【ベガルタ仙台】2023年へのスタートライン(上)
【©VEGALTA SENDAI】
「2023は、始まっている。」
来シーズンに向け、チームは約1か月間トレーニングに励んだ 【©VEGALTA SENDAI】
ベガルタ仙台は2022シーズンの明治安田生命J2リーグ戦を、7位で終えた。前年の降格により2009年以来のJ2を戦うことになった仙台は、1年でのJ1復帰を目指したものの、果たせずに終わる。自動昇格圏どころか、J1参入プレーオフ出場圏からも外れてしまった。
10月24日、最終的に仙台にとって今季最後の公式戦となったJ2第42節の翌朝、伊藤彰監督が来季も指揮を執ることが発表された。
それから3日後に、仙台の練習場にはこのシーズンを戦ったほとんどの選手が集まった。
強度は調整しながらも、戦術を落とし込む 【©VEGALTA SENDAI】
伊藤監督はこの時期に、適度にオフを入れ、また、けがをしないようにプレー強度を調整しつつ、シーズン中に実施するような戦術練習を設定。その理由を以下のように語る。
「積み上げられるものは積み上げて、少しでも早くやれるものはやっておいた方がいい。少し選手たちの頭の中にちょっと残って、次のシーズンにパッと入ったときに、自分の引き出しを空けられるようにすることが大事です」
9月6日に就任が発表され、10日の大分トリニータ戦で指揮する伊藤彰監督 【©VEGALTA SENDAI】
悔しさとは、言うまでもなく、今季果たすべきことが未遂に終わったことへの悔しさだ。
伊藤監督がチームを引き継ぐことになったのは、明治安田生命J2リーグも終盤戦に入った第34節を終えた頃のこと。当時、仙台はリーグ戦で4連敗を喫していたところ。結果が出ず、試合内容も上向かず、チームとして自信を失っていた状態だった。
数多くのゴールを決めた富樫敬真と中山仁斗 【©VEGALTA SENDAI】
相手の対策を跳ね返すことができず、5連敗を喫す 【©VEGALTA SENDAI】
また、新型コロナウイルス感染症の影響もあった。これはどのチームも直面した問題で、感染者が出ること自体は仕方がない。問題は思いがけないかたちで出場機会を得た選手達がなかなか結果を出せないことで、チーム内競争が活発化できない状態に陥ることだった。仙台の場合は3月から4月にかけて選手に欠場者が相次いだときは、最初は苦しんだものの新たに台頭した選手の活躍があって持ち直し、4月の躍進に繋げた。だが7月から8月にかけて新たな波が訪れた時には、立て直せず。悪い流れが続いてしまった。
そういった複合的な要因もあって内容・結果ともに厳しいものとなっていたところ、残り8試合の時点で監督交代となった。
第36節 栃木戦でフォーメーションを変更し、バランスを整備 【©VEGALTA SENDAI】
悔しさは残るが、伊藤監督は第42節・秋田戦直後に「来季に必ずJ1に上がる強い気持ちでシーズンを過ごすため、しっかりと準備をしたい」とその先の指揮への意欲を示し、「終わったことですから、(気持ちを)切り替えました。プロフェッショナルとしていつまでも引きずっていてはいけないし、選手たちも切り替えているはず」と前を向いた。
選手たちは2023シーズンを見据えている 【©VEGALTA SENDAI】
意識を2022年の悔しさから、2023年への進歩に切り替え、選手たちは成長を誓った。
佐藤瑶大はシーズン途中に育成型期限付き移籍で仙台に加わった。「J1昇格ができず、連係でも個人のプレーでもミスが多くあって悔しい年になりました。でも、原崎さんにも彰さんにも我慢して使っていただいた中で、改善できたこともありました」と、仙台での日々を振り返る。失点に直結するプレーを反省したときもあれば、守備の統率役を任されてチームの攻守に貢献できたときもあった。それを踏まえて「ここで満足してはいけないし、この時期の練習をお楽しみ会にしてはいけない。この時期に何ができるかは、これからの差にも繋がるはず」という意欲のもと、練習に汗を流す。
ベテランの遠藤は、秋田戦後はしばらくコンディションが整わず別メニューだったが、回復とともに志願して戦術練習に合流した。「早く戻りたかった。大事な時期の練習だし、日々の練習でいかに意欲や問題意識を持ってできるかが、その先で返ってきます。それに、今シーズン一緒に戦ってきた仲間たちとサッカーができるわけだから」と2022年の残り期間を大切に過ごす。フォギーニョも来季への契約を更新したうえで「今年で離れる選手もいれば来年に更新する選手もいますが、そういったこともありながら全員でいい雰囲気の中、練習ができています」と仲間とともにチーム作りを進める。
様々な立場の選手やスタッフがいるなかで、来季に向けてやれることに力を尽くす。仙台はこの約1か月をそのように過ごしている。公式戦日程終了後、クラブは今季の名場面を中心に据えたポスターを作成し、そこにこの言葉を添えた。
「2023は、始まっている。」
文=板垣晴朗
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