水戸ホーリーホックアカデミーが『ビリギャル』のモデルとなった坪田塾が実践する9タイプ別指導メソッドを導入
水戸ホーリーホックアカデミースタッフが、「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話(ビリギャル)」の著者である坪田信貴氏が代表を務める個別指導学習塾「坪田塾」で実践されている「9タイプ別指導」の講義を受講し、指導に導入しています。
「9タイプ別指導」とは、坪田塾の講師向けに導入されている指導メソッドで、生徒に90問のアンケートを行い、生徒がどの性格タイプであるかを把握し、それぞれのタイプに合わせた接し方を行う指導方法です。性格タイプには以下の9種類があります。
〇完璧主義者タイプ
何事にも「こうあるべき」という理想を抱き、完璧にそれを達成しようとする人です。目的を達成すべく、細かいところまでしっかりツメながら作業を進められます。一方で、細部にこだわりすぎて作業が進まなくなる傾向もあります。
〇献身家(人に尽くす)タイプ
「人のためになるなら」という思いで行動するのが好きな人です。思いやりに対して感謝されると、とてもテンションが上がります。一方で、断ることが苦手で、多くの仕事を抱え込んでしまう傾向もあります。
〇達成者(上昇志向)タイプ
競争心が強く、上昇志向を強く持って、目標へ向かってがんばることが得意な人です。負荷がかかるようなチャレンジに心が燃えます。一方で、他者の評価を気にするので、うまくできない場合に隠そうとする傾向もあります。
〇芸術家タイプ
ロマンチストで、自分の感受性をとても大事にする人です。人とは異なった価値観に誇りを持っています。一方で、自分の価値観に固執するあまり、周りの人の意見を聞かない傾向も
あります。
〇研究者タイプ
他人からの干渉を受けずに一人でこつこつと好きな分野を極めたい職人気質、オタク気質がある人です。好奇心旺盛で、気に入った1つのことをひたすら極められる人です。一方で、自分の興味のないことに関しては目を背けがちな傾向もあります。
〇堅実家タイプ
コツコツとした作業を積み重ねるのが得意な、穏やかな性格の人です。心理状態が比較的安定していて、慎重です。予定通り物事が進むのを好みます。一方で、慎重すぎて心配になり、
なかなか行動に移せない傾向もあります。
〇楽天家タイプ
とにかく明るく、楽しいことが好きな人です。旺盛な好奇心に実行力が伴っています。一方で、長時間集中するのは苦手で、つめが甘く、飽きっぽい傾向もあります。
〇統率者(カリスマ)タイプ
強い意志と決断力を持った、人から頼られたいリーダー気質の人です。頼られたり相談されたりすると、人一倍、相手を支援しようとします。一方で、何事も自分が正しいと思い込み、人間関係がうまくいかなくなってしまう傾向もあります。
〇調停者(協調性重視)タイプ
平和と調和が好きな、ゆったりマイペースな人です。協調性が高く、周囲と仲良くやっていくことに心をくだいています。一方で、競争、主張や議論することが苦手なため、引っ込み思案の傾向もあります。
「生徒の性格を知り、そのタイプに合わせて話をすることによって、よりコミュニケーションを取りやすくなりますし、信頼関係を築きやすくなるんです。指導には、勉強だろうと、スポーツだろうと、コミュニケーションが大切です。どんなに良いことを言っても、伝わらなければ意味がありません。話を聞いてもらうためにも、生徒から好かれるのが第一ステップです。好かれることによって信頼され、心を開いてくれるというのが坪田塾の基本的な考え方で、好かれるためには相手のことを知ることが重要です。その方法の1つとして生徒を9タイプに分けて、その子に合わせた接し方を意識しています」
今回講義を行った坪田塾の岩田大先生は説明します。
「先生」と「生徒」と括られますが、「生徒」には1人1人に個性があり、性格が違うのです。だからこそ、坪田塾ではすべての「生徒」の能力を伸ばすためにも、全員のタイプを理解したうえで、その子に合った接し方を行っているのです。
その坪田塾のメソッドをサッカーの指導にも取り入れようと、クラブを代表してアカデミーダイレクターの上園和明とヘッドオブコーチングの鳥羽俊正の2名が昨年6月から8回にわたって講義を受けることとなりました。
目的は主に二つ。一つは選手との関係性を高めること。選手1人1人の性格を知った上で指導を行うことによって、指導者と選手の信頼関係を深め、指導の質を高めようとしています。
「今まで『この子はあまりメンタルが強くないから、強めに言うと良くない』とか、表面的なイメージで接しているところがありました。でも、今回選手個々のタイプを知ることによって、適した接し方が分かるようになりました。いい勉強になりました」(上園アカデミーダイレクター)
