【公式独占】銀メダルの山本華歩選手「パルクールをもっと身近に広めたい」世界選手権インタビュー

公益財団法人 日本体操協会
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【©︎JGA】

10月14日〜16日に東京・有明アーバンスポーツパークで、国際体操連盟(FIG)主催のもとでは初となるパルクール世界選手権が開催された。最終日には女子フリースタイルが行われ、山本華歩選手が日本選手初の表彰台となる銀メダルを見事に獲得した。

大会終了後に山本選手にインタビューを実施。メダルを手にした直後の気持ちや決勝ランで見せた勝負技の解説、そして、パルクールのさらなる普及へ向けた理想の形などを語ってもらった。

■「メダルを首にかけてもらった時に実感がわいてきました」

女子フリースタイル銀メダルを手にした山本華歩選手 【©︎JGA】

――世界選手権で銀メダル、おめでとうございます。メダルを首にかけた今の感想をお願いします。

最初は2位という実感が全然わかなかったんですけど、表彰式でメダルをかけてもらって、その時にすごく実感がわいてきました。

――今大会は雨でスケジュールが変更になるなど調整が大変だったと思います。影響などはいかがでしたか?

本来のスケジュール通りであれば2日目にフリースタイルの予選、3日目にフリースタイルの決勝という形でしたが、雨が降ったことで予選と決勝を1日で行わなければいけなくなりました。このスケジュールだと体の調子は大丈夫かなとすごく心配になったんですけど、今回トレーナーの方がついてくれて、しっかりと体のメンテナンスをしていただいたおかげで万全の状態で臨むことができました。私は体のコンディション面で結構心配していたのですが、終わってみれば全然大丈夫でした(笑)。すごく良かったです。

女子フリースタイル山本華歩選手 世界選手権前独占インタビュー 【©︎JGA】

――13日の大会前日にお話を聞かせていただいたときには「いつものように仕事をして、普段通りに過ごしすぎているので、これで大丈夫かな?と少し不安」と話していた一方で、「平常心で臨めるから逆にプラスかも」ともおっしゃっていました。大会を終えてみて、普段の生活通りに臨んだ世界選手権はいかがだったのでしょうか?

きのう(15日)男子のフリースタイルとか女子のスピードを見ていて、やっぱり大会だなと思いました(笑)。普段だったら土日はパルクールのコーチングの仕事をしているんですけど、さすがに今回はやっていないので、やっぱり大会だという気持ちになって、今日は本当に緊張してしまいました。ですので、平常心ではできなかったですね(苦笑)。

――大会初日には山本選手がメインの種目としていないスピードの予選にも出場し、本来であれば決勝に進出できるタイムもマークしました(山本選手はフリースタイルに専念するため決勝を辞退)。この結果でご自身の体調の良さを感じられたのではないでしょうか。

そうですね。今回のコースはどちらかと言うと、足が強い選手に有利なコースになっていたと思います。垂直の壁であれば足の力ではなく上半身のパワーで登らなければいけないのですが、今回のコースは登る箇所がだいたい斜めの壁になっていて、そこは全部足の力で登ることができるから上半身のパワーがあまり必要じゃないんですね。でも、私は上半身の方が強くて足が弱いから、そこがネックかなと思っていました。もし、上半身のパワーで登れる壁があるコースだったら、もうちょっと順位が上がったのかなと思ったりもしますが、苦手意識のあったコースの中で予選を走って、決勝でもまあまあ行けそうな順位とタイムを出すことができたのは自分でも結構満足していますね。

――その意味では今日のフリースタイルにつながる良い走りができたというわけですね。

そうですね、はい。

■「30代でもこんなに動ける。自分でも驚き」

女子フリースタイル:山本華歩選手 【©︎JGA】

――では、ここで改めてフリースタイル決勝のランについて、良かった点や勝負のポイントになった部分などの解説をお願いしてもいいでしょうか?

最初の宙返りをしてから連続でもう1回宙返りをするコンボの技がバッチリ決まったのですごく良かったです(笑)。あとは、ランの途中で壁につかまった状態でその壁をキックし、体の向きを180度変えて次の壁に移るという技があるんですけど、それは私の得意なワンエイティ、もしくはキャットバックと呼ばれている技になります。そういう自分のスタイル、得意な動きを決勝で入れることができたのが良かったです……実はあまり得点にはならない技なんですけど(笑)。

――今回の決勝ランは、銀メダルという結果の前に、自分の持っている技、出したいと思っていた技をすべて出し切れたことへの満足感、嬉しさがあったというわけですね。

はい。まず自分ができる最大限の動きの中に、さらに自分の得意な動きを入れることができたので、それがすごく良かったです。

――パルクールの初めての世界選手権がここ日本で開催されたという歴史的な大会で、ベストの動きを出すことができたうえでの日本選手初の銀メダル。この結果をどのように受け止めていますか?

日本での開催というところで私に有利になっている部分があったとも思っていますが、正直なところ、海外の選手の方が私よりもすごくレベルが高くて、やっている技の難易度も全然レベルが違うものだと思います。自分がベストを尽くして、なんとかギリギリ表彰台に食い込めるかなと大会前は考えていましたが、それを実現できたのですごく良かったなと思っています。

――これも大会前の13日にお話を聞いたときに「30代でもこれだけ動けるんだということを証明したい」とおっしゃっていましたが、その通りになりましたね。

本当は2019年に世界選手権の日本代表に選ばれていて、20代最後から30代に入る中で上手くパフォーマンスしたかったという思いを持っていたのですが、新型コロナで大会が延期になったり、仕事のスケジュールの都合で何回か世界の舞台に立つことができませんでした。そうした数年間で年齢がだんだんと上がってしまったんですけど、30代になってもこんなに動けるということを想像していなくて、自分でも結構驚いていますね(笑)

パルクール界を牽引するTEAM JAPAN女子メンバーと 【©︎JGA】

――30代になっても山本選手のように進化する身体を作れるパルクールは、もともとトレーニングから生まれたものであり、生涯スポーツであるとも思います。今後、山本選手が広めていきたいパルクールの形、あるいは日本でのパルクール文化がこう育ってほしいという理想の姿を最後に教えてください。

本来のパルクールはこういう競技をするためにあるのではなく、自分の精神面やフィジカルを強くするためにあると思っています。しかも、それを楽しみながらできるという、すごく良いスポーツです。あまりスポーツパルクールというよりは、もっと身近なもの、例えば運動不足解消のためのエクササイズ感覚であったりとか、そういうパルクールの在り方をもっと世の中の方に広めていきたいなと思っています。
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