『"動かす"事でスコアを動かす』 2023.#24 アビスパ福岡×アルビレックス新潟
スタメン
鈴木
三戸 長倉 長谷川
島田 秋山
新井 渡邊 トーマス 藤原
小島
山岸 ルキアン
金森 佐藤
前 井手口
前嶋 奈良 グローリ 湯澤
村上
前半
ゲームプラン
・非保持下の振る舞いだけを踏まえるとJ1ではセレッソ大阪が同系色のチーム。でも名前にそぐわず博多の漢達は桜色より積極的ではなく、ミドルサードで陣形をセットしてから新潟を監視するように待ち構えてきた。
長谷部監督:(守るときに)セットする形が多く、パスを何本もつながれて、つながせていたというよりはつながれて、なかなか自分たちでスイッチを入れるような形、プレスを発動することができなかったことが良くなかった。
本来はプレスに行くプランだったが上手くいかったようだ。
・これに対して新潟は配置的優位を活かしたボール循環からブロック内に綻びを見出して前進→崩しに移行したい。湘南戦のような前進段階でのロスト(https://www.youtube.com/watch?v=qWD6CS-u6MI&t=93s)はNG、確実に相手を動かしながらスペースを突いていく。
--前半から構えて守る相手に対してどう挑んでいくプランだったのでしょうか。
松橋監督:守備が素晴らしいチームですので、手数をかけて行くということと、守備の対応をさせないくらいにボールをどんどん動かして、ただ速いだけではなくて緩急をうまく使いながら、ところどころで相手のスイッチが入った瞬間にその矢印を折るような進入の仕方というのは少し意識して入りました。
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新潟の前進
・福岡は2topが新潟CBを監視。小島には無理に追わず、渡邊-舞行龍が務めるCBコンビが選ぶパスコースを限定するところからスタート。両SHの金森-佐藤はハーフスペースと大外の中間に立ちながらボールの出所にアタック。CMFもボール付近にスライドして密度を高めてくる。
・となると相手SH周辺に前進の起点を確保できる。金森-佐藤は人ではなく『どちらも見れるように』立ち位置をとるので、新潟からするとSH周辺の相選手が確実にボールを引き出せる。
・ならばその引き出し方を工夫したいよね、というのがこの試合における一つのテーマに。
・新潟はSBが大外を、WGがハーフスペース(福岡SH-CMFの間)を担当。福岡SHの両脇に人が居るので『どちらを見る?』を突き付けられる。
・その上でCMF秋山がビルドアップを補助。福岡FWの脇に降りてボールを引き出す事で相手SHを迷わせる。その上で大外か内側かを選び、適切な方へボールを送る事で相手を動かした状態による前進に成功。
・送った先では時間が与えられており、余裕を持った状態でプレー選択が可能になる。
運んでくれ、泰基
・が、この試合の渡邊によるボール保持はイマイチであった。ここでいう『ボール保持』とはオンザボールのレベルとかではなくその選択にある。
・前方にスペースを残す状態が多かった渡邊だが、そのスペースをなぞって運ぶような事はせず、受けた場所から大外の新井やリンクしようと降りてくる三戸に渡す。
・11:45~とか象徴的
・しかし、前者では距離が遠いパス故に相手SHを動かしていない状態なので受けてもSHがすぐ寄せに来れる。後者では中盤のラインより手前で受ける(=ゴールから遠ざかる&背を向ける状態)なので効果的な位置でのプレーをさせられず。これだと両者とも相手に影響を与えるのは難しいため、渡した先で何かを起こすのは難しい。
狙いを完遂、そして先制
・もちろん良い点もピックアップしたい。渡邊の良さは無理に前に出すような事をせず、状況をみながらやり直す選択肢を常に持っている点にある。松橋監督の試合後コメントにもあったように、ボールをあらゆる方向に循環させながらスライドの隙をつきたい新潟。
・厳しいなら後方をみてやり直す。プレスの矢印を折って次にボールと時間を送る。この繰り返しでゲームを落ち着いてコントロール。ゲームプランを完遂した。
・序盤は福岡が慎重だった事もあり、ビルドアップからじわじわと相手を押し込んでホームチームを相手陣に釘付けにする事に成功。そこでも無理ならチェンジサイドを発動して福岡のブロックを引き延ばす事で中央に緩みを見出したり、そのまま大外で崩しながらBox内にチャンスボールを送り込んだ。
・⇩のシーンでは5レーンを存分に活用しながら福岡の手が届かないエリアをアタック。整備されたゾーンディフェンス相手だと急激にポジショナルな崩しを意識し始める新潟。面子的にもその手法の方が可能性を感じるので、『WG』をちゃんと置いて各エリアの相互作用による恩恵が回ってくる構造を作って欲しい。その上で中央での攻略がより活きてくるのだ。
・新井-外に流れた長倉-加勢した島田と3人称の関係が出来上がり、各々が旋回する中でポケット侵入を試みる。そのこぼれ球を拾った島田のグラウンダークロス→長谷川!
