「若者の青春」をJリーグクラブが取り戻す

モンテディオ山形
チーム・協会

「若者の青春」をJリーグクラブが取り戻す

青春時代の思い出ほど、何年経っても鮮明に思い出すことができ、酒の肴になるものはない。筆者だけでなく、多くの人が同じ感覚を持っているだろう。
しかし、社会を一変させた新型コロナウイルスによって、いまの若い世代の青春は奪われてしまった。

モンテディオ山形が2023年1月にスタートさせた『U-23マーケティング部』は、23歳以下の学生マーケティング部である。マーケティングのスキルを学ぶとともに、山形における地域課題、社会課題解決に向けて知恵を絞り、新たなファン獲得のために奔走するその組織は、クラブにとって単に“若い力を取り入れる”目的だけでなく、コロナによって機会を失った若者たちに、本気になれる機会を与える取り組みとしての性格も強い。

そんなU-23マーケティング部の一つの集大成として、10/8(日)NDソフトスタジアム山形でのホームゲーム『青春スタジアム produced by U-23』が行われる。U-23マーケティング部プロデュースデーのこの試合、23歳以下の若者たちは、どんな“青春”を作り出すのか。「何をするにも“制限”という言葉がついてくる」時代に学生時代を過ごしてきたメンバーによるこの活動は、どのように生まれ、どんな道のりをたどってきたのかを記していく。

若い世代が山形を動かす 【©MONTEDIO YAMAGATA】

地方都市における若年層の人口流出は、山形県のみならず東北全県で課題になっている。東北地方は1%を超える人口減少率の県が多く、政令指定都市である仙台市を有する宮城県ですらその減少率は全国平均を上回る。

モンテディオ山形の代表取締役である相田健太郎社長は、こうした課題に対し「若い方々が何かを実現したり、自分たちから考えてやりたいことをやってみる場が想像以上に少ないと感じていた」と若者が活躍する“場”の少なさを1つの要因として挙げる。「Jクラブである私たちがそうした“場”をつくることで地域が元気になるだけでなく、年齢の若い人が山形県という土地に対して可能性を見出してくれた。、という想いでスタートしました。」と社長が語るクラブは、この活動にかなりの本気度をもって取り組んでいる。

活動の本気度は、特別講演の講師陣からもうかがえる。SEVENRICH GROUP の横江氏に始まり、ヌードルツアーズを展開する株式会社丸山製麺の丸山氏など、全国で活躍する講師による講演は大人のビジネスパーソンもうらやむほどの豪華さ。株式会社オースタンスCEO 菊川涼人氏の講演では若者が触れる機会の少ないシニア層向けのマーケティングを学び、株式会社チケットティップス代表の吉川慎二氏の講演ではスポーツクラブの実務に近いチケットマーケティングを学ぶなど、基礎知識だけでなく、さまざまな視点から“マーケティング”を捉えられるようにクラブ側も工夫している。そうした生きた知識を得ながら、U-23マーケティング部員たちは自らの目で社会の課題を認識し、世の中を動かそうと、毎週の定例会議以外の時間もコミュニケーションを取りながら主体的に活動を進めてきている。

参加している40名のメンバーは、山形県在住のメンバーが40%で、半数以上は県外からオンラインで参加している。また、大学生だけでなく高校生や山形にはゆかりがない学生、サッカーにはあまり興味のない学生など、幅広い学生が意欲をもって参加している。「このまま大学生を終えたくない」「学生生活で後悔したくない」という想いをもって参加の扉をたたいた学生など、目的もさまざま。
「学校イベントやインターハイがなくなってしまった。みんなと熱中して、何かを成し遂げたいという想いは強くある。」プロモーションムービーでそう語る学生の姿に、心打たれる人も多いことだろう。こうした多種多様な学生が、『為せば成る』というスローガンのもと、仲間とともに濃密な時間を過ごしながら、「モンテディオ山形のサポーターを一人でも増やす」ために日々頭をフル回転させ、アクションしてきた。

今シーズン、U-23マーケティング部として実際にイベント企画にも多く取り組んできている。マーケティングリサーチを目的にサポーターとの議論を交わすサポーターミーティング、ホームゲームでのU-23企画イベントブースの出店、チケット販売会の開催など、多くのことにチャレンジしてきた。5/12 秋田戦での『利き米チャレンジ』、9/16 岡山戦での『ワイン飲み比べ』企画など、自分たちが考えた内容でファン、サポーターに直接アプローチする機会も多くあった。もちろん、考えたことがすべてうまくいくわけではなく、失敗もあるはずだ。考えに考え抜いたアイデアの中で、実行に至らなかった企画も多くあるだろう。だが、日々前向きに、アクションすることを止めないメンバーを見ていると、失敗には原因があり、その改善を考え、再びアクションすることで自分たちが成長できるんだという想いがメンバーたちの原動力にもなっているように映る。

