川崎フロンターレが安定の強さを見せつけJ1で3連覇を達成

デロイト トーマツ グループ
チーム・協会

【©KAWASAKI FRONTALE】

2015年の立ち上げ以来、スポーツビジネスマーケットの拡大に寄与してきたデロイト トーマツ グループのスポーツビジネスグループがお届けするJリーグマネジメントカップ。Jリーグ所属チームが優勝をかけて競うのは、ビジネスマネジメント視点で設けられた4つのステージ「マーケティング」「経営効率」「経営戦略」「財務状況」の評価です。J1を制したのは3年続けて川崎フロンターレでした。
※当記事はJリーグ マネジメントカップ2022調査レポートに掲載した内容を一部改訂して転載しています。

Jリーグ マネジメントカップ2022のJ1優勝クラブは川崎フロンターレの3連覇

2位に11ポイント差を付けて3年連続4度目の優勝を飾った川崎Fは、マーケティング分野、経営戦略分野で1位、経営効率分野で2位タイ、財務状況分野で3位となり、特に集客率では全クラブで1位となる66.0%を記録しました。これが入場料収入を昨年の2倍以上に増加させBM面に大きく寄与しました。

【©2023. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】

平均入場者数・スタジアム集客率

コロナ禍を経たファン・サポーターのマインドチェンジや行動変容を受け止め、スタジアム来場者への新たなBM施策と、来場できないファン・サポーター向けのBM施策をバランス良く実施できたかどうかが、1st ステージのマーケティングでは問われました。

平均入場者数は前年比+7,026人(+111.7%)の13,318人で、増加率トップ3の浦和、G大阪、FC東京は、それぞれ+210.6%(+16,124人)、+200.2%(+10,655人)、+199.6%(+13,272人)でした。入場制限がシーズン開始時から撤廃され、徐々に各クラブが本来の集客力を発揮できるようになってきた一方で、コロナ禍前の2019年比では平均72.9%となっており、引き続き警戒感が強いファンも一定数いたことが推察されます。そんな中、唯一2019年より入場者数を増やした清水は、国立競技場で行われたクラブ創立30周年記念マッチの入場者数(56,131人)が平均を大きく押し上げています。

スタジアム集客率は全18クラブで前年比プラス、平均は前年比+20.1P(+89.8%)の42.4%となり、入場制限などの影響が残っていた昨シーズンから大幅に増加する結果でした。川崎Fだけは66.0%(+39.5P)と60%超となり、58.3%(+24.5P)の清水、55.4%(+27.5P)の柏など、ホームスタジアムの収容可能人数が20,000人前後の比較的コンパクトな5つのクラブが50%以上を記録し、ファン・サポーターのスタジアムへの回帰がうかがえます。今後はコロナ禍以前と同程度の平均60%程度に回復が期待されます。スタジアムに戻ってきたファン・サポーターを離さないようなBM施策が、より一層重要となりそうです。

【©2023. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】

客単価

平均客単価は前年比▲1,143円(▲22.2%)の4,011円でした。要因別では、チケット単価は▲142円(▲5.1%)、グッズ単価は▲1,001円(▲41.7%)となり、グッズ単価が約4割減少したことが客単価の減少に影響しています。背景として、J1の物販収入平均は+53百万円(+14.6%)増加した一方で、入場制限の緩和施策により総入場者数平均が+128,037人(+90.2%)と大幅に回復したことが挙げられます。

クラブ別では、入場者数の増加を背景として全18クラブ中14クラブが昨シーズンを下回り、昨シーズントップの川崎Fも大幅な入場者増に伴いグッズ単価の水準は大きく下げたもののチケット単価の減少幅はさほど大きくなく、全体ではコロナ禍前水準を大きく上回りました。

【©2023. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】

勝点1あたり入場料収入

2nd ステージの経営効率では、BMとFMの関係に焦点を当て、勝点1あたりのチーム人件費および入場料収入を競います。勝点1がいくらで売れたのかというクラブ側の視点と、勝点1をいくらで買ったのかというファン・サポーター側の視点があり、クラブ側がこのKPIをできるだけ高くしたいと考える一方、ファン・サポーター側はこのKPIをできるだけ低くしたいというトレードオフの関係を内包する指標といえます。

入場収入について見ると、平均は前年比+7.9百万円(+102.3%)の15.6百万円でした。入場制限のない運営が可能となったことで、コロナ禍前の2019年シーズンのJ1平均(20.6百万円)に近い水準まで回復しています。

