【女子W杯】スペイン代表急成長のワケは?現地で6年間プレーしたINAC山本摩也に聞く
グループステージ1位通過をかけ、スペイン戦直前。現地で6年間プレーした山本摩也が、スペイン代表急成長のワケを解説。
【@FIFA+】
スペイン代表の進化は選手主体で行ってきた環境改善の成果
2011年ドイツ大会で日本がワールドカップ優勝を飾ったときは、まだ本大会に出場することもできていなかったスペイン代表。2015年カナダ大会で初出場を果たすと、2019年フランス大会ではラウンド16に進出。数年前から徐々に、女子サッカーにおける世界での地位を上げてきた。現在はFIFAランキング6位までのぼり詰め、昨年11月に国際親善試合でスペインと対戦した日本は、0-1で敗戦している。
スペイン代表の実力が上がっている理由について、2年前までスペインのエスパニョールでプレーしていた山本は「数年前から始まった、女子サッカーを取り巻く環境を良くしようとする働きの成果が、少しずつ出てきている」と話した。
「スペインが強くなった要因はいくつかあると思っていて。6〜7年かけて女子サッカー選手の地位や環境を変えようと、選手主体で訴えかけてきたこと。国自体も、女子サッカーにお金を使うようになってきたこと。メディアなどの露出が増えてきたことなども挙げられると思う」
「サッカー面で言うと、何年か前から本格的にバルセロナ(≒代表)がフィジカル強化を始めたことや、外国から良い選手を取るようになったことなども挙げられると聞いたことがある」
スペインのリーグでは、バルセロナの一強とその他のチームという構造が出来上がっている。そのバルセロナが欧州で結果を出したり、カンプ・ノウ(ホームスタジアム)を埋めたりと、派手なニュースを出しているのも、スペインは強いという印象を世界に与えられている要因だそうだ。
【@FIFA+】
しかし、スペイン選手たちの実力の強化がされてきた一方で、今回のワールドカップには、ベストメンバーで臨むことはできていない。その理由は、2022年9月に起こったボイコットだ。
これまでバルセロナの選手を中心に、サッカー面の強化や待遇改善に取り掛かろうと訴え続けていたスペイン女子代表。昨年、協会や代表の体制の変更を求めて、15人の選手が代表招集を辞退するボイコットを行った。
最終的に、今回のワールドカップには半分くらいの選手しか戻ってきておらず、とてもベストメンバーとは言えない状況だという。代表で中心として活動していた選手の中では、センターバックとボランチ、フォワードから3選手がいないと、山本は説明してくれた。
「個人的には今大会出場を辞退したマピ・レオンというセンターバックは、本当にうまいと思っていて。後ろからボールを持てるし、試合も作れる選手だった。あとは、パトリ(・ギハーロ)というボランチの選手もいない。バロンドールをとった11番のアレクシア(・プテジャス)と、6番のアイタナ(・ボンマティ)、それとパトリの3人が代表の中心で、絶対的だった。それと、まだ若いけど準レギュラーだったFWのクラウディア(・ピナ)。特にその3人がいないのは、スペインにとって痛いんじゃないかなと思う」
ほぼバルセロナのメンバーに対して、日本がどうやって闘うのかをすごく楽しみにしていたという山本。「見ている方としては残念」と少し悔しそうに呟いた。
スペイン人の“サッカー”のうまさとは
これまでスペインでプレーしていた山本。スペインと日本の違いについて、スペイン人は“サッカー上手”だと、現地で得た感覚について話してくれた。
「日本人は、コントロールとか、ボールを使う技術がすごくうまくて、器用。ただ、試合になってそのクオリティが保たれるかと言うと、それはまた別の話で。逆にスペイン人は、なんでこの人たちは、練習とかでも別にうまくないのに、試合になったらそんなプレーができるんだろうとか。こいつ全然走らないけど点決めるなとか。そういうのがある」
「サッカーは、ボールをうまく扱うスポーツじゃない。点を相手より取ったチームが勝つというスポーツだから。その点で言うと、スペイン人は“サッカー”がうまい印象があるかな」その要因に、無意識にでもサッカーと触れ合える日常が関係するのではないかと山本は考察した。
「スペインでは、ワールドカップなどの特別な試合ではない、普通の試合が民放で流れている。ちっちゃい子の試合も、ユースの試合も流れているし。街に出たら、グラウンドでサッカーしてる人なんていっぱいいる。だから『サッカーはこれでしょ』みたいな感覚が誰にでもあるというのは、結構感じたかも」
日本では考えられないような光景が繰り広げられる、スペイン。生活にサッカーが溶け込んでいる国に対し、なでしこジャパンはどのように太刀打ちしていくのだろうか。
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