この活動では、そうした学生たちを支えているクラブの存在も見逃せない。活動を主管するのはマーケティングの部署になるが、定例のU-23マーケティング部活動の場には、スポンサー獲得をする営業部や試合の現場を見る強化部など、クラブ内の多くの部署の方々が顔を出す。「若者を育てるためにクラブ全体で本気になろう」というだけではなかなかこうした状況は生まれない。そうした想いと同時に、「この組織がなにか自分の役割にプラスを生み出すのではないか」という期待感が溢れているのだろう。
また、『若者の教育の場』に対し、スポンサーする企業の存在も欠かせない。モンテディオ山形では、2022シーズンに『高校生マーケティング探求』『ガールズデー女子大生プロジェクト』において多くの学生を巻き込んできた。ただホームゲームでのイベントアイデアを出させるような形ではなく、本気で考えることを促し、実行までのプロセスを共有することで、イベントの成功はもちろんだが、それぞれに参加したメンバーの成長にコミットしてきた。そのクラブとしての姿勢が、「山形の若者を成長させる場」としてのモンテディオ山形への企業からの評価にもつながっている。
実際、U-23マーケティング部には昨シーズンのプロジェクトから続けて参加しているメンバーや、営業インターン経験者も多くいる。モンテディオ山形で“本気”を体験した若者が、「ここで成長できる」という実感を持つことができている証拠ではないだろうか。


10/8(日)開催の栃木戦は、U-23マーケティング部の集大成。『青春スタジアム』と銘打たれたホームゲームには、多くの趣向を凝らした企画が展開される。

「私たちの集大成は、真っ青なスタジアムで、最高の青春を」

U-23マーケティング部に参加する高校生・大学生の多くが制限されてきた青春。それだけでなく、どの世代も分け隔てなく、モンテディオ山形の試合に訪れるすべての人に青春を感じてもらいたい。そんな想いが詰まったコンセプトとともに、イベントや特典付きのチケットなど、さまざまな工夫がなされている。

豪華な景品が待っている“超縁日”では、通常のホームゲームでも行われている縁日企画をアップデート。景品をゲットするだけでなく、激ムズチャレンジと題される難易度の高いアトラクションに挑戦することも楽しみの1つに。

子どもたちだけでなく、大人だって青春を感じられる機会を!と企画された“大人の青春大運動会”では、リレーの決勝がハーフタイムに行われる。「スタジアムを走りたい!」と血が騒ぎ、事前に練習を重ねている大人も多いのではないだろうか。

50歳以上向けのイケおじ・イケねえ企画では、体力測定などのイベントだけでなく、グッズ&ドリンク付きのチケットも販売。まさにスポーツチームのマーケティングを体現するような企画になっている。

さまざまな世代が集まるJリーグのスタジアム。世代を超えて「青春」を共有できる空間が今まであっただろうか。
「どんな人だって、青春を感じる瞬間がある。青春に年齢は関係ない。人生は青春だ。」
U-23マーケティング部が発するメッセージを、是非多くの人がスタジアムに感じに行ってほしい。

U-23マーケティング部のメンバーにとっては、どれだけの人がスタジアムを訪れ、自分たちの考えた企画で楽しんでくれるのか、ワクワクと不安で胸がいっぱいだろう。思った通りの結果になるかはわからない。それでも、企画側も参加者側も、U-23マーケティング部が積み上げてきたプロセスにも青春を感じながら、シーズンのクライマックスに向けた戦いを楽しんでほしい。

(文・モンテディオ山形オフィシャルライター)
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著者プロフィール

NEC山形のサッカー同好会として1984年に発足。1996年にチーム名をモンテディオ山形と改称し、1999年にJリーグに加盟した。チーム名はイタリア語の「MONTE(山)」と、「DIO(神)」を組み合わせた造語で、「山の神」を意味しており、拠点とする山形県の霊峰出羽三山(月山、湯殿山、羽黒山)と、頂点を目指すチームを表している。エンブレムはクラブスローガン“YAMAGATA I CHIGAN”に込められた結束の想いを「雪の結晶」のモチーフで表現。ホームタウンは山形県35市町村。ホームスタジアムはNDソフトスタジアム山形。

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