「私も上園もこれまで多くの選手や子どもたちと接してきた経験がありますが、あまりこういうことを意識はしていませんでした。むしろ、こちらの勝手な判断で子どもたちの性格やタイプを決めてしまっているところがありました。この子は積極的だから、いろんなものを任せてもやってくれるんじゃないかとか、指導者側の勝手な認識で接していたんです。でも、今回勉強してから今までを振り返ると、『本当にその接し方で良かったのか』と反省するところがありました。経験は大事ですけど、経験に頼ってしまうと、勝手な憶測で接してしまうことがあると気づかされました。そういう意味で新鮮な学びがありました」(鳥羽ヘッドオブコーチング)
1年生の約10人を対象にアンケートを行ったところ、分類されたタイプに関して「イメージ通りの子もいましたし、イメージと異なる結果が出た子もいた」(上園アカデミーダイレクター)そうです。育成年代では指導者の前で自分を表に出さない選手も少なくありません。だからこそ、指導者が実際と異なるイメージを持ってしまうことは珍しくなく、そのイメージのまま接してしまった場合、熱心に伝えたとしても効果が薄かったり、逆効果になってしまったりすることがあるのです。できる限り、そうしたギャップが生まれないよう、そして、指導の効果が高まるように「9タイプ別の指導」のメソッドを学んだのです。
「選手で多かったのは献身家タイプ」と岩田先生は明かします。「水戸のアカデミーには自分よりも『人のため』と考える人が多いのでしょう。そういう選手に『これをやればレギュラーになれる』と伝えてもあまり響かないんです。それよりも、『チームのためにこれをやった方がプラスになる』と言った方が響くんです。選手個々のタイプによって、目的や成果の伝え方が変わってきます。すべてが完璧に当てはまるというわけではないですが、少なくとも、全員に均一的な伝え方をするよりも言い方を変えた方が影響は変わってくると思うので、タイプを意識して、時間をつくり個々に話をするのもいいのではないかという話をしました」。
また、指導者同士の関係性の質を高めることがもう一つの目的でした。選手だけでなく、アカデミースタッフにもアンケートを取って、タイプの分類を行って、コミュニケーションの円滑化を図りました。「今まで一緒に働いてきて、性格を知っているつもりの人でもイメージと異なるスタッフもいました。実は大人の方が顕著な反応が出るんですよ。肯定から入った方が受け入れやすいタイプとか、第三者を通して褒められた方が嬉しいタイプとか、スタッフの方が反応は分かりやすかったです」と鳥羽ヘッドオブコーチングは振り返ります。
指導をする際に能力を最大限に発揮するためにも、スタッフ同士の信頼関係が図れていなければなりません。また、一貫指導を行うアカデミーにおいてカテゴリー間の情報の共有は必須です。
「コーチ」もそれぞれ性格や人格が異なるからこそ、1人1人に適した接し方をすることによってより密なコミュニケーションを図ることが求められるのです。
「坪田塾のメソッドは“先生と生徒”や“監督と選手”だけでなく、“上司と部下”“同僚同士”などの関係性向上にも効果があります」(岩田先生)
「水戸のアカデミーはスタッフが多くなっていますし、年齢層も幅広くなってきています。そうした中でスタッフ同士の関係性を構築する中でこのメソッドは知っておいたほうが良いということも受講した一つの理由です。特に私たち2人はアカデミースタッフ全員とコミュニケーションを取らないといけない立場なので、しっかりと話を聞いて、本音を引き出せるようにならないといけません。そのためにこのメソッドを理解しておくことに意義があると考えました」(鳥羽ヘッドオブコーチング)
「アカデミーはそれぞれ活動場所が異なりますし、現在はアカデミーの事務所もなく、集まる機会も少ないからこそ、今まで以上にしっかりコミュニケーションを取らないといけないんです。細かい情報も共有できるようにしたいですし、全体をしっかり見えるようにしておきたい。そのための関係作りに、このメソッドは役立つと思います」(上園アカデミーダイレクター)
受講してから約半年を経て、両者ともに確かな変化を感じているようです。
「自分の変化としては、相手の話を聞いてあげようという思いが強くなりましたし、相手に対する興味をより強く持つようになりました。相手の話を聞くことはコミュニケーションの第一歩なのですが、聞いてあげるマインドでいると、いろんな情報が入ってくるようになりますし、相談される機会も増えました」(上園アカデミーダイレクター)
「伝えたいことがあっても、どのタイミングでどう伝えるかを整理してから話すようになりました。とはいえ、僕にもタイプがあるわけで、合わないタイプの選手やスタッフもいるんです。そういう相手には合うタイプのスタッフからコミュニケーションを取った方がいいとか、そういうアプローチもできるようになると思います」(鳥羽ヘッドオブコーチング)
