SNS(Twitter)によるマーケティング効果の可視化

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コロナ禍でリアルな場でのファン体験が制限される中で、SNSにおけるファンエンゲージメント向上施策の重要性が非常に高まっています。昨年公表したJリーグマネジメントカップ2021(JMC2021)のコラムでは、J1所属クラブにおけるTwitter投稿データに着目し、シーズンの各タイミングにおける投稿内容のトレンドや、情報拡散性についての定量的評価を行いました。そこで本コラムでも同様に、B1所属クラブにおけるTwitter投稿データに着目し、どのような内容の投稿が拡散されやすく、SNSユーザーの目に留まりやすいのかについて考察をしていきます。

Twitter公式アカウントの投稿は各タイミングにおけるチーム活動状況と連動

まず2021年シーズンにB1に所属していたクラブが運営するTwitter公式アカウントを対象にして、投稿数・投稿内容のトレンドについて分析をします。2021年6月~2022年6月の1年間での投稿を対象とし、投稿数の時系列推移を可視化したものが図1となっています。

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この結果より、シーズンが始まる前の2021年6~9月や、シーズン終了後の2022年5月以降では投稿数が比較的少なくなっていることがわかります。また2021年7月より世界的なスポーツの祭典が開催されましたが、この期間においては比較的多くの投稿がなされている傾向にあります。

これより投稿件数の推移についてはシーズン開始後に増加することがわかりましたが、投稿内容のトレンドを把握するために、投稿文中におけるキーワードマッチングを利用したカテゴライズを実行しました。ここでは各投稿を〈ホームタウン活動〉〈試合情報〉〈人事情報〉〈物販関連情報〉〈その他〉の5グループに分類しています。〈ホームタウン活動〉は、小学校でのバスケットボール教室などの地元への貢献活動に関する投稿となっています。〈試合情報〉は試合の開催予告・結果報告に関する投稿、〈人事情報〉については監督や選手の加入・移籍に関する投稿が分類されています。〈物販関連情報〉については、グッズやチケットの販売情報を含む投稿で、上記4区分のいずれにも分類されない投稿を〈その他〉としています。

これらについて、年間の各タイミング別にトレンドを集計したものが図2となります。シーズン期間中においては〈試合情報〉の投稿が多くなっている一方で、〈人事情報〉〈ホームタウン活動〉についてはアフターシーズンに多くなる傾向にあります。実際に試合以外の活動(地元企業や学校訪問の活動など)や人事発表はオフシーズンに行うことが多いため、今回の集計でもそれに連動した結果になっていると考えられます。

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露出度・魅力度の評価軸を用いた各投稿内容の情報発信力評価

ここからは各内容の情報発信力について評価をしていきます。Twitterにおける投稿に対するユーザーのリアクションとしては、「いいね」と「リツイート(RT)」の2パターンがあります。特にRTの場合は投稿元の公式アカウントをフォローしていない人に対しても表示されるようになるため、情報の露出度を測定するうえでは有用な数値となります。いいねについても、その投稿に対する同意や、好意的な評価を示すようなブックマークに近い機能となるため、この数が多いほど情報の魅力度が高いと考えることが可能です。今回はこれらの情報露出度、情報魅力度を比較するために、RT率(RT数÷フォロワー数)と、いいね率(いいね数÷フォロワー数)を計算しました。

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図3は各クラブ・各投稿内容カテゴリにおけるRT率(情報露出度)、いいね率(情報魅力度)をプロットしたものになります。この結果より、RT率といいね率はおおよそ比例関係にあり、情報の露出度と魅力度は連動する傾向にあることがわかります。また投稿内容のカテゴリ別に見ると、〈物販関連情報〉でRT率が高くなっているクラブがいくつか存在し、〈人事情報〉では全体的にいいね率が高くなる傾向にあります。〈物販関連情報〉については、公式アカウントの投稿をRTすることによって応募完了となるプレゼントキャンペーンを行っているクラブが多いため、その結果RT率が高くなる傾向にあると考えられます。

