GR東葛の「切り込み隊長」クリスチャン・ラウイが9日のイーグルス戦を前に決意を激白!
「柏市のみなさんに支えられて、今はポジティブに楽しくプレーできるようになった!」
CTBクリスチャン・ラウイ。
グリーンロケッツ東葛入団1年目の今季がリーグワンデビューシーズンながら、開幕戦の花園近鉄ライナーズ戦で初トライを挙げると、第11節の東芝ブレイブルーパス東京戦から13節の東京サントリーサンゴリアス戦まで3試合連続でトライを記録。通算で5トライを挙げて、チーム内ではWTB尾又寛汰とともに最多を誇る。リーグ全体のトライランキングでも21位(第13節終了時点)につけ、あと数トライを加えればトップ10入りも射程に入ってくる。
2勝11敗と苦しいシーズンを送るチームのなかで、はつらつと気を吐いているのだ。
そんなラウイが、いつにもましてモチベーションを高めているのが、9日に柏の葉公園総合競技場で行われる横浜キヤノンイーグルス戦(14時30分キックオフ)。
その理由は、初めて日本にやってきた日体大柏高校時代からお世話になった柏市がメインホストとなるからだ。
2014年4月にトンガからやってきたラウイを、故郷から遠く離れた地で温かく迎え入れ、まだ日本語が不自由だったにもかかわらず、なにくれとなく世話を焼いてくれた人々――なかでも、日体大柏高校でのチームメイトやその父母たち、そして地域でラグビーに関わっている人たちに――ラウイは、渾身の力で自分の成長を披露することを決意している。
これは、そんなラウイの独白(モノローグ)だ。
僕は15歳で来日したのですが、そのときは、日本という国についてのイメージがほとんどありませんでした。トンガには中国系の人が多くいたので、アジア系というとみんな中国人だと思っていたし、東京も映画で見たことがあったくらい。日本のラグビーについても、11年のラグビーW杯ニュージーランド大会でトンガが日本に勝った試合を見ていたので、それほどラグビーが強い国という印象ではありませんでした。
来日したのは4月でしたが、前日に降った雪がまだたくさん残っていて、雪を見たのは生まれて初めてだったのですが、それよりも、とにかく寒かったことを覚えています。
初めて経験した日本の寒さは衝撃的でした。
住んだのは高校の寮ですが、「柏市は東京に近い街」だと聞いていましたが、まったくイメージできなかった。日本語も、簡単な挨拶くらいは習っていましたが、習った内容と、実際に聞く日本語では早さも言葉も違っていて理解できなかった。だから、外に買い物に行くこともできなかった。日本とトンガの文化の違いにもいろいろと気づいて面白いとは思ったのですが、言葉がわからないと文化の面白さはフルに伝わりません。また、自分が考えたことを人に伝えられないので、どれだけ面白そうなことがあっても、自分だけ入れていないみたいな感覚でした。
日本の文化で驚いたのは親子の関係がトンガと全然違うということでした。
トンガでは、親子関係がけっこう厳しくて、親から言われたことは絶対にやらないといけない。それも、言われた通りにやらないといけない、というようなところがありました。もちろん話はしますが、友だちみたいには話せないのです。でも、日本では親と子どもが仲良く話している。
それが、すごく新鮮な驚きでしたし、とても良いなと思いました。
僕の父シアオシは役人で、非常に厳しい人でした。常に勉強するように厳しく言われ、テストに落ちたらメチャ怒られた。今思えば、ラグビーを始めたのも、「勉強しろ!」という圧力から逃げ出したかったからかもしれません。僕が父と初めてきちんと話をできるようになったのは、日本に行く直前でした。それまでは、本当に怖かった。あまり褒められたこともなかったのですが、グリーンロケッツ東葛に入ったときに初めて褒めてくれました。
父は54歳で亡くなりました。
日体大柏高校3年でニュージーランドに遠征したときに、初めて父母にプレーする姿を見せたのですが、今は、自分が夢を叶えた姿を見せてあげたかった――そんな気持ちでいます。
高校時代は、グラウンドと寮の往復みたいな毎日でした。
ただ、ラグビー部のチームメイトや友人たちと付き合うにつれて、家に呼ばれてご飯をごちそうになるような機会もありました。
高校時代でいちばん記憶に残っているのは、1学年上の林さんという先輩のご家族といっしょに、海の近くにある別荘に行ったことでした。そこでバーベキューをしたり、すごく楽しくて、いろいろな思い出ができました。
日本をいいなと思うようになったのも、そういう経験ができてからです。
試合のときも、いろいろと差し入れしてくれたので、嬉しかった。
