【女子ラグビー】日体大、チームプレーの真髄発揮で総合2位

日本体育大学
チーム・協会

日体大、チームプレーの真髄発揮で総合2位と大健闘

 ◆個人の成長とチームの進化

 これぞチームプレーの輝きか。7人制女子ラグビーの年間王者を決めるシリーズ最終第4戦・花園大会最終日が2日行われ、日本体育大学が3位と健闘し、総合2位を決めた。学生ならではの全力プレーから、「個人の成長」と「チームの進化」が見てとれた。
 炎天下の東大阪・花園ラグビー場。陽射しが傾く中での表彰式では選手たちに笑顔がひろがった。ノーサイド。互いの健闘をたたえる。日体大は記念撮影の際、みんなでこう叫び、人差し指を立てた。
 「ユニコーンズ、ナンバーワン!」
 ユニコーンズとは日体大の愛称である。ユニコーンは伝説の一角獣を意味し、唯一無二の存在を指す。確かに優勝はできなかったけれど、ラグビーらしいチームの完成度としてはナンバーワンだったかもしれない。

 ◆新野主将「めちゃくちゃ楽しかった」

 日体大の選手たちの顔には、自分たちのラグビーをやり切ったとの満足感が漂っていた。主将の新野由里菜は「めちゃくちゃ楽しかったです」と笑った。
 「持ち味の走りとつなぎ、組織ディフェンスを体現できました。自分たちの中で、かなり成長できたシリーズでした。みんな仲良し、信頼関係もバッチリ。“自分たちはやれるんだ”という自信がつきました」
 最後の3位決定戦は死闘となった。相手は、昨年の総合優勝チーム、東京山九フェニックス。米国代表で鳴らしたエースのニア・トリバーの破壊力に3トライを許し、後半中盤で7点のビハインドを背負った。
 この試合、日体大は攻守の要、OGの堤ほのかをけがで欠いていた。でも、全員がそのアナを埋め、つなぎにつなぎ、チームとして守った。とくに途中出場の梅津悠月の猛タックルはチームを勇気づけた。総合力勝負である。窮地に立ち、チーム間の信頼が威力を発揮する。
 ラスト2分、左右につなぎ、最後は新野主将が真ん中に飛び込んだ。トライ。息を切らしながらも、同点ゴールキックを慎重に蹴り込んだ。試合は、5分ピリオドを繰り返す延長戦にもつれ込んだ。どちらかがポイントを入れたところで勝敗が決する「サドンデス方式」だ。

 ◆死闘の3位決定戦、総力戦

 もう総力戦だった。メンバー交代でリザーブがグラウンドに入っている。それでも、戦力は落ちない。心のこもった連係プレーは乱れない。日体大はディフェンスに回っても、途中出場の高橋沙羅らが面となって圧を相手にかけた。暑いから、汗でボールが滑る。ノックオンを誘った。アドバンテージ! このボールをすかさず拾って、かまわず攻めた。
 大内田夏月がタックルを受けながら左手でオフロードパスし、手をたたいて呼んだ途中交代の樋口真央がもらって走る。激しいタックルを受ける。後ろからフォローした東あかりがボールをもらって、タックルを振り切って、インゴールに飛び込んだ。決勝トライだ。フォローの位置取りが絶妙だった。
 24-19でノーサイド。ベンチから堤ら他の選手も駆け寄り、歓喜の輪ができた。いつも厳しい顔の古賀千尋監督も涙をこぼした。うれしくて、うれしくて。

 ◆古賀監督「バンザイ」

 その時の心境を聞けば、古賀監督は声を弾ませた。「バンザイッでした」。白色のサファリハットの下の顔はもう、くしゃくしゃだ。
 「観客席に向かって、ワーッと叫んだと思います。最後はリザーブも全員入れて。その子たちが活躍してくれました。ほのか(堤)がけがしていたこともあって、みんな必死で。最後、チームとしてやれました。それがうれしくて、もう泣いちゃった」
 いいチームである。外国人はひとりもいない。だから、よりコミュニケーションを大事にする。互いを信頼する。同じ絵をみる。猛練習ゆえの「あ・うん」の呼吸でパスをつなぐ。おそらく、プレーしている選手も楽しいだろう。
 準決勝は4大会連続で完全優勝を遂げた「ながとブルーエンジェルス」と対戦した。主軸の外国人選手にトライを連取されて、0-24で完敗した。ショックかと思いきや、古賀監督によると、試合後のロッカールームでは爆笑が渦巻いていたそうだ。
 「大敗したら普通、お葬式みたいに落ち込むじゃないですか。でも、このチームはならない。敗戦の映像をレビューしながら、みんな、大爆笑していました。明るい。悲壮感がないんです。落ち込んだってしょうがないじゃんって」

 ◆試合テーマは「笑って楽しむ」

 その準決勝から約2時間後。3位決定戦の試合テーマは「最後だから、笑って楽しむ」だった。みんなでエンジョイだ!
 表彰式後の通路で向來桜子と大内田は笑って、声をそろえた。
 「みんな、めちゃ仲がいい。みんな、互いを大好きなんです」
 選手の満足感は、なにより「自分の成長」があればこそ。「チームの進化」を実感できてこそだろう。昨年は年間総合5位。上位4チームには一度も勝てなかった。それが、ことしは、準優勝、準優勝、準優勝、そして3位だった。もちろん、対戦カードの運・不運はあるだろうが、ながと以外のチームには負けなかった。
 それは、チームの底上げ、選手層の厚みが増したからだ。ふだんの古賀監督の熱血指導、練習の充実があればこそ、だろう。
 しかも、みんな「ひたむき」だから、ラグビーの美徳のような何かを、日体大は表現できたのである。見る者の心の支持をつかんだのだ。これは良きカルチャーだろう。

 ◆エース松田、次はパリ五輪

 そういえば、表彰式の総合優勝・2位の合同記念撮影でリードの掛け声をかけたのは中心にいた日体大のエース、松田凛日だった。
 もう日本女子ラグビー界の「太陽」のような存在だ。シリーズの印象を聞けば、こう笑顔で即答した。
 「楽しかったです」
 ひと呼吸おき、こう言葉を足した。
 「いや、楽しかったけれど、優勝できなくて悔しさもありました。楽しいと悔しいが半々かな。でも今までで一番、楽しかったのは間違いありません」
 自分の成長は?
 「判断の部分です。自分が勝負を仕掛けるべきなのか、ボールを離すべきなのか。自分の判断が正しいことが増えたのかなと思います」
 新たな目標は、日本代表としての来年のパリ五輪出場である。秋には五輪予選を控えている。本番はこれから、である。
 「はい、そちらも、楽しんでやりたいです」
 次のターゲットは選手それぞれながら、ひたむきな日体大の女子選手たちの成長はまだまだ、つづくのである。(松瀬学)

総合2位の日体大は、完全制覇のながとブルーエンジェルスと一緒に記念撮影。「はい、ユニコーンズポーズ!」 【撮影:筆者】

  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

本学は、「體育富強之基」を建学の精神とし、創設以来、一貫して、スポーツを通じ、心身の健康”を育み、あわせて世界レベルの優秀な競技者・指導 者の育成を追求し続けてきたことに鑑み、「真に豊かで持続可能な社会 の実現には、心身ともに健康で、体育スポーツの普及・発展を積極的に推進する人材の育 成が不可欠である。」と解釈し、科学的研究に裏付けされた競技力の向上を図りつつ、スポ ーツを文化として幅広く捉え、体育・スポーツを総合的・学際的に探究する大学を目指し、 各学部、各研究科がそれぞれ目的を掲げ、教育研究を行なっている。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント