私のミッション・ビジョン・バリュー2022年第12回 柳町魁耀選手「サッカー」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが2020年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

今季も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2022年最後となる第12回は柳町魁耀選手です。

(取材・構成 佐藤拓也)

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Q.このミッション・ビジョン・バリューを作るためにどのぐらい面談をされましたか?
「昨年の最初の段階から面談をしていましたが、昨年中に作成することができなくて、結果的に2年間定期的に行ってきました。10回ぐらい面談しました」

Q.面談をしてみて、いかがでしたか?
「こういうことを行っているクラブは珍しいと思います。でも、小さい頃のこととかを振り返ることによって、自分がサッカーをしている意義だとか、なぜサッカーをしているのかということをあらためて思い返すことができ、自分にとっては非常に貴重な話し合いができたと感じています」

Q.柳町選手は昨年プロになってすぐにこの取り組みを行って、プロとしての第一歩を踏み出す時にそういうことを見つめ直せたのはすごくよかったのではないでしょうか?
「自分としては昔から初心の気持ちを忘れないようにしているのですが、今回あらためてそういう機会となったので、すごくいい時間になったなと思っています」

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Q.まず、ミッションについて聞かせてください。「サッカーしている姿を見せることで人を笑顔にする」。こちらの言葉の思いについて聞かせてください。
「僕の地元の茨城県行方市は自分が通っていた小学校の人数が少なくて合併しちゃうぐらい小さな町なんですけど、だからこそ自分がプロになって見られる立場になることによって、いろんな人に応援してもらい、見てもらえることに気付くことができました。小学校の時に鹿島アントラーズのジュニアチームに入った時からずっと応援してくれてる人がたくさんいるんです。ずっと応援してくれている人はもちろんのこと、水戸に加入してから応援してくれるようになったサポーターやどこかで自分を応援してくれる人たちを自分のプレーや勝利する姿を見せて笑顔にしたいという思いが強くあるので、このミッションにしました」

Q.アントラーズのアカデミーにいる時から多くの地域の方に応援されていることが頑張ろうという原動力になっていたということですね。
「行方市からアントラーズに行くことはとても珍しいですし、難しいことなので『スゴイ』と言われることがありました。それは自分としてもうれしかったですし、将来は絶対にプロの選手になって、行方市がもっと注目されるように頑張ろうと思っていました。まだ通過点ですけど、プロサッカー選手という世界に足を踏み入れることができたのは、そういう小さい頃からの強い思いがあったからなのかなと思っています」

Q.水戸加入内定が発表された後、行方市長への表敬訪問も行いました。行方市からの期待を感じたのでは?
「市長も僕が小学校からずっと変わっていなくて、小学校の頃から僕のことを知ってくれているんです。サッカーがうまいということで注目をしていただき、アントラーズのアカデミーに入ってからも応援していただいていました。市長をはじめ、行方市のたくさんの人が自分のことを知ってくれているだけでなく、応援してくれていたことは本当に力になりましたし、使命感というか、絶対プロにならなくちゃいけないなと思っていました」

Q.実際、プロとなって、このミッションへの思いがさらに強くなったんじゃないですか?
「自分がプロの舞台でプレーする時を待っていてくれた人たちは少なからずいて、自分が試合に出ることで、そういう方々に喜んでもらえたと思っています。なので、今度は試合に出て結果を残してもっと喜ばせたいと思っていますし、自分の得意としてるプレーは絶対に多くの人を魅了させられる自信があるので、そういうプレーをどんどん出していって、さらに自分の存在価値を示していきたいですし、もっと広めていくことができれば、笑顔になっていく人がもっと増えると思う。そして、サッカーって素晴らしいスポーツなんだと多くの人に伝えていけるんじゃないかなと思っています」

