公式競技初V 吉田優利-プロの粋を結集
【<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>】
(天候:雨 気温:13.0℃ 風速:4.3m/s)
《グリーン=スティンプ:13フィート コンパクション:24.5mm》
風雲急を告げた終盤。15番で申ジエが1打差へ猛追する。しかし、ここからが吉田優利の真骨頂だった。16番、3メートルのパーセーブ。見事にフックラインを読んだ。
そして、ハイライトのパー5・17番を迎える。残り90ヤードの第3打は52度を選択。ショートゲーム、パッティングは生命線-と口にしている。大一番で見事に実証して見せた。
「これが勝負というより、私は18ホールでプランを立てている。気持ちはいつも通り。とはいえ、あのショットは完ぺきでした。次に来るパッティングのことを考え、ここしかないというポジションだったから」。ピン左横1.5メートルへつけ、楽々とバーディー奪取で、タイトルを引き寄せた。
しかし、最終18番はこの日、難度ナンバーワン。それでも「3パットをしないマネジメントを徹底した」と、つけ入るスキを与えなかった。ところが、特に決勝ラウンドは強風に加え、最終日は強い雨。しかも一気に気温が下がる、超がつくほどのタフな条件が揃った。
「きのうは風が本当に強かった。精神、肉体の疲労がたまった一日です。さらに、きょう、朝は蒸し暑いぐらいだったのに、途中から一気に気温が下がった。同時に風向きが正反対になって、まるで違うコースでプレーしているかのよう。ゴルフ力が試されているなぁ、と思いました」という。
楽な勝負などない。たとえ、ボギーを打っても精密機械のように、リズムを乱すこともなかった。「リズムというよりも、滞りなく-が私のスタイル。歩きながら次の戦略などを考え、アドレスをしたら集中します。ボールの地点で考えるのは時間がかかる。スロープレーになっては迷惑がかかりますし、ムダを省きたい。プレーは速いです」。ジュニアの手本にもなりたいと語っている。見られていることを意識して、実践。23歳という年齢を考えれば、なかなかできるものではない。
【<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>】
「勝てないから、ゴルフが終わるわけではない。勝てない=マイナスというのは、よくない考えです。去年の成績、私は評価をしている。安定した成績を続けることは、勝つ準備ができていることだと思う。プロのあるべき姿です。どんな時でも、人には相談をしません。私のことは自分で解決したいからです」。
続けて、「私にとって、ゴルフは仕事。プロになってから両親は口出しをしません。認めてくれていると感じます。やりたいことを好きなようにやっている。幸せです。きょうの優勝で、少しは恩返しができたのかなぁ」と、かみしめるように語った。
公式競技初制覇でも涙は、なし。飛び切りの笑顔を表彰式で披露したのも、プロフェッショナルの証。美学を貫いた。
(青木 政司)
【<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>】
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