7.15中嶋勝彦VS宮原健斗〜好勝負なれども名勝負に至らなかった理由は?

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チーム・協会
【これはnoteに投稿されたはやしげさんによる記事です。】
さて。7.15の中嶋勝彦VS宮原健斗戦です。個人的には「このカードを後楽園でやるのは勿体ないなあ」「あまりにも唐突なので、もう少し機運を高めてから…」といった感覚もありました。しかしボーダレスな令和のプロレス界においてこのカードが「禁断の戦い」といえる数少ないモノである。それもまた事実です。若干の複雑な感情もありましたが、個人的にかなり楽しみだったカードでありました。

約10年ぶりの二人のシングルマッチ。結論から言えばタイトルに書いたとおり「好勝負なれど名勝負には至らず」というのがぼくの率直な感想です。「あれ?ネガティブなことを言うなあ?」「お前は宮原ファンだから結果に納得いかないだけだろ?」という声もあるやもですが…。

まず「ぼくが考える中嶋と宮原の名勝負とは?」について述べたいと思います。中嶋の名勝負としてぼくの中で真っ先に上がるのが21年11月の拳王との試合(60分フルタイムドロー)と22年8月の船木誠勝戦です。ぼくは中嶋という選手は「極限状態で格闘技の理にそった動きができること」と「抜き身の刃で対峙しあうシリアスな空気を作れること」だと思っています。特に拳王戦で見せた「50分過ぎに胴締めスリーパーに捉えられた後に相手のふくらはぎの急所に肘を当てて脱出する」という動きは中嶋の真骨頂だと思います。

一方宮原の名勝負とは何か?ぼくは「徹底して相手の攻撃を受けて耐える」「相手の攻撃を受けて相手を引き上げる」だと思います。代表的なのが19年の野村直矢との三冠戦や、22年6月のジェイク・リーとの三冠戦です。これらの試合は「宮原が相手の攻撃を受け続けること」によって名勝負に至ったと思います。

こうした要素を二人の名勝負のベースと捉えた場合。7.15の試合はどうだったのか?この試合はどちらかといえば宮原の試合でした。宮原が中嶋のハードな攻めを受けて。それを跳ね返す。その文脈での試合だったように思います。一見攻撃型の中嶋と防御型の宮原が噛み合ったように思えますが、ぼくは「若干の歪さ」を感じました。中嶋の良さを出し切るならば?格闘技的なセンスや動きを発揮した上で相手を沈めることが最適解だったかもしれません。極端に言えば「ハイキックや張り手で宮原の意識を断ち切る」「格闘技的なロジックにそって相手を制圧する」。

しかし宮原はそうした部分が得意なわけではありません。得意ではないというと語弊があるやもですが。少なくとも宮原の良さはタフネスを発揮することだとぼくは思います。しかし宮原がタフネスを発揮しようとすればする程。中嶋の武器であるある種の格闘技的なロジックやシリアスさ。それが薄れるという部分があると思います。この試合は宮原の武器であるタフネスさを活かしたため、中嶋の持つ良さも活かしきれなかったとぼくは思います。

では逆に中嶋の良さを活かせばよかったのか?一撃で相手の意識を断つ形がよかったのか?それも一概に正解だとはいえない。ぼくはそう思います。なぜならその路線を突き詰めると「相手の攻撃を耐えきって勝つという宮原のタフネスさ」が活かしきれないからです。

誤解なきように言いますが、この試合は間違いなく良い試合でした。満員の後楽園ホールを熱狂させる好勝負だったと思います。しかし「中嶋宮原双方にとってのベストバウトだと言えるか?」。その観点からすればぼくは否だと思います。先程述べたように、中嶋の格闘技的なセンスやシリアスさを引き出すのであれば。その相手は拳王なり船木なり。もしくは藤田なり。また宮原のタフネスさを活かすのであれは?彼に近いサイズを持つ野村直矢なり青柳優馬。私はそう思います。

しかし両者の10年ぶりの再戦がベストバウトに至らなかったこと。それ決して悪いことだとぼくは思いません。同じ釜の飯を食って切磋琢磨したとしても。その後の10年はお互いが自分の良さを活かすために努力をした。それによって両者の再戦が「100%噛み合わなかった」としても。それは二人が各々努力をした結果です。名勝負にならなかったから悪である。ぼくはそうは思いません。完全に噛み合わないのもまた良いことだと思います。この先両者にNEXTはあるのか?それはプロレスの神のみぞ知る範囲です。今後の数年で両者が噛み合い名勝負が生まれるのか?それともギャップが広がるのか?もしくはNEXTは存在しないのか?何れにせよ楽しみだと思います。
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