Q.柳町選手のプレーは多くのサポーターをワクワクさせています。でも、柳町選手自身は「もっとできる」と思っているのでは?
「周りの人を喜ばせることに僕はサッカーの楽しさを感じています。自分がいいプレーができているのも楽しいけど、周りの人に楽しんでもらえたり、喜んでもらえたりするかどうかが自分の中では重要なことなんです。結局サッカーは一人ではできない。11人でもできないんです。サポーターも含めて、いろんな人たちがいるからこそ、試合が成り立っているんです。だからこそ、周りの人達にどれだけ影響を与えられるかということにすごくこだわっています」

Q.プロ2年目の今季、才能の片りんを見せました。プロ3年目の来季、さらに飛躍したい気持ちが強いのでは?
「自分の力に自信を持っていますが、まだまだその力を発揮できていないと思っています。だからこそ、自分に期待してるところがあって、これから自分がどれだけできるのかすごく楽しみなんです。日々向上心を持って、自分をさらにレベルアップさせていたきたいと思っています」

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Q次はビジョンについて聞かせてください。「好きなこと夢中になれること成し遂げたいことを持っている人が応援され、誰に何を言われようと信じてるものを曲げずに歩み続けることができる環境」。長い言葉ですが、どういう思いが込められているのでしょうか?
「先日、小学校訪問をしたの時にこのようなことを話したんですけど、自分は小さな町で育ちながらも、プロサッカー選手になりたいという夢もあったし、それを周りに言っていました。でも、いろんな人から『そんなに甘くない』とか『絶対になれないよ』と言われることがありました。自分は本当にサッカーを好きで楽しいからやっていただけなんです。もちろん、サッカー選手になりたかったんですけど、無我夢中でサッカーをしていたんです。だから、ここに書いてあるように、この『成し遂げたいこと』とか、『好きなこと』を持っている人が応援されるような社会になってほしいと思うんです。そうやって歩み続けることができる環境を作ってあげたい。自分は否定的なことを言われることがありながらも、それでも曲げずに練習し続けて、プロになることができました。今の世の中、環境の問題などによって好きなことや夢中になるものができない人が少なくないような気がします。誰もが好きなことや夢に専念できる環境を周りの人が作ってあげられれば、その夢は広がっていくと思います。そういう自分の思いや体験談を含めて、この言葉にしました」

Q.柳町選手の場合、否定的なことを言われたことによる反骨心が力になったのでは?
「というより、自分の場合はサッカーが楽しくて、学校から帰ってきてから夕ご飯までずっとボールを蹴って、夕ご飯を食べてからもボールを蹴って、本当にサッカーが楽しくてしょうがなかったんです。目標があったからというより、楽しいから夢中でやっていた感じでした」

Q.子どもたちがやりたいことをやれる環境を作ってあげたいということですね。
「それはサッカーだけでなく、いろんなスポーツだったり、音楽だったり、勉強だったり、いろいろあると思います。でも、そういった何かに特化して取り組もうとすると批判的な声が強いというか、日本人は将来を考える時に安定を求めがちなところがあると思うんです。世の中にはすごい才能を持った人がいると思うんですよ。だから、そういう人たちが、家庭の問題とかで難しいことはあるかもしれないけど、できる限り社会全体でサポートしてあげられるようにしてあげたい。自分はそんなに裕福な家庭ではありませんでしたが、周りの人たちに協力してもらって、今があるんです。そうやって地域で子どもたちの才能を育めるような社会になっていたらいいなと思いがあります」

