稲見萌寧、涙の復活優勝で来季の選択肢拡大

チーム・協会

【Photo:Yoshimasa Nakano/Getty Images】

 全米女子プロゴルフ協会公式戦『TOTO ジャパンクラシック』(賞金総額200万ドル/優勝賞金30万ドル)大会最終日が11月5日、茨城県小美玉市・太平洋クラブ美野里コース(6,598ヤード/パー72)で行われた。大混戦の中、首位と1打差の単独3位でスタートした稲見萌寧が、通算22アンダーで今季初勝利、ツアー通算13勝目を飾った。1打差の通算21アンダー、2位タイには桑木志帆とペ ソンウ。
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 見事な逆転勝利で今季初優勝を飾った稲見萌寧。ウイニングパットを決めた後にバンザイポーズを見せ、大勢のギャラリーからの拍手にもこれ以上ない笑顔で答えた。ところが、表彰式が始まる前にテレビインタビューを受けたときだ。稲見自身にそのつもりはなかったにもかかわらず、両目から熱いものがあふれてくる。「話そうと思ったんですが、声が出ませんでした」。予想外の嗚咽はそれだけ大きなプレッシャーと戦い続けていた証明でもある。

 「私的にずっと持ち続けている目標があって、それは毎年1勝することなんです。でも、今年はその目標を達成できないんじゃないかと考えていただけに、今回勝てて安心感が込み上げてきました」。確かに、19年のセンチュリー21レディスでツアー初優勝を飾って以来、昨年まで毎年優勝を飾ってきた稲見。それがどれだけ大変なことか分かっているからこそ、残り4試合となった状況で5年連続のツアー優勝を飾った安堵感が稲見の感情を揺さぶったのだろう。

 実際、今季の稲見は開幕戦で2位タイに入り、3戦目でも3位タイと好調なスタートを切った。それが4月から6月半ばまでの9試合で予選通過がわずかに2試合という不調に陥る。その後、予選通過はするものの、優勝争いに加わるまでは至らなかった。その原因は度重なるスイング改造だ。さらに体調不良が続いたことも思うようなゴルフをできなかった要因としてあった。ただ、「このまま終わりたくない」という気持が稲見を支える。

 人一倍の練習量を誇っていたにもかかわらず、一時は練習をしないほうがいいのではないかとさえ思ったという。それでも、自分には練習しかないとボールを打ち続け、トレーニングにも励んできた稲見。聞けば、今年だけで4度もスイング改造を行ってきたというではないか。それがようやく実を結び始めたのがここ最近だった。

【Photo:Yoshimasa Nakano/Getty Images】

 今大会でもラウンド中に暇さえあれば、正しい動きを体に刻み込むかのようにシャドースイングを繰り返していた。決勝ラウンドに入るとその回数も減っていたが、打つ前のルーティーンとしてダウンスイングでの体の動かし方やクラブの軌道のチェックは欠かさず行った。地道な努力の甲斐あってか納得のいくショットを打てるようになった稲見。それを証明したのが、17番・パー5での2打目だ。

 先にホールアウトしていたペソンウに通算21アンダーで首位に並ばれて迎えたが、ここでバーディーを奪えば、大きなアドバンテージを得られる。ティーショットをフェアウェイに運び、ピンまでは残り197ヤード。ここで稲見は3Uか4Uかで悩む。単なる飛距離だけでなく、風やライを計算した結果、3Uを手にする。「今週はショットに自信を持てていたので、大きいクラブでのコントロールショットが上手くいくと思ったからです」。計算どおりにピン左手前9メートルに乗せた稲見。2パットでカップへ沈めて、価値あるバーディーを奪った。

 今大会はUSLPGAツアーの試合でもあるため、優勝した稲見には来季の同ツアー出場権が与えられる。「自分一人では考えられないので、チームの皆と相談して決めます」と即答は避けたが、来季に向けて選択肢が増えたことは確かだ。苦労して得たツアー通算13勝目だけに、来季もJLPGAツアーで戦うならば、この数字はまだまだ伸びていくに違いない。
(山西 英希)
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