【Inside Story】コベルコ神戸スティーラーズ 普及・アカデミーコーチ 今村 順一
【コベルコ神戸スティーラーズ】
大好きなラグビーに携われるなら…。29歳で現役引退を決断し、チーム公式HP担当に
現在、SCIXラグビークラブやラグビーアカデミーで子たちを指導する今村氏はそう話し、笑顔を見せる。
京都市出身。現役時代のポジションはSH。実弟は、神戸製鋼コベルコスティーラーズ(当時)、キヤノンイーグルス(当時)を経て、現在、ディビジョン2の九州電力キューデンヴォルテクスでヘッドコーチを務める今村 友基氏だ。伏見工業高校時代は、兄と弟でハーフ団を組んだこともある。関東学院大学卒業後は、東日本社会人リーグの下部リーグにあたる関東社会人リーグの明治生命(当時)でプレーしていたが、「上のリーグでチャレンジしたい」という思いから2003-04シーズン、神戸製鋼コベルコスティーラーズへ。しかし、日本最高峰リーグであるトップリーグの壁は高く、出番に恵まれず2006-07シーズンをもってチームを退団することに。
「29歳とまだ若かったので現役でプレーし続けたいという気持ちがありました。スティーラーズでは不完全燃焼に終わり、当初は移籍を考えていました」
考えを一変させたのは、主務を務めていた福本 正幸氏(現チームディレクター)からチームスタッフとして残らないかという提案だった。
大好きなラグビーに携わることができるならとユニフォームを脱ぐ決断をし、2007-08シーズンからチーム公式HP担当として、練習レポートコーナーなどを任された。2シーズン、スタッフとしてチームを支えた後、2009年4月、故・平尾 誠二元GMが創設されたSCIX事務局へ異動。SCIXラグビークラブでコーチとして中高生たちの指導に当たることになった。
「指導者という道は考えたことがなかったのですが、SCIXラグビークラブで子どもたちを教えていく内にコーチングの奥深さや面白さに気づいていきました。SCIXへ異動していなかったら、現在のように指導者という立場でラグビーに携わることはなかったと思います」
赤いジャージを着て、公式戦に出場するという目標は叶えることができず、29歳でジャージを脱いだ。 【コベルコ神戸スティーラーズ】
故・平尾 誠二元GMの言葉がコーチングのモットーに
「平尾さんの言葉は、コーチングする上でモットーとなりました。その時から年齢は上がりましたけど、一緒にプレーすることは変わらずにやっています」
今村氏は指導するようになったタイミングも良かったと話す。スティーラーズのスタッフとして2シーズン、グラウンドに出て客観的に練習を見たことで、ラグビーの知識が上がった。その経験が、SCIXラグビークラブでのコーチングに活きたという。
今村氏は「現役時代よりもコーチをしてからの方が、ラグビーがうまくなっていると思いますね」と冗談めかして話す。もちろん、さまざまなコーチングの本も読んだ。
その上で、子どもたちと一緒に楽しくプレーしながら指導を進めた。
また、もともとは男子を指導していたが、2009年、オリンピック競技に7人制ラグビーが採用されることが決定し、“近畿から女子ラグビーを盛り上げよう”とSCIXに女子部を設立。加えて、SCIXと兵庫県高等学校体育連盟ラグビー専門部が共同で『SCIX近畿セブンズブロックアカデミー』を立ち上げ、日本代表を目指すために、セレクションで選ばれた選手も指導することになった。
「女子選手を指導するのは難しかったですね。練習の強度、接し方、言葉の言い回しも男子と変えないといけないですから」と当時を振り返るが、優しく温和な雰囲気の今村氏は、女子の指導者としてまさに適任だった。女子選手たちは今村氏を慕い、練習は時に厳しく、時に楽しく行われた。
当時の『SCIX女子部』の中には、現在、三重ホンダヒートでアナリストを務める竹内 佳乃さんや、昨年行われた女子ラグビーワールドカップに日本代表として出場した庵奥 里愛さんも。
「教え子が今でもラグビー界で活躍していることが嬉しいですね」と目をほそめる。
SCIX女子部設立当時は、指導法を模索したというが、優しい人柄もあり、女子選手から慕われる。 【コベルコ神戸スティーラーズ】
ラグビーが好きだから頑張れた。スタッフとして過ごした6シーズン
