【柏レイソル】"ボランチ"仙頭啓矢の真価「2023Reysol Report Vol.12」

柏レイソル
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 先週末に行われたYBCルヴァンカップ、グループステージ第6節のアビスパ福岡戦では、仙頭啓矢がJ1第15節川崎フロンターレ戦以来、約3週間ぶりに復帰を果たした。後半開始前に、アシスタントレフェリーが30番と41番の交替ボードを掲げたときには、戸嶋祥郎がボランチへスライドし、右サイドに仙頭が入ると予想したが、彼はそのままボランチのポジションに入った。
「1点ビハインドの状況で、彼自身もボールを落ち着かせたり、攻撃では効果的なパスを出せたりする選手。サガン鳥栖では3ボランチをやっていたので、攻撃にアクセントを付けるという狙いでボランチに起用した」
 井原正巳監督は、起用の意図をそう説明した。

「ボランチでもプレーしたかった」と明かす仙頭 【©️KASHIWA REYSOL】

 京都橘高校時代は小屋松知哉とともに2トップを組み、高校選手権で得点王になった実績や、京都サンガF.C.や名古屋グランパスでは中盤の攻撃的なポジションを務めたこと、さらに今季レイソルに移籍してからも、トップ下やインサイドハーフを主戦場としてきたため、今回の仙頭のボランチ起用は新鮮だった。聞けば、仙頭自身が「自分の特徴を出せるポジションだと思っていましたし、ボランチをずっとやりたいということも伝えてありました」とアビスパ戦後に語っている。

 仙頭はアビスパの前からのプレッシングの枚数と味方の状況を見極めながらポジションを取り、ボールを引き出し、チャンスがあればターンをして前を向いて細谷真大や武藤雄樹に繋げる。あるいは自分が相手のマークをあえて引きつけることで、古賀太陽や田中隼人が直接前に付けるパスラインや、高嶺朋樹の動くスペースを作るなど、復帰初戦で、しかもレイソルに来て初めてのボランチ起用で好プレーを見せた。

 仙頭は「久々の試合で疲れた」とは言うものの、「ピッチ上でコミュニケーションを取りましたし、朋樹とも距離感近くできました。自分たちが高い位置でボールを持てると、攻撃をうかがうタイミングの確率は高くなるし、その中で、一発で裏も効いてくる」と手応えを掴んだ様子だった。

サヴィオや細谷真大らにボールをつなぐ「リンクマン」として期待される 【©️KASHIWA REYSOL】

 ビルドアップの入り口を作るため、仙頭と高嶺へ何度もパスを付けた古賀も以下のようにポジティブなコメントを残した。
「食いつかせる付け方と、前を向かせる付け方と、その使い分けができていると思います。ボランチの二人はそこの判断を持っているので、ボランチを使いながら侵入していく形は増えていると思いますし、そこから左右に振ることもできています」

 今回の仙頭のボランチ起用については、先述の井原監督の言葉にもあった1点ビハインドという状況と、「ルヴァンカップは敗退が決まっていたので、もちろん勝利のためにこだわるところはありましたけど、いくつか試すこともできた」と話すとおり、細谷とフロートの2トップ、古賀と田中のセンターバックも含めて、後半戦へ向けてのテスト的な意味合いも多分に含まれていたが、今後へ向けての目処は立ったはずだ。

 ボランチのポジションには、最近の試合に継続して出場している高嶺と椎橋慧也がおり、天皇杯で存在感を示した中村慶太もいる。オプションのひとつだとしても、今回の起用で、その顔ぶれに仙頭が加わる。彼らは皆、ボールを受けることを怖がらず、捌くことの得意な選手たちだ。チームとして、ボランチを経由して攻撃を展開する形は増えた。サヴィオが言っていたとおり「チームは良い方向へ進んでいる」のは確かに感じられる。
 だからこそ結果に結びつけて、なんとしてもこの流れに拍車をかけてほしい。

【文】柏レイソルオフィシャルライター:鈴木潤

「ボランチ仙頭」の知性と技術がレイソルを救うか 【©️KASHIWA REYSOL】

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著者プロフィール

1940年に母体となる日立製作所サッカー部が創部、1995年にJリーグに参戦。1999年ナビスコカップでクラブ史上初タイトルを獲得。ネルシーニョ監督のもと、2010~2011年には史上初となるJ2優勝→J1昇格即優勝を成し遂げる。さらに2012年に天皇杯、2013年に2度目のナビスコカップ制覇。ホームタウンエリアは、柏市、野田市、流山市、我孫子市、松戸市、鎌ケ谷市、印西市、白井市の東葛8市。ホームスタジアムは、柏市日立台の「三協フロンテア柏スタジアム」。主な輩出選手は、明神智和、酒井宏樹、中山雄太。

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