【柏レイソル】8/14柏vs広島プレマッチコラム『柏の9番〜北嶋から工藤、そして武藤雄樹へ』

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【KASHIWA REYSOL】

「レイソルの9番は素晴らしい選手が付けてきた」

 8月6日に行われた明治安田生命J1リーグ第24節京都サンガF.C.戦は、後半アディショナルタイムのラストワンプレーで、武藤雄樹の決勝弾によって劇的な逆転勝利を収めた。試合直後、SNS上には9番を背負う武藤の活躍を称えるコメントが溢れ返り、驚いたことに『柏の9番』というワードがトレンド入りを果たした。

8月6日京都戦。アディショナルタイム90+8分のラストプレーで決勝ゴール 【(C)KASHIWA REYSOL】

「クラブから『9番を付けるか?』という言葉をいただいたので、ぜひ付けさせてくださいと言いました。レイソルの9番は今まで素晴らしい選手が付けてきた番号。僕は得点でチームの勝利に貢献したいと思っています。その覚悟と決意を持って9番を付けさせていただくことにしました」
 サンガ戦の武藤の得点を見て「背番号9のアディショナルタイムの劇的決勝弾」という同じシチュエーションで思い出したのが2012年の天皇杯準々決勝大宮アルディージャ戦での工藤壮人の得点である。
 厳密に言えば、この時の工藤は背番号19。9番を背負うのは翌年からだ。ただ、このシーズンの途中に北嶋秀朗がロアッソ熊本へ移籍し、欠番となっていた9番を工藤が背負う決意を固めた試合が、このアルディージャ戦でもあった。

0-2のビハインドから工藤が逆転勝利に導いた 【(C)KASHIWA REYSOL】

 試合はアルディージャに2点を先行され、レイソルは苦しい状況に立たされていた。試合中、工藤は「こんな時、キタジさん(北嶋)なら、どうやってチームを盛り上げただろうか。どうやって勝たせただろうか」と自問自答していたという。
 試合は後半に入ってレイソルが盛り返し、澤昌克と増嶋竜也の得点によって土壇場で同点に追いついた。残された時間はわずか。延長戦突入かと思った後半アディショナルタイム、右サイドからのクロスに飛び込んだ工藤が頭で合わせ、ネットを揺らした。サンガ戦の武藤と同じように、得点を決めたそのままの勢いで工藤はゴール裏のサポーターの元へ駆け寄り、喜びを爆発させた。苦しむチームを窮地から救い、勝利へ導いたことによって「これでキタジさんに胸を張って『9番を付けさせてください』と言える」と、工藤は翌シーズンから9を背負う覚悟を決めた。

北嶋秀朗(右)から工藤壮人へ柏の9番は受け継がれた 【(C)KASHIWA REYSOL】

 レイソルがこの年の天皇杯で優勝を決めたとき、選手たちにターニングポイントを訊ねると、誰もがアルディージャ戦の逆転勝利を挙げた。工藤自身は出場停止で決勝戦のピッチには立てなかったものの、準々決勝、準決勝と2試合連続で決勝点を決めた彼の活躍なくして、レイソルの元日決勝でのタイトル獲得はあり得なかっただろう。

 翌2013年、背番号を19から9に変更した工藤は、ヤマザキナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)決勝でも千載一遇のチャンスをモノにし、レイソルに14年ぶりのリーグカップをもたらした。また、2015年には当時まで北嶋が持っていたレイソルのJ1最多得点記録を塗り替えており、工藤が樹立したJ1通算56得点は、いまだにレイソルのクラブ最多記録となっている。

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 このシーズンを最後に、工藤はメジャーリーグサッカーのバンクーバー・ホワイトキャップスへ移籍。2017年にJリーグ復帰の際にはサンフレッチェ広島に加入し、以降はレノファ山口、オーストラリアのブリスベン・ロアーFCを経て、現在はテゲバジャーロ宮崎でプレーをしている。

 あの日の工藤と同じように今季から覚悟を持って9番を背負った武藤、そしてサンガ戦の劇的な決勝点。9番に込められた魂は、今もなお脈々と受け継がれている。

(文:鈴木 潤/柏レイソルオフィシャルライター)

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著者プロフィール

1940年に母体となる日立製作所サッカー部が創部、1995年にJリーグに参戦。1999年ナビスコカップでクラブ史上初タイトルを獲得。ネルシーニョ監督のもと、2010~2011年には史上初となるJ2優勝→J1昇格即優勝を成し遂げる。さらに2012年に天皇杯、2013年に2度目のナビスコカップ制覇。ホームタウンエリアは、柏市、野田市、流山市、我孫子市、松戸市、鎌ケ谷市、印西市、白井市の東葛8市。ホームスタジアムは、柏市日立台の「三協フロンテア柏スタジアム」。主な輩出選手は、明神智和、酒井宏樹、中山雄太。

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