【柏レイソル】GKたちが抱える苦悩を乗り越えて「2023Reysol Report Vol.8」

柏レイソル
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健全なるGKの競争理念

 第7節の鹿島アントラーズ戦で今季初出場を飾った松本健太は、その後リーグ戦では3試合連続で試合に起用されている。また、4月19日に行われたYBCルヴァンカップのアルビレックス新潟戦でゴールマウスを守った猿田遥己も、彼にとってはその試合が今季初出場だった。
 昨季、松本はリーグとルヴァンカップを合わせて公式戦3試合出場、猿田にいたっては天皇杯3回戦の徳島ヴォルティス戦の1試合のみの出場だった。

今季初出場から先発を続けている松本健太 【©️KASHIWA REYSOL】

 松本は言う。
「僕と遥己は、去年はなかなか出場機会を掴めませんでした。僕は去年ケガもあり、遥己は天皇杯の1試合だけ。でもこうして勝利につながったことは、僕と遥己にとっては自信になりました」
 松本はアントラーズ戦では今季初のクリーンシートでチームの未勝利を食い止め、猿田もアルビレックス戦では安定したプレーで3−2の逆転勝利に貢献した。直近のリーグ戦2試合は1敗1分と結果こそ出ていないものの、松本のパフォーマンスは安定しており、チームも試合内容自体は評価できる部分が多かった。

鹿島戦の好セーブで今季初勝利に貢献 【©️KASHIWA REYSOL】

 GKは特殊なポジションである。出場の枠が一つしかなく、フィールドプレーヤーと違ってシステム変更やスコアに応じた戦い方によってそのポジションの人数を増やすことはない。そのため出場機会がフィールドプレーヤーよりも限られてしまう。
 過去15年のレイソルのGKを振り返ると、菅野孝憲、中村航輔、キム・スンギュという選手たちが常にゴールマウスに君臨してきた。そしてその中村でさえ、若手の頃は菅野の牙城を崩せず、アビスパ福岡への期限付き移籍から復帰するまでは、レイソルでは一度も試合に出たことがなかった。ケガの影響があったとはいえ、中村ほどの実力を持った選手でも出場機会を得られなかったという事実が、GKというポジションがいかに出番を得るのに難しいのかがわかるだろう。

現在ポルトガルで大活躍の中村航輔にもピッチに立てない時期があった 【©️KASHIWA REYSOL】

 しかし今年のレイソルのGK陣は様相が異なる。佐々木雅士、守田達弥、そして松本、猿田と、すでに四人のGK全員が公式戦出場を果たし、しかも特筆すべきは前述したとおり、昨年は出場機会の限られていた松本と猿田が結果を残していることだ。
「今年も僕と遥己はメンバー外が続いていました。紅白戦にも出られない苦しい期間も長かったんですが、それでも頑張ってやっていこうという話はしていました」(松本)
「他の三人から学ぶことは多いので、前向きに練習に取り組めています」(猿田)
二人の活躍は、出場機会が限られている状況でも腐ることなく、彼らが直向きに練習を積み上げてきた結果である。

ルヴァンカップ新潟戦で気迫ある守備で奮闘した猿田遥己 【©️KASHIWA REYSOL】

 さらに松本によれば「マサ(佐々木)とジャンボさん(守田)は、僕と遥己が出て勝ったときも称えてくれて、喜んでくれた。GKチームは去年よりも一体感が出ています。良い競争ができています」とGKチームの内情を語った。四人はポジションを争うライバルであるが同時に仲間でもある。練習では切磋琢磨して実力を磨きながら、試合では出場する仲間のために全力でサポートする。佐々木と守田も、松本と猿田の活躍に「俺たちも負けない」と刺激を受けていることだろう。
 ポジション争いは足の引っ張り合いではない。仲間の良い部分を学び、自分の成長に変える。仲間が試合で良いプレーをしたら、自分はそれ以上の良いプレーをして序列を覆す。それが正しい競争理念であり、レイソルの四人のGKは、その健全な競争の中で実力を磨いている。

【文】柏レイソルオフィシャルライター:鈴木潤

今は正位置を譲っている佐々木雅士も切磋琢磨を続けている 【©️KASHIWA REYSOL】

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著者プロフィール

1940年に母体となる日立製作所サッカー部が創部、1995年にJリーグに参戦。1999年ナビスコカップでクラブ史上初タイトルを獲得。ネルシーニョ監督のもと、2010~2011年には史上初となるJ2優勝→J1昇格即優勝を成し遂げる。さらに2012年に天皇杯、2013年に2度目のナビスコカップ制覇。ホームタウンエリアは、柏市、野田市、流山市、我孫子市、松戸市、鎌ケ谷市、印西市、白井市の東葛8市。ホームスタジアムは、柏市日立台の「三協フロンテア柏スタジアム」。主な輩出選手は、明神智和、酒井宏樹、中山雄太。

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