学習塾の指導メソッドを取り入れ、全体の関係性の向上を図る水戸ホーリーホックアカデミー。さらなる組織の発展と、無限の可能性を秘めた選手たちの成長が期待されます。
(佐藤 拓也)
〇完璧主義者タイプ
何事にも「こうあるべき」という理想を抱き、完璧にそれを達成しようとする人です。目的を達成すべく、細かいところまでしっかりツメながら作業を進められます。一方で、細部にこだわりすぎて作業が進まなくなる傾向もあります。
〇献身家(人に尽くす)タイプ
「人のためになるなら」という思いで行動するのが好きな人です。思いやりに対して感謝されると、とてもテンションが上がります。一方で、断ることが苦手で、多くの仕事を抱え込んでしまう傾向もあります。
〇達成者(上昇志向)タイプ
競争心が強く、上昇志向を強く持って、目標へ向かってがんばることが得意な人です。負荷がかかるようなチャレンジに心が燃えます。一方で、他者の評価を気にするので、うまくできない場合に隠そうとする傾向もあります。
〇芸術家タイプ
ロマンチストで、自分の感受性をとても大事にする人です。人とは異なった価値観に誇りを持っています。一方で、自分の価値観に固執するあまり、周りの人の意見を聞かない傾向も
あります。
〇研究者タイプ
他人からの干渉を受けずに一人でこつこつと好きな分野を極めたい職人気質、オタク気質がある人です。好奇心旺盛で、気に入った1つのことをひたすら極められる人です。一方で、自分の興味のないことに関しては目を背けがちな傾向もあります。
〇堅実家タイプ
コツコツとした作業を積み重ねるのが得意な、穏やかな性格の人です。心理状態が比較的安定していて、慎重です。予定通り物事が進むのを好みます。一方で、慎重すぎて心配になり、
なかなか行動に移せない傾向もあります。
〇楽天家タイプ
とにかく明るく、楽しいことが好きな人です。旺盛な好奇心に実行力が伴っています。一方で、長時間集中するのは苦手で、つめが甘く、飽きっぽい傾向もあります。
〇統率者(カリスマ)タイプ
強い意志と決断力を持った、人から頼られたいリーダー気質の人です。頼られたり相談されたりすると、人一倍、相手を支援しようとします。一方で、何事も自分が正しいと思い込み、人間関係がうまくいかなくなってしまう傾向もあります。
〇調停者(協調性重視)タイプ
平和と調和が好きな、ゆったりマイペースな人です。協調性が高く、周囲と仲良くやっていくことに心をくだいています。一方で、競争、主張や議論することが苦手なため、引っ込み思案の傾向もあります。
「生徒の性格を知り、そのタイプに合わせて話をすることによって、よりコミュニケーションを取りやすくなりますし、信頼関係を築きやすくなるんです。指導には、勉強だろうと、スポーツだろうと、コミュニケーションが大切です。どんなに良いことを言っても、伝わらなければ意味がありません。話を聞いてもらうためにも、生徒から好かれるのが第一ステップです。好かれることによって信頼され、心を開いてくれるというのが坪田塾の基本的な考え方で、好かれるためには相手のことを知ることが重要です。その方法の1つとして生徒を9タイプに分けて、その子に合わせた接し方を意識しています」
今回講義を行った坪田塾の岩田大先生は説明します。
「先生」と「生徒」と括られますが、「生徒」には1人1人に個性があり、性格が違うのです。だからこそ、坪田塾ではすべての「生徒」の能力を伸ばすためにも、全員のタイプを理解したうえで、その子に合った接し方を行っているのです。
その坪田塾のメソッドをサッカーの指導にも取り入れようと、クラブを代表してアカデミーダイレクターの上園和明とヘッドオブコーチングの鳥羽俊正の2名が昨年6月から8回にわたって講義を受けることとなりました。
目的は主に二つ。一つは選手との関係性を高めること。選手1人1人の性格を知った上で指導を行うことによって、指導者と選手の信頼関係を深め、指導の質を高めようとしています。
「今まで『この子はあまりメンタルが強くないから、強めに言うと良くない』とか、表面的なイメージで接しているところがありました。でも、今回選手個々のタイプを知ることによって、適した接し方が分かるようになりました。いい勉強になりました」(上園アカデミーダイレクター)
「私も上園もこれまで多くの選手や子どもたちと接してきた経験がありますが、あまりこういうことを意識はしていませんでした。むしろ、こちらの勝手な判断で子どもたちの性格やタイプを決めてしまっているところがありました。この子は積極的だから、いろんなものを任せてもやってくれるんじゃないかとか、指導者側の勝手な認識で接していたんです。でも、今回勉強してから今までを振り返ると、『本当にその接し方で良かったのか』と反省するところがありました。経験は大事ですけど、経験に頼ってしまうと、勝手な憶測で接してしまうことがあると気づかされました。そういう意味で新鮮な学びがありました」(鳥羽ヘッドオブコーチング)