トップは浦和で、前年比+22.1百万円(+221.8%)の32.0百万円でした。J1で平均入場者数が1位で、入場料収入が前年比+813百万円(+129.9%)であったことが要因と考えられます。FM面で勝点が63から45と大幅に減少したことも本KPIを押し上げる要因となっており、ファン・サポーターの観点からは課題の残る結果です。

また、本KPIの順位が下位となった広島、湘南は、それぞれ入場料収入を前年比+54.6%の405百万円、+61.6%の370百万円と増加した中で、勝点も49から55、37から41へと積み上げ、ファン・サポーター側から見ても応援するクラブが勝つことにより顧客満足度が上がっており、バランスの取れた経営が行われているといえます。

【©2023. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】

【©2023. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】

SNSフォロワー数・SNSフォロワー数増減率

クラブの資産をどこに割り当てるかが判断される3rd ステージの経営戦略では、社会的影響力への投資となるSNSへのリソースをどう割くかが指標となります。

フォロワー数の平均は前年比+79,579人(+19.9%)の479,881人でした。トップは140万人を突破したC大阪で、6シーズン連続での1位。2位の川崎Fは14万人以上伸ばし、100万人を突破した2つめのクラブとなり、堅調な成長を遂げています。

リーグ全体ではTikTokのフォロワー数増加が目立っており、川崎Fは約4.7万人、FC東京は3.2万人、横浜FMは約2.4万人を新規獲得しています。2023年1月までに横浜FM・湘南・清水・名古屋・福岡の5クラブが新たにアカウントを開設するなど、若年層への接点の拡大を狙うJ1各クラブのTikTokへの進出が加速しています。

【©2023. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】

フォロワー数増減率の平均は前年比▲1.8P(▲15.2%)の10.0%となり、昨シーズンより続いた増加傾向はやや鈍化しました。トップは26.0%の京都で、2位は18.2%の清水でしたが、いずれもフォロワー数合計が10~20万人台でJ1の中でも下位のためTikTokの開設や既存SNSアカウントでの僅かな伸びでも増減率に与える影響が大きかったといえます。

総フォロワー数が100万人を超えた川崎Fは増加率でも4位を記録と好調でした。特に影響が大きかったのはクラブOBの三笘選手、田中碧選手が2022年W杯で日本のベスト16進出に大きく貢献し、前所属先としてクラブが大きな注目を集めたことが挙げられます。

売上高・自己資本比率

Jリーグのクラブライセンス制度においてクラブの「財務基準」を問う4th ステージの財務状況では、コロナ禍による経営環境の変化がクラブ経営に及ぼした影響が表れました。

売上高の平均は、前年比+705百万円(+16.9%)の4,864百万円となり、昨シーズンに引き続き増収トレンドでした。入場制限の緩和に伴い、入場料収入が+305百万円(+76.5%)、物販収入が+53百万円(+14.6%)の増収となっています。

1位の浦和は、入場料収入が前年比+813百万円(+129.9%)、物販収入が+278百万円(+33.1%)と大きく増加したことに加え、スポンサー収入はクラブとして過去最大の規模となっています。積極的な新規パートナー企業の獲得に向けた営業活動やグッズ事業の強化など、バランスの取れたBM面の取り組みの成果でしょう。川崎Fは過去最高の売上高を更新した昨年に比べて▲3百万円とわずかに及ばなかったものの、2位の売上高となりました。入場料収入やスポンサー収入が増収となった一方で、移籍金や賞金で構成されるその他収入が▲638百万円と大幅に減少したことが要因です。

【©2023. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】

自己資本比率の平均は、前年比+2.2P(+17.5.%)の14.5%でした。トップはFC東京の79.4%、最下位はC大阪の▲82.6%となっています。なお、利益剰余金がプラスのクラブは6クラブで、マイナスのクラブは12クラブあります。

債務超過となった4クラブのうち鳥栖は増資による当期利益の発生により、本KPIの値が大きく改善しました。

いずれのクラブも2022年のクラブライセンス判定の猶予期間と2023年の特例措置により、ライセンスは維持されていますが、その先は増資などで状況が改善しなければライセンス取消しとなる可能性があるため、収益の確保と資本の増強は待ったなしの状況となっています。

【©2023. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】

次回はJ2の結果を紹介します。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

デロイト トーマツ グループは、財務会計、戦略、マーケティング、業務改革など、あらゆる分野のプロフェッショナルを擁し、スポーツビジネス領域におけるグローバルでの豊富な知見を活かしながら、全面的に事業支援を行う体制を整えています。またコンサルティング事業の他、国内外のスポーツ関連メディアへの記事寄稿などを通し、スポーツ業界全体への貢献も積極的に行っています。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント