私のミッション・ビジョン・バリュー2023年第2回 鵜木郁哉選手「人とのご縁を大切にする」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

2023年も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2023年第2回は鵜木郁哉選手です。

(取材・構成 佐藤拓也)

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Q.ミッション・ビジョン・バリューを作成するために、どのぐらい面談を行いましたか?
「5~6回ぐらい行いましたね」

Q.自分の過去や内面を第三者に話す経験は今までありましたか?
「自分の思っていることや大切にしていることを言語化することは今までありませんでした。1on1で話しながら、自分が考えていることや思っていることをどんどん言葉にすることができました。自分にとってすごくいい機会になったと思っています」

Q.自分を見つめ直すことはすごく大切なことですよね。
「1人では難しいですから、こういう機会を与えてくれたことに感謝しています。今年、面談を行ったことによって、目標やプレーする意義を言語化することができました。ゴールが見えているからこそ、やるべきことも明確になりました。自分にとってすごく貴重な経験となったと感じています」

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Q.まず、ミッションについて話を聞かせてください。「全ての関わる人にプレーやオブザピッチの活動を通じて、感謝の気持ち表現し、心の底から人を笑顔にすること」。この言葉を選んだ理由は?
「自分が関わる人に感謝の気持ちを持っています。サッカー選手として、結果で感謝の気持ちを伝えることが大事ですけど、オフザピッチの活動も大切だと思っています。自分は積極的にオフザピッチの活動に参加したいですし、ファン・サポーター・スポンサーの方などに対して、そういう場で直接感謝の気持ちを言葉で伝えたいんです。そういう意味で、『感謝の気持ちを表現』という言葉を選びました。そして、『心の底から人を笑顔にする』については、大人になると、心の底から笑うことって減りますよね。いろんな感情や人間関係などが出てきますし、純粋な気持ちで楽しむことや笑顔になることは少なくなっているように感じています。それでも、自分は子供の時のように笑っていたいし、周りの人にも笑っていてもらいたい。自分のプレーで人を笑顔にさせることができると思っていますし、オフザピッチでもできると思っています。だからこそ、この言葉が自分のミッションだと思って選びました」

Q.本当にオフザピッチの活動を積極的に行っていますよね。水戸に来る前から行っていたのですか?
「柏時代は学校訪問やスクール訪問といった活動をしていましたし、個人的に小学生の頃に入っていた少年団に足を運ぶこともありました。水戸に来る前からオフザピッチの活動には興味を持っていました。水戸ではそういう機会をたくさんいただいているので、積極的に顔を出させてもらっています」

Q.シーズンオフでも茨城の観光地を巡って、SNSなどで発信していましたね。
「自分が足を運んだ場所でいろんな人と会って話をすると、その方々の思いとか、ホーリーホックに対する考え方を聞くことができるんです。本当に人それぞれ、いろんなことを思っていてくれるんです。それを知ることができるのは本当に自分にとって大きい。たとえば、大洗町に行った時には触れ合った地域の方が、その後、試合に来てくれましたし、コラボ丼も作ってくれて、スタジアムで販売したんです。いろんな場所に行って、いろんな人と交流して、いろんな思いを知ることが自分にとっての刺激となっています。いろんなことをいろんな人から学ばせてもらっています」

Q.地域活動というより、鵜木選手の意志でその地域に行くんですね。
「そうなんです。『行きたい』と思って、行っているんです。そこでいい人と巡り合えるんです」

Q.今季は北茨城市のホームタウンPR大使として活動していますが、北茨城市はいかがですか?
「五浦観光ホテルや、あんこうで有名なまるみつ旅館にも宿泊しました。あとはグランピングビレッジにも行きました。自治体の方が自分を指名してくれたから、その市町村のPR大使になれたので、まずは北茨城市のことを知りたいと思って行きましたし、行ったら行ったで、いい人やいい場所と出会うことができました。本当に茨城はいいですよね~」

Q.茨城県出身の人より、茨城の良さを知っているかもしれませんね。
「水戸に来る時、茨城のことも水戸のことも何も知らなかったんですよ。でも、いろんな場所に行って、茨城にはまっちゃいました」

Q.足を運ぶことによって、発見があり、いろんな人とつながりができるんですね。
「興味を持った場所に行くことは自分のスタンスなんです。サッカー選手はサッカーに集中することも大事だと思います。でも、自分みたいに積極的にオフザピッチで活動しているからといって、サッカーに集中していないわけではありません。自分の価値観だけでなく、新しい価値観を見つけに行く作業が大切だと水戸に来てさらに思うようになりました」

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Q.次はビジョンについて聞かせてください。「誰もが夢を持って行動し自分が納得するまでチャレンジできる社会」。どんな思いでこの言葉を選んだのでしょうか?
「自分は水戸市のある学童に月に1回ぐらい行って、子供たちと一緒に遊んでいます。そこで、コロナ禍でやりたいことができなかったり、チャレンジできなかったり、やりたいことが見つからなかったり、夢を持てない子が多いことを知りました。夢を持つことは簡単じゃない。だからこそ、誰もが夢を持って行動をしてほしいし、夢を持つ機会を作ってあげたい。そのためにも、子どもたちに夢を見させてあげることも大事だと思います。かつ、チャレンジできる機会を作ってあげたい。納得できるまでチャレンジできることって、家庭の環境などで差があると思う。その差をなくしたいと思って、このビジョンにしました。もっと自分が活躍することによって、サッカーを広めて、多くの子どもと関わる機会を増やしたいと思いますね」

Q.子供と接して、思いを知ることが第一歩ですね。
「たくさん接して思いを引き出してあげることが大切だと思っています。特に口数の少ない子から引き出してあげたい。自分も小学生の頃に障がい者バスケの選手が来てくれて嬉しかった記憶が残っています。そういう立場になりたい」

Q.鵜木選手自身は子どもの頃からずっとチャレンジをしてきたんですね。
「してきました。僕にとってはかつて清水や柏などでプレーした村田和哉さんとの出会いが大きかった。自分が納得するまでチャレンジする考え方を身につけさせてくれたのも村田さんなんです」

Q.村田さんとはどんな関係なんでしょうか?
「小学生の頃、バルセロナキャンプに参加したことがあったんです。そこでMVPに選ばれて、スペインに行ったんです。サバデルというクラブの練習に参加して、その街のホテルに泊まっていたら、食事会場に日本人がいたんですよ。その人が村田さんだったんです。そこではじめて会って、村田選手が僕の部屋に来てくれて、連絡先を教えてくれたんです。その後、村田さんは清水に加入してから食事に行くなど交流をさせてもらいました。僕が柏U-18に在籍していた時に、柏に移籍してきたんです。自分も2種登録されて、一緒にプレーしたこともありました。自分が叶えたい目標を叶えた人が身近にいたことは自分にとってすごく大きかった。だから、そういう関係を子どもたちと作っていきたいんです。別にサッカー選手じゃなくてもいいんです。夢を持つ子供たちに希望を与えられるような存在になりたいと思っています」

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Q.次はバリューについて聞かせてください。一つ目は「嫌なことに目を逸らさない」。
「嫌なことから目を逸らたら成長はないし、何も生まれない。そういう意味でこの言葉を選びました」

Q.それは子供の頃から意識していたんでしょうか?
「そうですね。もちろん、好きなことをやりたいとは思ってしまいますし、好きなことを伸ばそうとしてきました。逆に嫌なことが好きなことになれば、可能性や未来は広がると子供の頃から意識していました」

Q.現在の『嫌なこと』とは何でしょうか?
「課題ですね。守備は嫌ですし、攻撃だけしたいですけど、守備にもしっかり向き合うようにしています」

Q.次は「1日1日を全力で生きる」
「明日何が起こるか分からないから、1日1日を大切にしなければいけないと思っています。毎日上積みしていかないと、成長はできない。今までも毎日目標を持って取り組んできました。どんな状況でも、どんな感情でも、練習で出し切ることもずっと意識してきたことなので、この言葉にしました」

Q.3つ目は「人の話を聴く」
「元々僕は自己中心的なタイプで自分の世界に入ってしまうタイプだったんですけど、中学時代、自分だけの意見を通そうとしてうまくいかない時期もありました。そこで村田さんとの出会いもあり、指導者や親や先輩との関わりもあって、自分の考え方だけでは限界があることに気づいたんです。それから人の話を聴くようにしたんです。いろんな考え方を知ることができましたし、自分とは違う角度の意見を聞いて視野が広がりました。それ以降、人の話を聴くことを大切にしていますし、人の話を聴いているからこそ、成長できていると感じています。特に水戸に来てからは、スタッフのみなさんがいろんな話をしてくれるので、すごく成長できている実感があるんです。昨年から今年にかけて結果を残せるようになったのは、人の話を聴いているからだと思っています」

Q.最後は「俯瞰して自分をみる」。
「常に自分を客観視することは大事だと思います。特にうまくいかない時に俯瞰して見ることによって、うまくいかない原因が分かるんです。この感覚を言語化することは難しいんですけど、大切なことだと思っています。自分中心ではなく、チームの中の自分という捉え方をするようにしています」

Q.今シーズン、鵜木選手は先発出場が増えましたが、ベンチから外れることもありました。ただ、ベンチから外れたり、メンバーから外れたりするたびに強くなって戻ってきましたね。
「もちろん、メンバーから外されたら、悔しい気持ちはあります。でも、その思いが強さになっていった。メンバー外の練習で自分の弱さから目を逸らさなかったですし、毎日全力で取り組んできました。次の週の練習ではレギュラー組よりいいパフォーマンスや熱いプレーを見せることを意識しました。そこの気持ちが大きかったですね。あとは、メンバー外になった時、スタジアムで応援してくれる人たちの声を直接聞くことができました。その思いを知るたびに強くなっていった気がします。ファンの方の一言が僕を変えてくれるんです」

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Q.スローガンは「人とのご縁を大切にする」。この言葉の思いは?
「人と人の関りはすごく大切だと思います。人との出会いで自分は成長してきましたし、いろんな考え方を知ることができました。そして、頑張る理由を見つけることができました。試合で活躍するのは、自分一人の力ではありません。サッカー選手としても、人としても成長するために大事なものは人との縁だと感じています」

Q.サッカーはチームスポーツです。周りとの関係性を築けないと、どんなに高い技術を持っていても、いいパフォーマンスを見せることはできません。
「サッカーがどんなにうまくても、周りとの関係を築けなかったら、うまくいかないし、続かないと思うんです。人間性は大切な要素だと思います」

Q.「縁」が大きくなればなるほど、鵜木選手の力も大きくなっていくんでしょうね。
「そう思います。関わってくれている人と一緒に歩んでいきたいという思いが強い。そうすることによって、僕の活躍をより喜んでくれると思うんです。そういう幸せな空間を作りたいんです。ともに大きな喜びや幸せを感じたいと思います」
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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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