていかなければならない。一度少し上の景色を見たことで勘違いするのではなく、あくまで成長の過程にあることを忘れてはならぬ。例え来シーズン苦しむことがあろうとも、目の前の出来事から目を背けずにいたい。

 これにて2023シーズンも終了。負けられないと気負って胃がキリキリしたりすることもなく、受け入れ難いジャッジに声を荒げることもなく、負けたことによる喪失感もない。ストレスから解放され、第三者として試合を眺める気楽で楽しい時期の到来。一方で、週末に楽しみのない惰性の日々を送ることとなる。どうせ定時になる度にHP開いてドキドキするのだろうが…。一先ずゆっくり休んで、2024シーズンに備えよう。

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