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Q.次はバリューについて。「周りをよく見て困っている人を助けありのままの自分でいる」。この言葉について聞かせてください。
「本当は『ありのままの自分でいる』という言葉だけでもいいのかなと思ってはいたんですけど、自分が大切にしている考え方を見つめ直した時、周りを見て行動する性格をしていることに気づいたんです。今は特に選手寮に住んでいるのでレオナルド・ブローダーセンや松田隼風といった年下の選手たちの練習場への送迎をしているんです。結構大変なんですけど、誰かしらがやらなきゃいけないことですし、その2人のことを考えた時に絶対に必要なことなので、やってあげたいと思うんです。送迎をする分、相手の時間に合わせないといけないこともあるので、自分の時間が作れないとか、マイナス面もあるんですけど、誰かのために手助けすることによって、絶対自分に返ってくると思っているんです。周りの人がどうしたらいい気持ちになってくれるだろうとか、逆にこういうことをされたら嫌なのかなとかを先読みして考えてしまう性格なんです。でも、そういう考え方は絶対にサッカーにも必要だと思いますし、一人の人間として成長する為には絶対必要なことだと思っています。みんながマイナスだと思っていることをプラスに変えることやどういう風な捉え方をしたら、自分の成長のためにつながるといったことを考えてています。『ありのままの自分』というのは自分の小さい頃からの考え方が今につながっていると思っていて、それをこれからもその根本的なところを変える必要はないと思っています。ありのままの自分でいることで、今までたくさんの人に応援されてもらったり、支えてもらったり、助けてもらったりしてきたので、ありのままの自分を崩さずに、これからも周りの人のために自分ができることがあったらやりたいなっていう気持ちでこの言葉にしました」

Q.鹿島ユース時代はキャプテンを務めていました。その経験も生きているのでは?
「キャプテンという立場は好きじゃないですけど、その経験をしたことによって人間的には成長できた部分もあったのかなと思っています」

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Q.最後にスローガンについて聞かせていただきたいのですが、「サッカー」とすごくシンプルな言葉になっています。
「本当に自分が小さい頃から夢中になれるものがサッカーでしたし、今までの人生を振り返った時に一番上にくるものはサッカーなんです。サッカーというスポーツがあることで、いろんな友達を作ることができましたし、水戸ホーリーホックの選手やフロントのスタッフとの関係を築くことができました。サッカーによって、幸せを感じることができていますし、楽しい時間を過ごすことができている。逆にサッカーによって悲しい時もあったし、苦しい時もありました。これから現役生活がどこまでできるか分からないですけど、人生を振り返った時に自分の人生においてサッカーは欠かせないものだったと思えるような日々を送りたいと思っています。そういう思いをスローガンにしました」

Q.自身の中で、思い描くところに着実に近付いているなというような実感はありますか?
「昨年の自分からしたら、今の自分が信じられない。昨年の今頃は本当にサッカーができるのか、これからサッカーしていけるのかという不安ばかりで、メンタル面含めていろいろ苦しい状況でした。一時期は本当に他の道に進むことを考えることもありました。でも、周りの人のおかげで、再びサッカーを夢中になることができましたし、いろんな人のサポートがあって今はサッカーを楽しめているので、これからそういう人たちへの感謝の気持ちを忘れずに、大好きなサッカーを楽しんでやっていきたい。自分が楽しいと思っていれば、さっき『周りの人を笑顔にする』という話をさせていただきましたけど、周りの人たちも絶対笑顔になってくれると思っているので、うまくそこをリンクさせていきたい。こうやってサッカーができることは、僕にとって当たり前のことではないので、サッカーができている時間を大事にして、1日1日サッカーを楽しんでやっていきたいなと思っています」

Q.苦しんだ分、サッカーができる喜びが大きくなったのでしょうね。
「本当にサッカーって素晴らしいスポーツだなって、プレーすることであらためて気付くことができました。自分にはサッカーが必要ですし、自分にとってサッカー選手という職業以上に楽しい仕事はありません。他の仕事をしたことはありませんが(笑)。サッカー選手は誰もがなれる職業でもないですし、自分にとって好きなことを仕事にできていることは本当に幸せなことで、残り少ないシーズンも、来年以降も楽しむことを忘れずにやっていきたいなと思っています」

Q.サッカーを楽しいと思う気持ちは、プレーを見ていて伝わってきますよ。
「昨年と比べたら本当に充実した日々を過ごせていると感じています。サッカーできる時間は言葉で表せないような喜びがあるので、何度も言いますけど、いつまでもサッカーができる時間を大切にしていきたいと思っています」
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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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