〈人事情報〉に関しては、既存選手の継続契約に関する投稿に対して多くのいいねが付く傾向にあり、各クラブのファンによる人事発表に対するポジティブな反応が表れた結果として捉えることができます。

情報発信力の向上のためには選手個人アカウントとの連携が鍵

物販活動に着目した場合、より多くのグッズ収益やチケット収益を獲得するためには、SNSにおける情報拡散が鍵となっています。しかし公式アカウント単体が持っているフォロワー数は限られていて、その発信力は限定的となっているのが現状です。その中で、公式アカウント単体で実現できる情報発信のポテンシャルを超えた宣伝を実現するためには、どのような運用をすれば良いのでしょうか。

その1つの方法として、選手個人のアカウントとの連携が考えられます。図4は、各クラブに所属する選手個人のTwitterアカウントにおけるフォロワー数上位15件をピックアップしたものです。また右側は、選手個人アカウントのフォロワー数をクラブごとに合計したものです。これより個人で最もフォロワー数が多かったのは、キーファー・ラベナ選手(滋賀)であり、また2番目に多いのはサーディ・ラベナ選手(三遠)となっています。この2選手は兄弟で、フィリピンのバスケットボール界では非常に知名度の高い選手です。また3位の富樫勇樹選手(千葉J)は、Bリーグで日本人選手として初めて年棒が1億円を超えるなど、非常に高い話題性と知名度を誇っています。

クラブ別では、先述のラベナ兄弟が所属している滋賀と三遠や、富樫選手が所属している千葉Jが多くなっており、有名選手が所属するクラブが合計フォロワー数も高くなる傾向にあります。

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多くのフォロワーを持つ選手個人のアカウントは、Bリーグを選手単位で見ているコアなファン層にアプローチが可能な、非常に貴重な媒体として捉えることが可能です。つまり公式アカウントの投稿を選手にRTしてもらうなどの、所属する選手個人のアカウントと連携した情報発信を行うことで、公式アカウントが持つポテンシャルを超えた情報発信力を得ることができる可能性があります。

それでは実際に選手個人のアカウントと連携した場合に、情報発信力がどの程度向上するのでしょうか。それを定量的に検証するために、ここでは先述のラベナ兄弟が所属する滋賀、三遠におけるSNS投稿に着目します。滋賀、三遠の公式アカウントの投稿がラベナ兄弟の個人アカウントによってRTされることで、RT率・いいね率がどのように変化するのかをプロットしたものが図5となります。

ラベナ兄弟のような知名度の高い選手にRTされた場合、そのフォロワーに対しても公式アカウントの投稿が表示されるため、情報発信において非常に大きなメリットがあると考えられます。実際に図5においても、ラベナ兄弟にRTされた場合では、RTされていない投稿と比べてRT率(情報露出度)・いいね率(情報魅力度)の水準が高くなっていることがわかります。特に〈人事情報〉についてはRTされた場合には情報発信力が非常に上がる傾向にあり、また〈物販関連情報〉についても同様の効果が見られるため、ラベナ兄弟のRTがクラブの宣伝活動に大きく貢献していることがわかります。

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このように公式アカウント単体では限界がありますが、選手個人のアカウントと連携することで情報発信力の向上を期待することができます。またBリーグのファン層の中には、特定のチームを応援しているわけではないが、国際試合などで活躍している選手個人が好きで試合を見ているという人もいると考えられます。その層にアプローチするためには、対象選手本人による情報発信が非常に有効です。これからの公式アカウントの運用方法としては、選手個人をインフルエンサーとして捉えて連携していくことで、情報発信力を増幅させていく戦略が重要になってくるのではないでしょうか。
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著者プロフィール

デロイト トーマツ グループは、財務会計、戦略、マーケティング、業務改革など、あらゆる分野のプロフェッショナルを擁し、スポーツビジネス領域におけるグローバルでの豊富な知見を活かしながら、全面的に事業支援を行う体制を整えています。またコンサルティング事業の他、国内外のスポーツ関連メディアへの記事寄稿などを通し、スポーツ業界全体への貢献も積極的に行っています。

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