だから、高校生の頃から、どうすればこういう人たちに恩を返せるか、考えていました。
僕はラグビーで日本に来たから、ラグビーで恩を返すことを考えていましたけど、それだけでは足りなくなって、言葉で感謝の気持ちを伝えたかった。自分の気持ちを伝えたかったのです。
今はこうして日本語で普通に話せるようになりましたが、みなさんからああいうふうに愛されると、もっと日本語を勉強したくなる。
高校では、留学生向けの日本語の授業がありましたが、学校で習うことと、友だちと話すことでは全然言葉が違います。ただ、そのとき丁寧に日本語の基本を教えてもらったことはとても良かったと感謝しています。おかげで敬語も、少しわかるようになりました。だから最近は、日本人の友だちが増えて、今はほとんど日本人といっしょにいることが多いですね。
振り返れば、高校時代は、苦しいときもありましたが、でも楽しい思い出の方が多かった。
たぶん、ラグビーのことばかりを考えていたら、それがストレスになったかもしれません。
いろいろな方々と交流できたことでリフレッシュできて、3年間がラグビーだけではなくなったことが本当に良かった。だから3年間、ケガをすることなくラグビーができたのだと思います。
今はプロフェッショナルの選手としてラグビーをやっているので、時間があれば、高校をはじめ周りの子どもたちに、自分が持っているものを教えたい。自分自身、大学生になったときに、高校生の頃はできなかったことや知らなかったことに触れて、たくさんのことができるようになりました。レベルが上がれば、学ぶこともたくさん出てきます。だから今、僕が高校生たちを教えたい。そうすれば、僕よりも、もっといいところまで行ける選手も出てくるでしょう。
また、彼らも、もっと楽しくラグビーに取り組むようになるでしょう。
それから、大学時代に、何度かグリーンロケッツ東葛の練習に参加しましたが、ワンチームという雰囲気が感じられて、すごく良いチームだなと感じました。全員がすごく仲がいい。
それが、グリーンロケッツ東葛を選んだ理由です。
今は、フミさん(田中史朗)、マノさん(レメキ ロマノラヴァ)のような、高校や大学で活躍をテレビで見ていた選手といっしょにプレーできていることに少し驚いています。
まさかいっしょにプレーできるとは思わなかったですからね。
僕は、今季リーグワンにデビューしたのですが、最初は、自分の気持ちが負けてしまって、不安ばかりで試合の最中に気持ちが落ちてくるような状態でした。
でも、試合の経験を積むうちに、だんだんどういうふうにプレーすればいいかがわかってきました。チームメイトもいろいろ教えてくれましたし、試合を重ねるたびに、少しずつできる手応えが出てきた。
リーグワンは、どんなチームと戦ってもトイメンはすごい選手ばかり。スーパーラグビーで活躍した選手がたくさんいます。自分がそうなりたいとあこがれていた選手たちと戦うことができて、日本に来て良かったと思っています。でも、だからこそ、負けたくない。その人たちよりも上手くなりたいという気持ちになります。
いつか自分がそういう立場までいきたい――というのが今の目標です。
グリーンロケッツ東葛での僕の役割は、セットプレーから最初にボールを持つことです。
僕がいいプレーをすればトライにつながるし、そうなれば、チームメイトの気持ちも入る。でも、最初の頃は、そこでミスをして試合中に落ち込むこともありました。今は、経験を積んで、たとえ悪いプレーをしても、次にいいプレーで取り返すことが大事だということがわかってきました。
最近、気持ちをリセットして、ポジティブに楽しくプレーすることを心がけるようになって、いいパフォーマンスが出るようになりました。上手くマインドをリセットすることで、自信も持てるようになったし、自分のポジションで負ける気はしないと思えるようになりました。
ラグビーは、やっぱり気持ちですよね。
気持ちがあればなんでもできる。
だから、試合では、自信をしっかり持ってトライにつなげたい。
今季も残り3試合ですが、やっぱり負けたくない気持ちがすごくある。どんなに強いチームと戦っても勝ちたいし、自分のポジションで勝ちたい。やれる自信はありますし、自分の仕事ができれば、チームの勝利につながると思っています。
最後に、柏市のみなさん、いつも応援していただいて、本当にありがとうございます!
みなさんの応援でいいプレーができています。9日も、みなさんの応援の力を借りて、勝てる試合を見ていただけるように頑張りますので、応援、よろしくお願いします!
(取材・文:永田洋光)
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