私のミッション・ビジョン・バリュー2022年第4回 椿直起選手「常に一つ上の挑戦を」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが2020年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

今季も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2022年第4回は椿直起選手です。

(取材・構成 佐藤拓也)

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Q.今回のミッションビジョンバリューを作成するに当たって面談を行ったと思うんですけれども、どのぐらい行いましたか。
「5回ぐらいですね」

Q.自分の過去や思いを第三者に話をするという経験はいかがでしたか?
「今まであまり自分の経験を振り返ることやサッカーを何のためにやっているかといったことを考えたことはありませんでした。なので、今回そういうことを口に出して話す機会をいただき、少しぼやけてしまっていたことを明確に思い出すことができましたし、あらためて自分が海外で得た経験などを再認識する機会となりました」

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Q.まずミッションについて聞かせてください。「自分のサッカー人生を通して挑戦し続ける大切さを伝える」とありますが、この言葉に込められた思いは?
「昨年海外のチームに移籍するまではちょっとアンパイな選択をしてしまうことが多かったんです。昨年海外のチームから話があった時も言葉の問題があり、不安もありました。また、Jリーグのクラブからもオファーがあって悩んだんです。でも、やっぱり海外に行きたいという思いがありましたし、自分にとって挑戦しようという思いが出てきたので、国内のオファーを蹴って海外に行くことを決めたんです。結果的に海外でプレーしたことによって、人間としてもサッカー選手としても、一回りも二回りも、すごく成長できたと実感しています。サッカーの面でうまくなったといったことだけでなく、考え方や精神面での成長を自分で感じることができました。海外に行ってよかったと思っています。だからこそ、挑戦することの大切さを伝えたいという思うようになりました。やらない後悔よりやる後悔って言いますけど、本当にそうだなって思っています。やる後悔は失敗じゃないと思う。そこは自分としてももっと大事にしていきたいと思っています」

Q.その海外というのは昨年のオーストラリアのチームへの移籍でしょうか?
「そうです」

Q.実際海外に行ってみて得たものは?または、一番大変だったことは?
「やっぱり大変だったのは言葉の壁です。元々自分自身がコミュニケーションをうまく取れるタイプでもないし、どっちかで言えば、サッカーで繋がっていくっていうタイプなんです。なのに、オーストラリアでは言葉が喋れないし、通訳もいない環境で、サッカー以外のところでもすごく苦労しました。どこへ行くにしても、やっぱり英語が分からないと何もできない。その中でプレーした経験は今でも生きていますし、今どんな苦労があってもあの時と比べれば楽だと思えますし、いろんな面でタフになることができました。大変だったことはたくさんありましたけど、でも、それが自分にとっての収穫だと思っています。海外での経験が自分を大きくしてくれたと思うことができています」

Q,自分としても、『変わろう』という思いがあったから、移籍を決断したのでしょうか?
「自分の夢が海外でプレーすることですし、その中でもFCバルセロナでプレーすることが一番の夢なんです。変わろうっていう気持ちよりは、どうすればそこに近づけるかということから逆算して考えて決めました」

Q.プロ入り前にはプレミアリーグのマンチェスター・シティーの練習に参加したということですが。
「アカデミー時代に在籍していた横浜FMがシティグループだったということもあって、当時はユースの選手が毎年1人か2人がマンチェスター・シティーの練習参加に行くというプロジェクトがあったんです。自分はそれに選ばれて、1カ月近く練習に参加してきました」

Q.それはトップチームに参加するんですか。
「イングランドではカテゴリーがU-23、U-21、U-19といった具合に2年ずつで区切られていて、僕はU-21チームに参加しました。でも、そのチームにはフォーデンなど今では有名な選手がいましたし、レベルが高かったですね」

Q.その時から海外でプレーしたい夢を持っていたのでしょうか?
「そうですね。自分が通用しないと思ったら挑戦もないと思っていて、現段階で自分は全然届かないとは思っていないんですよ。通用するという自信があるから目標にできていると思うし、その自信は絶対に持っていないといけないと思っています。自分がこの先、ずっとステップアップしていければ一番ですけど、うまくいかない時にもその自信を持ち続けることが大事だと思っています」

Q.挑戦し続けるという点において、椿選手はプレーでそれを表現しているというか、ワンプレーワンプレーが挑戦してるような印象を受けます。
「調子のいい時は仕掛けるプレーが多いというか、プレーに迷いがない時がやっぱり自分のいい時。でも、まだちょっとプレーに波がある。ボールを持ったらいいプレーをするけど、消える時間も多かったり。1試合を通して存在感を発揮できる選手にはなりきれていないと思うので、90分間で自分のプレーを出す回数を増やしていけるようにしたいと思っていますし、そこが自分の課題だと思っています」