・記録上はオウンゴールとなったが『長谷川のゴールです』という松橋監督のコメントはまさにその通り。Box内で強さ,入っていける嗅覚を発揮する選手が少ないだけに、得点可能性を認知する彼の特徴は現有スカッドにおいてとても貴重。まだまだ向上の余地を残す『WG長谷川』だが、自身の価値をしっかり示してくれた。
・伊藤涼太郎移籍後のチームにおいて再確認された一つの狙いが功を奏した。
優位に立ち続ける新潟
・福岡は持たされると弱い側面があるだけに、こうなると展開的に有利なのは圧倒的に新潟。SBが大外高い位置、SHが内側に絞りながら2topを経由した長いボールを起点に攻める福岡だが、こちらもゾーンディフェンスを基調とする新潟のブロックに苦戦。
・サイド→中央に侵入しての1タッチ、或いは2topに投げたロングボールからルキアン-山岸の関係性によるシュートくらいしか危ない場面がなかった。
・実は整ったゾーンディフェンスを誇る新潟。チャレンジとスライドを繰り返しながら福岡を外に外に追いやっていく。そのような守り方の中で活きるのがCMF島田。待ち構えて奪う、比較的可動範囲の少ない守備方法では中央に陣取る彼の存在が大きい。無闇に釣られず中央で目の前の敵を確実に潰してくれるので、舞行龍がエリアを放棄して思わず迎撃する…とかよくあるシーンは少なかったように思う。
・それでもルキアンを活かしたロングカウンターや陣地回復にはやや手を焼いていた。2021アウェイ磐田戦で好き放題やられていた記憶が若干蘇ってしまった。。
・新潟は持てば福岡を動かしながら隙を伺う、その中で安定した非保持からショートカウンター⇩を繰り出したりと各局面で優位に。スコアの優位性をそのままピッチに反映させた試合展開を見せた。整った状態を維持すると各局面の移行もスムーズ。それも攻守にポジショナルを意識する両チームがあってこそ。新潟としてはこういった相手がもう少し増えてくれればありがたいのだが…。
後半
・開始早々に決定機。三戸が相手SBを釣りだしてハーフスペースを突いた鈴木、引き付けて長倉の反転から惜しいショット。長倉のしなやかなターンとコースを狙った華麗な弾道に注目が集まるが、意図のあるポジショニングと『1人で2人を引き付けて次の味方を楽にする』ボールプレー。ポジショナルなアタッキングをチーム全体で実行した中でのチャンスであった。お見事。
変化する両者
・前半の福岡はミドルプレスが中心。ゾーン2以降の前進を許さない構えを示してきたが、残り45分では小島から開始するゾーン1下でのビルドアップから阻害を狙う。
・前半では井手口が人(=ピポーテに位置する島田)に食いついて自軍アンカー脇から鈴木,長倉に引き出されて前進を許していた。後半は明確に渡邊-舞行龍-島田にそれぞれ監視員をつけて、それにより生まれるギャップには両SHが気持ち内寄りで牽制。新潟のボールルートを明確に外へ外へ追いやる。
・4-4-2でミドルプレス~ブロックを徹底する新潟相手にボール保持では3-2-5気味に位置をとって広く、相手が届かないエリアを作るように攻める福岡。どちらかのSBが後方に留まり3枚を形成。新潟2topに対して数的優位を作った所からルキアン/大外に張ったSHへ渡すという仕組み。
・例えば後者ではアーリークロスにつながるなど、どちらへ渡しても簡潔にBox内へ到達できるので望み通りと言われれば望み通り。
・新潟のスカッドでそのような正攻法を試行したらまあ上手くいかないだろう。それでも福岡には舞行龍,更に言うと渡邊すら手を焼いたルキアンがいる。それにロングセカンドを拾うべくSH,山岸が集結してくる。そうなると何気ないボールでも全然チャンスに繋がり得るのだ。
WGの話
・少しづつ流れが傾いていく中で新潟は長谷川→松田という交代策を敢行。単にRWGを替えただけに留まらず、いつも通りライン際で起点を作ったり、長倉,鈴木のポストに呼応して陣地回復に寄与したり、外側を消しながら最終ライン3枚を構成する選手にプレスをかけて無理やり蹴らせて回収させたり。
・いつも通りのカードの切り方ではあるが、結構大きな交代であった。
・例えば秋山はバイタルで要求して余裕ある状態でシュートを狙うなど、三戸が間接的に生み出したスペースを認知して活用したい。中央での関係性を重視するのは結構だが、ドリブラーに対する適切な支援もそろそろ整備して欲しいところ。WGとしての三戸の振る舞いが変わりつつある事を踏まえると、そこ周辺のテコ入れも時間の問題じゃないかなと思う。
・グアルディオラを参考にしてるそうなのでマンチェスターシティとか観てるだろうし。
ゲームコントロール
・さて、新潟は3枚を同時交代。
・渡邊にトーマス、対人に長けた2人が鎮座するBox内ではやられる気配なし。そもそもその前の段階からボールへのアタック&カバーを絶やさず行える陣容だったので、押し込まれる展開となっても比較的安心して観れた。
・ボール保持も完全に放棄する事はなく、CMF前が新潟ピポーテをケアする事により生まれる相手アンカー脇に長倉-鈴木が顔を出して引き出す事で、ファウルをもらったりサイドに展開して時間を作ったり。然るべき形でボールを離さない姿勢を維持。
・体格的に不利に見えるCB奈良を背負って時間を作ったり、SB裏へ走って起点を作ったりと効果的なプレーを繰り返した長倉。効果的なアクションを90分絶やさないタフネスさには相当助けられた。これからも更に彼の存在による恩恵を受けることとなるだろう。来夏がリミットかしら…
・前回対戦時の反省を活かしながら『幅を使いながら中央に綻びを見出す』ここ2試合の流れを踏襲して欲しい。
・今回はここら辺で。また来週~
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