岩井明愛「考えることをやめた」2勝目へ単独首位発進
【Photo:Atsushi Tomura/Getty Images】
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《グリーン=スティンプ:10フィート コンパクション:22mm》
圧巻は12番パー5だった。フェアウェイから、いまや岩井明愛の代名詞となっている「直ドラ」を振るうと、ボールは270ヤード先のピンへ向かって真っすぐ伸び、花道で跳ねて見事ツーオンに成功した。グリーン奥に切られたカップまではまだ約6メートルの距離があったが、パッティングもラインに乗り、約1.5メートルの位置まで寄った。
この12番を含め、9番から13番まで怒涛の5連続バーディー。4-6メートルのパッティングが面白いように決まり、最終的に18ホールで9バーディーを奪取した。「これだけ入ってくれたら楽ですね」と口元が綻ぶ。「パッティングの時にあれこれ考えなくても、リラックスした状態で、距離や強さのイメージがさっと湧く。ニチレイレディス(6月16-18日)の第2日の感覚に似ている気がします」と、10バーディー・ノーボギーで自己ベストの62をマークしたラウンドになぞらえた。それほど勢いに乗っている。
今年4月のKKT杯バンテリンレディスで念願のJLPGAツアー初勝利を挙げ、その後も抜群の安定感を誇っているが、ゴルフ界のジンクスで「初勝利よりも難しい」と言われる2勝目がなかなか手に入らない。2位(タイを含む)は5度を数え、3度戦ったプレーオフは、双子の妹の千怜に優勝カップを譲ったRKB×三井松島レディスをはじめ、全て敗退している。
だからこそ、5位タイに入った前週の日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯の頃から、「優勝」の2文字を頭の中から消去している。「2つ目を勝ちたいという気持ちが強すぎる気がしたので、それをやめてみようと思いました。優勝のことは全く考えていないですし、多分この先も考えることはないでしょう。考えてしまうと体が動かなくなってしまうので、自分のゴルフに集中しようと思います」と説明する。
プロ野球の阪神タイガースが、長いシーズンを通してチームぐるみで「優勝」という言葉を封印し、「アレ」と表現し続けて、とうとう14日にリーグ優勝を果たしたのと似た感覚かもしれない。
今季は前週終了時点で、メルセデス・ランキング3位をはじめ、平均ストローク(70.2104)2位、年間トップ10回数(13回)2位、パーオン率(74.8344%)1位など素晴らしい数字が並んでいるが、そういったスタッツも「気にしていないですし、チェックしていません」と言い切る。
もちろん、ことさら考えないようにしているのは、何よりも強く求めている裏返しであることは間違いない。「メンタル面が一番大事だと思います。周りを気にせずに回ることができれば、いい結果はついてくると思っていますし、その自信はあります」と言葉に力を込めた。21歳の繊細な心をコントロールしながら、さりげなく栄冠に近づいていく。
(JLPGAオフィシャルライター・宮脇 廣久)
【Photo:Atsushi Tomura/Getty Images】
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