【国際女性デー】新たな道を切り開く日本人女子アスリートたち

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【Getty Images】

毎年3月8日に制定されている国際女性デー。女性が成し遂げてきた成果を認識するこの日に合わせ、スポーツ界において日本女子選手「初」という新たな歴史を刻むアスリートの活躍を改めて振り返ってみたい。

日本人女性が初めてオリンピックに出場したのは、1928年のアムステルダム大会で陸上競技にエントリーした人見絹枝だ。

「女が太ももを出して走るなんて…」と悪口を言われる風潮の中、人見は世界の舞台で果敢に戦い、女子800メートルで銀メダルを獲得した。

以来、多くの日本女子選手がオリンピックをはじめ、国際大会で活躍。フィギュアスケートでは、伊藤みどりが日本人として初めて世界選手権で優勝してフィギュアスケート強豪国・日本の礎を築き、テニスでは大坂なおみが初めてグランドスラムを制覇。大坂はまたコートに戻ってくることを宣言し、現在産休に入っている。

Olympics.comでは3月8日の国際女性デーに合わせ、パリ2024オリンピックを目指す女子アスリートたちが新たに切り開いている「道」を辿った。
フェンシング・江村美咲、日本女子初の世界ランキング1位

フェンシング界において日本選手として男女通じて初めてオリンピック・メダルを獲得したのは太田雄貴だ。北京2008オリンピックの男子フルーレで太田が銀メダルに輝いて以来、日本男子はロンドン2012で団体フルーレで銀メダル、東京2020では見延和靖、加納虹輝らが出場した男子団体エペで初の金メダルに輝いた。

女子の活躍は男子に一歩遅れる形になっているが、現在フェンシング日本女子は成長の真っ只中にある。その中心にいるのが大分県出身の江村美咲だ。

江村は昨年の女子サーブルのワールドカップ・チュニジア大会で日本人女子選手として、この種目で初めて金メダルを獲得するなどランキングを上げ、今年(2023年)2月13日に更新された世界ランキングで、日本女子フェンシング界で初めて1位に上り詰めた。

「(世界ランク1位は)まだまだ通過点でもあり、ここからがスタートだと思います」

こう語った江村は現在、海外を転戦しながらパリ2024オリンピック、そしてさらなる成長を求めて邁進している。
バドミントン・山口茜、日本女子シングルス初の世界選手権2連覇

日本女子バドミントン界で最初に世界選手権の女子シングルスで優勝したのは27歳の奥原希望、2017年大会のことだ。前年に行われたリオ2016オリンピックの女子シングルスで銅メダルを獲得した奥原は、同大会銀メダルのシンドゥ・プサルラ(インド)を2017年の世界選手権で破り、世界の頂点に立った。

その勢いは他の女子選手の活躍にもつながっていく。

2021年にスペインで行われた世界選手権で、2歳年下の山口茜が東京2020オリンピック銀メダリストのタイ・ツーイン(Chinese Taipei)を決勝で破って優勝。翌年、東京で開催された世界選手権で、今度は東京2020金メダリストのチェン・ユーフェイ(中華人民共和国)を決勝で破って表彰台の頂点に立ち、女子シングルスにおいて日本女子初の2連覇を成し遂げたのだった。

山口は現在、バドミントン女子シングルスの世界ランキング1位に立つ。
競泳・大橋悠依、日本人女子初の夏季オリンピック2冠

オリンピックでの競泳といえば、北島康介の活躍を今も色鮮やかに覚えている人は少なくないだろう。平泳ぎで2大会連続2冠を達成し、競泳界は大いに沸いた。

東京2020オリンピックにおいて、その興奮を思い出させたのが競泳女子・大橋悠依の活躍だ。2021年7月25日に行われた女子400m個人メドレー決勝で、日本記録を保持していた大橋は後続を大きく引き離す力強い泳ぎを見せると、そのまま逃げ切って金メダルを獲得。その3日後に行われた200m個人メドレーでは、最後の自由形で競り勝ち見事優勝を決めた。競泳女子のみならず、大橋は日本女子選手として初めて夏季オリンピックで2冠を達成した。

2022年に大橋は競泳日本女子選手として初めて、男女通じて5人目となるプロ転向を決めた。

その際、「社会進出を目指す女性や女子アスリート、さまざまな分野で次世代を担っていく子どもたちにとっての希望であり憧れとなるロールモデルになり、挑戦するための勇気やきっかけを届けていきたいです。後に続いていく選手が将来決断する時に、こういう道や選択もあるんだと思ってもらえるような、自分らしい道を歩んでいきたいと思います」とSNSで発信した。
卓球・伊藤美誠、日本女子シングルス初のオリンピック・メダル獲得

日本における人気競技のひとつとして多くのファンを持ち、1988年のソウルオリンピックからオリンピックで採用されている卓球競技だが、女子シングルスにおいては中華人民共和国の勢いに押され、表彰台には届かずにいた。

女子団体で日本勢はロンドン2012で銀メダル、リオ2016では銅メダルを獲得。女子全体が盛り上がりを見せる中、迎えた母国開催の東京2020で新たな歴史が刻まれる。

リオ2016で銅メダルを手にした女子団体のメンバーのひとり、伊藤美誠は東京2020女子シングルスの3位決定戦のステージに立っていた。

ロンドン2012では石川佳純が、リオ2016では福原愛がこのステージで敗れており、プレッシャーがかかる場面。集中力を高めて挑んだ伊藤は、ユ・モンユ(シンガポール)を相手に快勝し、日本女子シングルス初の銅メダルに輝いたのだった。
やり投げ北口榛花、日本女子初の世界選手権表彰台

2022年の世界陸上競技選手権が行われた米オレゴン州ユージーン。大会8日目の7月22日、会場となったヘイワード・フィールドに満面の笑みを輝かせた日本人女子アスリートがいた。

やり投げ種目で活躍する北口榛花である。

東京オリンピックで日本勢57年ぶりに女子やり投げ決勝に進出し、昨シーズンはダイヤモンドリーグで大活躍を見せた北口が、世界選手権の舞台で銅メダルを獲得したのである。投てき競技で日本女子が表彰台に立ったのは、世界選手権・オリンピックを通じて日本女子初。

北口は自身のソーシャルメディアで、「また一つ歴史を作ることができとても嬉しいです。人と違うからと言われてもずっと自分の道を進んできてよかったと思いました」と、喜びをつづった。
トランポリン・森ひかる、日本初の世界選手権金メダル

最後にもうひとり日本女子アスリートを紹介したい。

日本人女子選手として初めてトランポリン世界選手権で金メダルを獲得した森ひかるである。

14歳だった2013年に最年少で全日本選手権を制した森は、2019年に東京で行われた世界選手権で、日本勢初の女子団体金メダルに輝き、さらに個人でも日本史上初の金メダルを獲得した。この大会では、シンクロナイズド種目でも岸彩乃・高木裕美が優勝。岸は2017年の世界選手権の女子個人で日本勢として初めて表彰台に立ったアスリートである。

メダル獲得が期待された東京2020オリンピックで、森は思うような結果を残せなかった。誰よりも本人が一番悔しい思いをしたことは間違いない。大会後には引退も考えたが、「トランポリンが好き」という思いから競技を続行。2022年の世界選手権では女子個人とシンクロナイズドの2冠を達成した。



文:Chiaki Nishimura

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