Q.ちなみに、今季水戸に来たのも、挑戦だったんでしょうか?
「もちろんです。移籍すると、人間関係もまた一から作らないといけないですし、それがストレスになったりするので、できれば同じチームでパフォーマンスを出し続けたいとは思いますけど、環境を変えることは自分にとって挑戦でしたし、その上でどのクラブに行くか悩みました。水戸の攻撃的なサッカーで、自分がどれだけフォーマンスを出せるのかというのは、自分の中で楽しみでもありましたし、挑戦でもありました。そして、今はこの移籍の決断は間違っていなかったと思うことができています」

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Q.次はビジョンについて聞かせてください。「目標を追い続ける楽しさが広がってる社会」。この言葉の思いは?
「先ほど話した夢をかなえるための小さな目標を自分で立てています。『バルセロナに入りたい』と思うだけでは入れない。では、そのためにどうするかが大事で、毎年毎年プランを立てているのですが、その通りにやっていけばベストですけど、行かなかった時には次の目標を少し変えるようにしています。今の目標はチームでJ1に昇格して、J1の舞台で活躍すること。J1で活躍しないと、海外では通用しない。それは実際に自分が海外に行って思ったこと。やっぱり今年は個人としてもチームとしての結果を残すことが大事ですし、来年J1でプレーをして、活躍してから海外に行くという目標があります。サッカーをやっていると、当たり前のようにそういう目標を持つことができる。あらためて、サッカー選手になれたことに幸せを感じることができています」

Q.毎年プランを立てたり、小さな目標を作ったりすることは、昔から行っていたことなんですか。
「プロになる前はプロになりたいという思いだけでしたけど、実際自分がプロになってからは本格的に世界に行きたいなと現実的に思うようになりました。では、そのためにどうしたらいいんだろうと考えはじめたのがきっかけですね」

Q.目標を追い続けることは大変なこともあるかと思いますけれども、やっぱり楽しさの方が方が強いんですね。
「周りの選手がどうか分からないですけど、今自分がサッカー選手でいられることをあまり仕事と思ってないところがあるんです。自分がずっと好きなことやっている延長線上でサッカー選手になっている感じなんです。なので、楽しいですよね。もちろん、けがで苦しむ時もありますし、そういう時は楽しくないですけど、やっぱりサッカーのことを考えている時は楽しいですね」

Q.どの仕事でも目標を持って取り組むことが大事ですね。
「やらされているかやらされていないかの違いかもしれませんね。子どもだって、目標ができれば、勉強も楽しくなると思います。そういうことを伝えていくことによって、目標を持って挑戦する人が増えればいいと思っています」

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Q.次はバリューについて聞かせてください。3つの言葉がありますね。まず1つ目は「自分の武器で勝負する」とありますが、こちらはいかがでしょうか。
「自分の武器というか、プレースタイルは外から見て分かりやすいですよね。その自分の特長を発揮し続けられるかどうかが自分の評価だと思っています。ここだけは負けたくないというところを伸ばし続けていこうと思っています。周りからは守備のことやパスについていろいろ言われることもありますが、そういうことを全部頭に入れながらも、やっぱり自分の特長を出すことにこだわりたい。そこは誰になんと言われようとこう貫く。ドリブルでのミスはしょうがないと割り切っていますし、それを出せなくなったら、自分がなくなってしまうくらいの選手だと思っています。なので、これからも自分の特長で勝負していきたいと思って、この言葉を選びました」

Q.今のそのスタイルというのは、子どもの時からずっと積み重ねてきたものなのでしょうか?
「そうですね。子どもの頃からドリブルが一番格好いいと思っていたんですよ。今は周りのおかげでドリブルできていることは分かるようになっていますけど、子どもの時は本当に自分勝手にやってました。とはいえ、それが今に生きているように感じています」

Q.参考にしている選手はいるんですか?
「同じポジションのドリブラーの選手は好きですね。最近思ったのは、海外のそういうスタイルの選手はボールロストが多いということ。海外の一流選手って好プレーばかりしているような印象がありますけど、1試合通して見ると、ボールロストも目立つんですよ。でも、それは常に挑戦している証拠だと思っています。そこを抜ければ、ビッグチャンスになるという局面で積極的に仕掛けていく。アンパイなプレーがないように感じています。自分はまだ消極的になってしまうところもありますし、監督からは『もっとグイグイ行っていい』と言われています。なので、ロストを怖がらず、プレーできればいいなって思ってます」