1年生の約10人を対象にアンケートを行ったところ、分類されたタイプに関して「イメージ通りの子もいましたし、イメージと異なる結果が出た子もいた」(上園アカデミーダイレクター)そうです。育成年代では指導者の前で自分を表に出さない選手も少なくありません。だからこそ、指導者が実際と異なるイメージを持ってしまうことは珍しくなく、そのイメージのまま接してしまった場合、熱心に伝えたとしても効果が薄かったり、逆効果になってしまったりすることがあるのです。できる限り、そうしたギャップが生まれないよう、そして、指導の効果が高まるように「9タイプ別の指導」のメソッドを学んだのです。
「選手で多かったのは献身家タイプ」と岩田先生は明かします。「水戸のアカデミーには自分よりも『人のため』と考える人が多いのでしょう。そういう選手に『これをやればレギュラーになれる』と伝えてもあまり響かないんです。それよりも、『チームのためにこれをやった方がプラスになる』と言った方が響くんです。選手個々のタイプによって、目的や成果の伝え方が変わってきます。すべてが完璧に当てはまるというわけではないですが、少なくとも、全員に均一的な伝え方をするよりも言い方を変えた方が影響は変わってくると思うので、タイプを意識して、時間をつくり個々に話をするのもいいのではないかという話をしました」。
また、指導者同士の関係性の質を高めることがもう一つの目的でした。選手だけでなく、アカデミースタッフにもアンケートを取って、タイプの分類を行って、コミュニケーションの円滑化を図りました。「今まで一緒に働いてきて、性格を知っているつもりの人でもイメージと異なるスタッフもいました。実は大人の方が顕著な反応が出るんですよ。肯定から入った方が受け入れやすいタイプとか、第三者を通して褒められた方が嬉しいタイプとか、スタッフの方が反応は分かりやすかったです」と鳥羽ヘッドオブコーチングは振り返ります。
指導をする際に能力を最大限に発揮するためにも、スタッフ同士の信頼関係が図れていなければなりません。また、一貫指導を行うアカデミーにおいてカテゴリー間の情報の共有は必須です。
「コーチ」もそれぞれ性格や人格が異なるからこそ、1人1人に適した接し方をすることによってより密なコミュニケーションを図ることが求められるのです。
「坪田塾のメソッドは“先生と生徒”や“監督と選手”だけでなく、“上司と部下”“同僚同士”などの関係性向上にも効果があります」(岩田先生)
「水戸のアカデミーはスタッフが多くなっていますし、年齢層も幅広くなってきています。そうした中でスタッフ同士の関係性を構築する中でこのメソッドは知っておいたほうが良いということも受講した一つの理由です。特に私たち2人はアカデミースタッフ全員とコミュニケーションを取らないといけない立場なので、しっかりと話を聞いて、本音を引き出せるようにならないといけません。そのためにこのメソッドを理解しておくことに意義があると考えました」(鳥羽ヘッドオブコーチング)
「アカデミーはそれぞれ活動場所が異なりますし、現在はアカデミーの事務所もなく、集まる機会も少ないからこそ、今まで以上にしっかりコミュニケーションを取らないといけないんです。細かい情報も共有できるようにしたいですし、全体をしっかり見えるようにしておきたい。そのための関係作りに、このメソッドは役立つと思います」(上園アカデミーダイレクター)
受講してから約半年を経て、両者ともに確かな変化を感じているようです。
「自分の変化としては、相手の話を聞いてあげようという思いが強くなりましたし、相手に対する興味をより強く持つようになりました。相手の話を聞くことはコミュニケーションの第一歩なのですが、聞いてあげるマインドでいると、いろんな情報が入ってくるようになりますし、相談される機会も増えました」(上園アカデミーダイレクター)
「伝えたいことがあっても、どのタイミングでどう伝えるかを整理してから話すようになりました。とはいえ、僕にもタイプがあるわけで、合わないタイプの選手やスタッフもいるんです。そういう相手には合うタイプのスタッフからコミュニケーションを取った方がいいとか、そういうアプローチもできるようになると思います」(鳥羽ヘッドオブコーチング)
学習塾の指導メソッドを取り入れ、全体の関係性の向上を図る水戸ホーリーホックアカデミー。さらなる組織の発展と、無限の可能性を秘めた選手たちの成長が期待されます。
(佐藤 拓也)
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