現在のラグビーセンターにあたるラグビー部支援室で、ファンクラブの運営や試合会場のチームブースで行うファンサービス企画の立案から実施、そして現在のコベルコ神戸スティーラーズフェスタの前身である「コベルコラグビーフェスティバル」においても中心メンバーとして取り組んだ。さらに、当時の選手として活躍していた佐藤 貴志氏(現在、関西大学ラグビー部監督)の熱い思いから神戸市の小学校でタグラグビー教室をはじめることになり、普及活動にも力を入れた。
チームを盛り上げたい。
ファンの方々に楽しんでもらいたい。
そして、ラグビー人口が増えるように。
そう願いながら、慌ただしい日々を送った。
シーズン中はなかなか難しかったというが、時間を捻出し、SCIXラグビークラブの練習に顔を出して女子を中心に指導を行っていた。 2016年からは県のラグビー協会から依頼を受けて、兵庫県女子代表の指導も行うようになり、国体にも出場。2017年の「えひめ国体」ではチームを4位入賞に導いた。
仕事のみならず、プライベートの時間もラグビー漬け。
なぜそこまで頑張れるのか。その答えはシンプルだ。
「ラグビーが好きだから」
当時のファンクラブ担当者にも助けられながら、2012年秋から2018-19シーズンまで全力で取り組んだ。
「2018-19シーズンにはスタッフとしてトップリーグ優勝を経験させてもらいましたし、イベント、普及、そして、女子の指導と、めちゃくちゃ充実した6シーズンでしたね」
2019年2月、ラグビー部支援室から異動となり神戸製鋼所名古屋支社へ。
社業に専念する中で、「ラグビーにもう一度関わりたい!」という気持ちが募った。単身赴任ということもあり、週末には京都の自宅へ戻り、愛娘が通うラグビースクールでお父さんコーチとして指導を手伝うことも。
SCIXラグビークラブとして単独チームで大会出場を目指す
冒頭の言葉通り、今村氏は、ラグビーやチームに携われることに喜びを感じながら活動にあたる。SCIXラグビークラブでは、以前と同じく女子中高生を指導する。当時と変わらず今村氏は女子たちから大人気だ。撮影に伺った時は、U18全国女子セブンズラグビーフットボール大会近畿ブロック予選に向けての練習の真っ只中だった。
和気藹々と練習が進められて楽しそうな雰囲気だが、参加人数が少ないことが気にかかる。
「SCIXラグビークラブ自体、人数が減ってきているんです。2009年から2012年まで僕がいた時は、男子の高校生はSCIXとして単独で15人制の大会に出場することができていたんですけど、今は人数が少なくて7人制でさえ単独チームをつくることができません。女子は、受け皿がなかったこともありSCIXに部員が集まったのだと思うのですが、今では京都成章高校や追手門学院高校など、近畿圏内の高校でも女子ラグビー部が創部されています。女子ラグビー界としては良い傾向にあるのですが、やっぱり兵庫県の女子ラグビーをもっと盛り上げていきたいという気持ちがあります。SCIXラグビークラブは、ラグビー経験の有無を問いません。SCIXのPRにも力を入れて、部員を増やしてSCIX単独チームで男子も女子も試合に出られるようにしたいですね」
実は、U18全国女子セブンズラグビーフットボール大会近畿ブロック予選も、高校生女子が8人ということもあり、京都にあるクラブチーム(京都ジョイナス)との合同チームで出場した。
目標は15人制で単独チームをつくれるくらい部員を増やすこと。その使命感に燃える今村氏。
ラグビーワールドカップ2023フランス大会でラグビーに興味を持ち、プレーしてみたいと思った方やお子さんに競技をさせてみたいと思った方も多いのではないだろうか。
SCIXラグビークラブは、男女問わず、中学、高校、大学生、社会人で、灘浜グラウンドに通える方なら誰でも参加可能だ。
今村氏とともに楕円球を追いかけてみてはいかがだろうか。
文/山本 暁子(チームライター)
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元気いっぱいなSCIXラグビークラブの女子選手たち。U18全国女子セブンズラグビーフットボール大会近畿予選は3位となり、全国大会へ。10月27日から熊谷ラグビー場で開催された本大会は全国の強豪相手に健闘したが残念ながら16位に。 【コベルコ神戸スティーラーズ】
12月9日(土)12時キックオフ
コベルコ神戸スティーラーズ VS 三重ホンダヒート
@ノエビアスタジアム神戸
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