Q.2つ目は「身体を100%の状態に保つ」。こちらはいかがでしょうか。
「これはどの仕事をする上でも大事かなと思っていて。どの仕事でも100%の体じゃないと結果や成果を出せないと思うんですよ。特にスポーツは体の状態が一番影響してくる。だからこそ自分の体は常に動くように準備しておかないといけない。もちろん連戦の時など100%の状態を保てない時もありますけど、できる限り100%に近い状態に持っていく。その上で技術や判断を出していく。なので、自分はオフの日もずっとケアをするようにしていますし、治療院に行って、常に自分の体を100%の状態を維持できるように努力はしてます」

Q.昨年けがで苦しんだ印象があるんですけれども、その経験も影響しているのでしょうか?
「それが一番大きいです。今年はあまりけがをしてないですけど、昨年までは毎年けがをしていました。準備の大切さがあまり分かっていなかったんだと思います。若いということもあって、ケアをしなくても大丈夫だと思ってしまい、体に負荷をかけていたところがありました。海外に行く選手やレベルの高い選手は体のケアに力を入れているんですよね。なので、自分も学んで、いい準備をしようと思うようになりました」

Q.体のケアにおいて意識するようになったことは?
「昨年までは時間がある時だけ練習後にケアを受けるという感じでしたが、今は毎日欠かさず練習前と練習後にケアを受けるようにしています。なので、水戸に来て、メディカルスタッフのおかげでもありますけど、本当にけがをしなくなりました。水戸は若手もベテランも関係なく、しっかりとケアしてくれる環境があるんです。それは素晴らしいと思います。あとはセルフケアも自分でするようになりました」

Q.3つ目は「見ている人の気持ちを動かせるプレーを」。こちらはいかがでしょうか。
「最初に好きになったのはネイマールとメッシ。そういう選手って見ていると面白い。スタジアムに来る人のほとんどが一般人で、すべての人が僕たちほどサッカーを知っているというか、目が肥えている人というわけではないんですよね。一般の方が見ても、面白いと思ってもらうことが大事だと思っています。でも、それはうまいプレーだけじゃないと思うんですよ。走ることかもしれないし、球際で戦うプレーかもしれないし、気持ちが見えるプレーかもしれない。そういう感情に訴えかけられる選手というのは、多くの人から応援されると思うんですよ。なので、僕はそういう選手になりたいと思っています」

Q.椿選手の仕掛けるプレーは見ていて面白いですし、常に挑戦している感じで訴えかけるものはありますよ。
「僕はいい時と悪い時はっきり分かるプレーヤーなので、分かりやすいと思います。それをやり続けることで見ている人の気持ち動かしたいと思っています」

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Q.最後にスローガンについて聞かせてください。「常に一つ上の挑戦を」。この言葉に込めた思いは?
「迷ったら1個上の選択をしたいと自分自身で思うし、周りにも伝えたい。それがどういう迷いかというのは人それぞれかもしれないですけど、誰にでも選択しなくてはいけない時があると思うので、その時はレベルは高いけど、1個上の選択肢を選ぶことが大事なんだと思います。それをあらためてスローガンにすることによって、これからのサッカー人生で挑戦していきたいと思っています」

Q.椿選手のサッカー人生において、この「挑戦」という言葉が大きな大きなキーワードですね。
「やっぱり夢が大きいので、小さいことをやっていたらサッカー人生が終わってしまう。その夢を実現するためには常に挑戦してどんどん目標に近づいていかないと間に合わない。できる限り挑戦していきたいと思っています」

Q.チームとしてもクラブ史上最高順位を目指すための挑戦をしています。
「日々の練習や試合を通して、水戸はJ1に昇格する実力があると感じています。でも、それはあくまで選手全員が一体感を持った時の水戸ホーリーホックの力です。第28節大分戦のような一体感を持った試合ができれば、J1のチームにも勝てる力がある。あとはどれだけそれを出せるか。昇格に向けた熱を、同じ温度で、もっと言えば秋葉監督と同じ熱量を持ってプレーし続けないといけない。監督以上に『J1に昇格したい』という気持ちを出さないといけない。そういう選手が一人や二人では、うまくいかない。残り試合、チーム一丸となって戦っていきたいと思います」
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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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